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世界の保健医療ニュース

原稿提供:獨協医大越谷病院臨床検査部 森 三樹雄 教授

目次
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アフリカへの旅行者はマラリアの感染防御に注意が必要〈Press Dec.2000 WHO-143〉

  WHOによればアフリカへの旅行者は帰国後、マラリアに感染する事例が多数報告されており、死亡者もでている。抗マラリア薬の使用と蚊に刺されを防止することにより大多数の死亡例は防ぐことができる。
 スペインやドイツからの旅行者は、セネガルやガンビアなどから帰国する寸前にマラリアに感染している。WHOはMefloquineを予防薬として旅行3週間前に服用することとし、出発前に服用できなかった場合には、Doxycyclineの毎日服用を推奨している。マラリア感染地域に旅行する期間が極めて短い場合、旅行者はマラリア予防薬の服用が必要でないと誤解している。たとえに3分でも感染地域に入る場合は、マラリア蚊に刺され感染する可能性があるとWHOは警告している。
 マラリアの初期には、発熱、疲労、カゼ様の症状を呈す。発熱の有無にかかわらず、頭痛、筋肉痛、筋脱力感、嘔吐、下痢、咳などがあった場合は、マラリア感染を疑う必要がある。マラリアは早期に治療を開始すれば治癒できる病気である。毎年100万人の患者(特にアフリカの子供)が死亡し、100か国で3億人の患者がいると推定されている。

乳幼児死亡率が減少し世界的な目標値を達成〈Press Oct.2000 WHO-142〉

 乳幼児死亡率は20世紀の後半に60%減少し、世界的な目標値を達成した。5歳以下で死亡した乳幼児は1999年には1050万人で、1990年に比べ220万人減少した。その1050万人の内訳をみると、アフリカ380万人、インド250万人、中国75万人であった。
 乳幼児死亡率は1950年が25%、1980年が12%、1990年が10%、2000年が7%と漸減している。1990年にニューヨークで行われた乳幼児死亡に関するサミット会議には150か国のリーダーが参加し、乳幼児死亡率を1000人につき70人以下にするという目標を設定した。
 今回の調査で少なくとも57か国がこの目標値に達しなかった。目標値を大幅に上回った国は、ニジェールでは335人、シエラレオネ312人、アフガニスタン264人、マラウイ219人、ギニアおよびリベリア205人、ソマリア201人であった。50年間で乳幼児死亡率が変わらなかった国は、ブルンジ、レソト、マダガスカル、モーリタニア、ナイジェリア、シェラレオネ、タンザニアであった。
 またボツワナ、ナミビア、ニジェール、ザンビア、ジンバブエ、北朝鮮、パプアニューギニアでは乳幼児死亡率が逆に増加している。この理由は明確ではないが、経済状況の悪化、地域紛争、生活環境の悪化などによるものと思われる。乳幼児死亡率を減少させるためには、栄養状態の改善、飲料水・下水・家屋などの衛生状態の改善が必要である。さらに妊娠・出産時の医療援助、小児下痢症の治療、電気の供給、母親教育などが必要である。

WHOのヨーロッパ地区委員会が国連と協力して三大殺人病の対策を検討〈Press Oct.2000 WHO-141〉

 WHOのヨーロッパ地区委員会は発展途上国において問題となっている、エイズ、マラリア、結核という三大殺人病の流行に対して、国連と協力体制をとって撲滅活動を開始した。発展途上国では、貧困に加えて、三大殺人病が合併するために状況がかなり悪くなっている。今回の対策の骨子は、薬剤の供給増加、治療薬品や予防用具の供給、マラリア・エイズのワクチンの研究開発の促進などである。貧困者対しては、エイズ、マラリア、結核の感染予防対策、感染者には、適切な診断・治療・介護の強化が必要となる。最終的にはエイズやマラリアのワクチン開発が必須である。

ウガンダにおけるエボラウイルスの流行が確認‐WHOと国際協力‐〈Press Oct.2000 WHO-140〉

 ウガンダ北部にあるGulu地方でエボラ出血熱が発生した。2000年10月16日現在、71例の患者が発生し、そのうち35例が死亡した。ウガンダ厚生省はウイルス性出血熱の撲滅のために国家対策チームを設置し、流行を防止することになった。このチームの仕事はエボラ出血熱の流行に対し国際的な協力体制の確立、病気撲滅対策の実施、症例の発見と追跡調査、防護用具の供給などである。WHOとウガンダ政府は感染地域における病気の早期発見と近隣社会への伝播の防止対策を立てている。今回の活動資金はドイツ、アイルランド、イタリー、日本などから提供された。エボラ出血熱はもっとも感染力の強いウイルス性疾患で、死亡率は50〜90%である。エボラウイルスは感染者の血液、分泌液、臓器、精液などから感染する。エボラウイルスは1976年にスーダンの西およびコンゴ民主共和国北部で、初めて発見され致死率が高い。

薬剤耐性が医学の進歩を停滞〈Press Jun. 2000 WHO-139〉

 エチオピア、ラトビア、ロシア及び中国の一部では結核患者の10%以上が二種類の強力抗結核剤に耐性となった。タイでは最も効果のあった3種類の抗マラリア剤が完全に無効となった。B型肝炎の治療に最近開発されたラミブチンは治療一年目で患者の約30%が耐性を示した。インドでは熱帯性レイシュマニア症の60%が薬剤耐性となった。エイズ患者に用いられているAZTおよび他の薬剤にも耐性が見られている。薬剤耐性菌発生の原因は貧困国では薬剤の過小投与であるのに対し、先進国では過剰投与である。先進国では不要であるにもかかわらず、患者の要求により過剰な処方が起り易い。東南アジアでは淋菌の98%がペニシリンに耐性である。腸チフスや赤痢に抗生物質が無効になっている。院内感染症の60%が薬剤耐性菌による。薬剤耐性菌が発生すると、旅行者の頻繁な移動や貿易により、世界中に耐性菌が伝播する。

アフリカにおけるマラリア死亡の30%は地域紛争または自然災害の影響〈Press Jun. 2000 WHO-138〉

  WHOによるとアフリカでは毎年マラリアで96万人が死亡し、そのうち30%が地域紛争、戦争、自然災害の影響による。世界規模でのマラリア撲滅運動は感染地域の環境が大きな問題になっている。紛争地域の人々に栄養不良、感染症、高度のストレスがあり、病気に罹患し易い環境となっている。最悪の状態にある難民は避難小屋もなく、外で寝ているため蚊に刺されマラリアに感染する。WHOのマラリア撲滅運動は10年間でマラリアによる死亡者を半減することを目標としている。

暴力とHIVの関係に注目〈Press Jul. 2000 WHO-137〉

 WHOのBrundland事務局長が南アフリカのダーバンで行われた第12回エイズ国際学会で暴力とHIV感染との関連について、女性に対する暴力がHIV感染の流行に重要な役割を果たしていると述べた。アメリカとケニアからの研究発表によるとHIV感染女性の5分の1は夫、パートナー、家族、地域社会から暴力を受けている。このような女性はHIV感染者であることを隠し、自分が暴力、中傷、疎外などされないように身を守っている。暴力の恐れから女性が自発的にHIV検査やカウンセリングを受けなかったり、夫にコンドームを用いるよう要求することができない。HIV感染女性は、ウイルスの母子感染を防ぐため母乳を避けたいと思うが、まわりの人からHIV感染者ではないかと疑われることを恐れて黙っていることが多い。HIV感染者であることを宣言することにより、子供のHIV治療が可能になり、HIV感染率を下げることができる。HIV感染女性が、家庭内の暴力、レイプ、性的虐待について発言することが重要である。望んでいないセックスや防御していないセックスなどを女性自身が望んでいないことを発言し、社会がこれを支持することが必要である。

食肉動物に用いる抗生物質についてWHOが新提案〈Press Jun. 2000 WHO-136〉

 食肉動物の病気を防止するために使用されている抗生物質に対し、WHOが危険性を指摘し世界規模で規制する。食肉動物に対し抗生物質の過剰投与や誤投与により、ヒトに病気を起こす細菌が耐性となってしまった。このような耐性菌は食肉食品を通してヒトに感染する。このような感染症には抗生物質が全く効かないため治療が困難となる。WHOの規制事項は1)食肉動物に投与している全抗生物質に処方箋発行の義務、2)ヒトの病気に使用している抗生物質で、動物の成長にも用いられていて安全性の評価が確定していないものの使用禁止、3)各国で食肉動物に対する抗生物質の使用に対し監視システムの構築、4)ヒトに用いる薬物に耐性を起こすような抗生物質について安全性の確認、5)ヒトの健康を守るために健康障害や感染予防についてのモニタリング、6)食肉動物に対する抗生物質の過剰投与や誤投与を防ぐための獣医のガイドライン作成 などである。ヨーロッパ、アジア・北アメリカで見られたのは、食肉食品を介し耐性サルモネラ菌による感染症が発症し、下痢、敗血症を起こし死亡に至った症例の報告がある。一方、耐性エンテロクッカス菌感染症に対しては免疫不全患者では抗生物質が全く効かないため治療上の大きな問題となっている。

携帯電話による健康への影響の解明には更なる情報が必要〈Press Jun. 2000 WHO-135〉

 世界各国で人口の半数以上が携帯電話を利用し、2005年には世界中で16億人が利用すると予想されている。しかし、携帯電話や無線基地から発射される電磁波が健康にどのような影響を及ぼすかは依然不明である。
 WHOでは次のようなことを今後、調査することにしている。携帯電話が脳活動に及ぼす変化や睡眠パターンへの影響を調べる。各国では健康に留意して電磁波使用上のガイドラインを作成する必要がある。健康面での予防的措置として携帯電話の製造会社が電磁波を減らすよう努力することが必要である。子供に対する影響を少なくするために通話時間を短くしたり、スピーカーフォンを用いて頭部や他の身体への影響を少なくすることも必要である。携帯電話の電磁波を吸収するという器具があるが、その必要性は科学的には証明されていない。また、電磁波発信基地の周囲が健康に危険であるか否かについての証明もない。現在10か国で大規模な疫学的調査が実施されており、2003年までに結果が出る。携帯電話の使用と健康への影響としては、ある種のがんや脳活動の変動と電磁波に関連性があるといわれているが、現状では不明である。

各国の健康寿命の順位-その2-寿命の短い国〈Press Jun. 2000 WHO-134〉

 WHOに加盟している191か国のうち、健康寿命でシャラレオネが25.9歳と最も短かい国と発表された。健康寿命とは健康障害の期間を調整した寿命(Disability Adjusted Life Expectancy)により計算されている。シエラレオネに次いでニジェール29.1歳、マラウイ29.4歳、ザンビア30.3歳、ボツワナ32.3歳、ウガンダ32.7歳、ルワンダ32.8歳、ジンバブエ32.9歳、マリ33.1歳、エチオピア33.5歳が10位までの順となっている。健康寿命が40歳以下の国は32か国あり、その大半はHIV/AIDSが流行している。赤道下のアフリカ諸国の健康寿命は10年前と比較すると女性で51.1歳から46.3歳、男性では47.3歳から44.8歳に下降している。これらの国ではAIDS、マラリア、結核、肺炎、下痢症などによる死亡が増えているのが主な原因と考えられる。

各国の健康寿命の順位-その1-寿命の長い国〈Press Jun. 2000 WHO-133〉

 WHOに加盟191か国のうち、健康寿命で日本が74.5歳で第一位と発表された。健康寿命とは健康障害の期間を調整した寿命(Disability Adjusted Life Expectancy)により計算されている。日本に次いで、オーストラリア73.2歳、フランス73.1歳、スウェーデン73.0歳、スペイン72.8歳、イタリア72.7歳、ギリシャ72.5歳、スイス72.5歳、モナコ72.4歳、アンドラ72.3歳が10位までの順である。健康寿命が70歳以上を越えた国は24か国、60歳代の国は191か国の約半数であった。その他の国ではアメリカが24位で70.0歳、シンガポールは30位で69.3歳、韓国は51位で65.0歳、中国は81位で62.3歳などであった。アメリカ人の健康寿命が短い理由はアメリカインディアン、アフリカ系アメリカ人、都市部の貧困者などの健康状態が極めて悪く、HIV感染による死亡者が他国に比べ多いためと考えられている。さらに、アメリカはタバコ由来の肺癌や冠状動脈疾患が多いこと、暴力や殺人事件も多いことなども原因と考えられている。日本が第一位の理由は、伝統的な低脂肪食により心臓病の罹患率が低いためと考えられている。

多剤耐性結核菌を撲滅するために〈Press Mar. 2000 WHO-132〉

 多剤耐性結核菌は中国、インド、イラン、モザンビーク、ロシアでは新しく罹患した結核患者の3%以上に見られる。イスラエル、イタリア、メキシコでは多剤耐性結核菌は新しく罹患した結核患者の6%以上となり、さらにラトビア、ドミニカ、アルゼンチン、象牙海岸では高率である。エチオピアでは1997年に多剤耐性結核患者は全結核の14%を占めていたが、今日では18%にも増加している。多剤耐性結核菌が広がった背景は5種類の抗結核剤の不適切な使用である。これらの抗結核剤が適切に処方され、6-8か月間継続的に服用すれば結核菌の耐性は起こらなかった。WHOでは3つの戦略をたて耐性結核菌の広がりを防止しようとしている。まず初めはDOTS(短期直接治療)、次いでDOTS-Plus、最後は抗結核剤やワクチンの開発である。

不衛生な注射行為で重篤な被害〈Press Mar. 2000 WHO-131〉

 注射器の頻回使用と汚染注射筒・注射針の再利用により、全世界でB型肝炎が800万-1600万人、C型肝炎が230万-470万人、エイズ感染症が8万-16万人発生している。エジプトではC型肝炎の大部分は不衛生な注射行為に起因している。特に、不完全滅菌した注射筒・注射針が住血吸虫の治療に用いられている。エジプト人の約13%がC型肝炎に感染し、それが慢性肝疾患、肝硬変、肝臓がんに進展している。このように不衛生な注射行為によりウイルス性肝炎や他の感染症が蔓延する。注射由来の感染症を防ぐためにWHOでは3つの戦略を提唱している。まず最初に実施することは注射の回数削減と安全な注射の実践、次に完全滅菌した注射筒・注射針の使用、3番目に使用済みの注射筒・注射針の廃棄である。

WHOの2002-2003年の活動〈Press Jan. 2000 WHO-130〉

 WHO第105回理事会が2000年1月24日-29日に開催された。WHO事務総長Brundtland博士は貧困と健康について言及した。世界人口の約20%、13億人が絶対貧困と呼ばれ、1日1米ドル以下で生活している。貧困とは収入が少ないだけではなく、健康面においても最悪の状況に陥っている。これら、絶対貧困の人たちの5歳までの死亡率は5倍高い。アフリカのサハラ以南地域では絶対貧困の人が50%を占めているが、ここでは妊婦の死亡危険率は、ヨーロッパでの4000人に1人に比較し、12人に1人と高い。この他、食品の安全性も討議され、特に食品由来の疾患が公衆衛生上の大きな問題として取り上げられている。先進国においても30%以上の人が毎年何らかの食品由来の疾患に罹患している。1990年では発展途上国における下痢由来の死亡者は、毎年2億400万人と推定され、そのうち240万人が5歳以下で死亡している。食品由来の疾患としては狂牛病、ダイオキシンや重金属の中毒、大腸菌O-157中毒などである。理事会では喫煙の抑制、エイズや結核の撲滅などが討論の焦点となった。

リュウマチ熱の撲滅対策〈Press Dec. 1999 WHO-129〉

 小児や若年者に対するリュウマチ熱とリュウマチ性心疾患は毎年40万人もの死者を出している。現在この病気にかかっている1200万人の患者のうち、200万人は再入院を繰り返し、100万人は5-20年以内に心臓手術が必要となる。アジア、アフリカ、南米、地中海東部の4地域が最も罹患率が高く、この病気の症状を呈する患者は学童の1%にも及ぶ。リュウマチ熱/リュウマチ性心疾患は多くの心臓血管疾患の中で、予防可能な疾患であり、各国のわずかな財政措置で撲滅できる。例えば5年間に年間5万米ドルを投入すると、学童30万人の予防プログラムができ、治療費の高いリュウマチ性心疾患500例を予防することができる。WHOでは第一次予防対策として溶連菌による咽頭炎の早期発見と治療が急性リュウマチ熱の発病を防ぐとしている。第二次予防対策としてはペニシリンの長期投与である。適切に治療されれば75%の患者は完全治癒する。WHOのリュウマチ熱に関する予防プログラムはコスタリカ、キューバ、クウェートなどの22の発展途上国で実施されている。

WHO、ユニセフ、ロータリークラブがポリオワクチンで緊急アピール〈Press Dec. 1999 WHO-128〉

 世界障害者デーにおいてポリオを撲滅するための緊急アピールが行われた。2000年末までにポリオを撲滅するための迅速なアプローチとしてポリオワクチン5000万米ドル相当のポリオワクチンを供給することが必要である。昨年は4億5000万人の小児に対し世界規模でワクチンが投与された。今年はさらにこの運動を加速させた。インドでは5歳以下の小児、1億3000万人に対しポリオワクチンの接種が行われた。しかし、南アジアやサハラ南部アフリカ諸国ではワクチンの購入の資金不足に陥っている。WHO、ユニセフ、ロータリークラブの首脳が集まり来年、必要なポリオワクチン7億人分の資金を集めることになった。ビル・メリンダ ゲイツ財団から5000万米ドル、ターナー財団から2800万米ドルの寄付があった。アフガニスタン、アンゴラ、コンゴ、ソマリア、スーダン、バングラデシュ、エチオピア、インド、ナイジェリア、パキスタンなどのポリオが発生する国が主な対象となる。

エイズの流行は止まらない〈Press Nov. 1999 WHO-127〉

 エイズの流行が始まってから世界でHIV感染者は5000万人になり、そのうち3300万人は現在も生存し、1600万人が死亡したとWHOは1999年12月1日の世界エイズデーにむけて発表した。本年度のエイズの死亡者は260万人に達し、新規HIV感染者は560万人にもなる。HIV陽性患者は感染後、数年経過するとエイズを発症し、このウイルスは人の免疫システムを攻撃して弱め、肺炎、結核症、下痢、腫瘍などを引き起こす。サハラ砂漠南部にあるアフリカ諸国では、HIV感染が男性よりも女性の数が多くなるという異変も見られた。この地域では感染成人の55%は女性である。WHOでは15〜49歳の年齢で1999年末にはHIVに感染したアフリカ女性は1220万人、男性は1010万人に達すると予想している。15〜19歳のアフリカの少女達のHIV感染者数は同年齢の少年よりも5〜6倍も多い。アフリカ南部諸国における平均寿命は1950年代初めには44歳であったのが、1990年代初めには59歳と増えたが、2005〜2010年にはエイズ死亡により45歳にまで下がると予測されている。一方、ロシア国を始めとする近隣諸国では、1999年になってHIV感染者が急増しており、注意が必要である。インドではHIV感染者が400万人いる。いずれの国でも強力な防止活動やキャンペーンが必要であり、フィリピンやタイでは効果をあげている。

日本政府と日本の製薬会社がWHOと共同でマラリア駆虫剤の開発に努力〈Press Oct. 1999 WHO-126〉

 マラリアは世界の保健上、最も大きな問題であり、毎年100万人以上が死亡し、特にアフリカの子供が標的となっている。毎年3億以上の臨床例が報告され、経済的な生産性や日常生活に大きな影響を与えている。マラリア駆虫剤の開発はあまり進行していなかったが、WHOが昨年マラリアの駆逐を第一の目標に掲げ、マラリア駆虫剤の研究開発を支援することになった。WHOと日本政府、日本の製薬会社12社がこの目的のために第一歩を踏み出した。日本の製薬業界は効果的な薬剤の開発に寄与してきた。開発された新薬は種々の病気に使われてきたが、それらはマラリア駆虫剤としての薬効があるか調査されていない。今回、JPMWと呼ばれるベンチャー企業が12の日本の製薬会社で開発された薬剤を抗マラリア活性があるか調査研究することになった。次の5年間に1万の化学物質を検査し、その中からマラリアに効果的な薬剤を発見し、マラリア患者の死亡率の低下を目的としている。

イラクにおけるポリオの流行を防ぐためにWHOはワクチン接種のキャンペーン〈Press Oct. 1999 WHO-125〉

 5才以下の子供にポリオが流行するのを防止するためにWHO、UNICEF、イラク政府が共同でポリオワクチン接種のキャンペーンを行った。イラクでポリオウイルスが流行すると、イラク国内だけではなく、近隣の地域に脅威となるため2000年末までにポリオを撲滅するキャンペーンを開始した。1999年10月4〜6日と11月8〜10日の2回にわたり、イラクの5才以下の小児350万人に対し、全国的規模でワクチン接種を2回行った。イラクに接している国はイラン、ヨルダン、クエート、サウジアラビア、シリア、トルコなどで、国境では人々が往来しており、ポリオの伝播が起こりやすい状況にある。5月以来16例の麻痺性ポリオが発生し、さらに最近発生した19例についても調査している。患者の80%は2才以下の子供で、大多数はワクチンの接種を受けていなかった。WHOがポリオ撲滅キャンペーンを開始して10年になるが、報告されたポリオの数は全世界で85%減少し、サハラ砂漠周辺のアフリカとインドがポリオの感染地域として残っている。
 1999年4月から8月にかけて、イラクの南部および中央部で1985例のコレラが発生し、30例が死亡した。劣悪な衛生状態、汚染された水の供給、電力の供給不良などがコレラ流行の主な理由となっている。WHOは、コレラの流行を予防するために薬剤、輸液、健康教育、水質の検査などを行っている。

注射の安全性 -その2-〈Fact Sheet Oct. 1999 WHO-124〉

 注射器を再利用する国とその再利用率は旧東欧諸国15%、中東15%、インド50%、中国50%、アフリカ50%、東アジア・南太平洋諸国50%などと多い。B型肝炎やC型肝炎が蔓延している地域では、不潔な注射器から感染している場合が多い。B型肝炎の新患者発生は不潔な注射器によることが多く、台湾では1977年に60%、モルドバでは1994年に52%、エジプトで1996年に40%、インドでは60%、ルーマニアでは30%を占めていた。B型肝炎は、発症する年齢が若ければ若いほど慢性化することが多い。慢性B型肝炎患者3億7000万人のうち、不潔な注射器の使用により毎年800万〜1600万人が感染し、100万人が死亡している。B型肝炎は、感染症の中で死亡順位は第5番目である。C型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患患者は1億7000万人で、不潔な注射器の使用により毎年200万〜450万人が感染し、死亡者数は増加している。慢性肝疾患の75%はB型肝炎およびC型肝炎である。注射器によるHIV感染は肝炎ウイルス感染に比べ非常に少ないが、それでも年間7.5〜15万人が感染している。このような注射による血液感染性病変を防ぐためには、注射による治療を最小限にし、注射器の再利用を禁止し、安全に使用することを教育しなければならない。

注射の安全性 -その1-〈Fact Sheet Oct. 1999 WHO-123〉

 医療行為として頻繁に使われる注射の数は全世界で1年間に120億本と推定されている。この注射は95%が治療目的で用いられている。予防医学的に用いられる注射(5%)は、子供の致命的な疾患を減らすためのワクチンとして用いられている。最近では、混合ワクチンとして使用することでワクチンの注射回数を減らしている。治療目的ではペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質の注射が頻繁に利用されている。プライマリーケアで用いられている薬の大半は経口的に投与されている。注射による薬剤投与は重症患者の治療に必要であるが、多くの国では過剰に投与されている。多くの発展途上国では滅菌せずに、注射器や注射針を再利用するために、血液由来の病原体感染症が起こる可能性が高い。滅菌していない注射器を使うことにより、肝炎ウイルス、HIV、エボラウイルス、デング熱ウイルス、マラリア原虫などの交叉感染が起こり易い。さらに不潔な注射器を使うことにより、膿瘍、敗血症、ポリオなどに感染することになる。アフリカでは、注射器が壊れて使えなくなるまで何回でも使用している。不潔な注射器の使用により年間130万人が死亡し、それに伴う出費は年間5億3500万米ドルにものぼる。

WHOが活動的な高齢者を作り出すために世界規模のウォーキングを主催〈Press Sep. 1999 WHO-122〉

 1999年10月2日に86か国、1500以上の都市で高齢者が集い、健康増進のためにウォーキングを行なう。世界人口に占める60歳以上の男女の数が急速に増加することに対応し、WHOでは活動的な高齢者を作り出すために企画した。現在、世界の高齢者は5億9000万人いる。ウォーキングは日の出が世界で最初に始まるフィジー、ニュージーランド、ニューカレドニアから始まり、オーストラリア、日本、中国、フィリピン、インド、中東、ヨーロッパ、アメリカと続き、最後に太平洋地区で終る。参加者は海岸、田舎の道路、公園、球場、ショッピングモールなどでウォーキングを行なう。ニュージーランドでは20か所でウォーキングが行なわれ、マオリ族の聖地でも実施される。日本では100か所の都市で実施される予定で、名古屋では1万人以上がお寺の巡礼を行なうことになっている。フィリピンでは100万人の高齢者が歩く予定である。その他、タンザニア、イギリス、ブラジル、メキシコ、ニューヨークなどでもウォーキングが行なわれる。

トルコ地震の際に報道された誤解に対しWHOが警告〈Press Aug. 1999 WHO-121〉

 大災害が発生すると感染症の流行、死体による感染、外国からの医療援助の必要性、薬品や医療用具の大量供給、野戦病院援助の必要性などの数々の誤った報道が伝えられている。WHOのThieren博士によれば自然災害が発生すると医療サービスは24時間以内に提供できるようにすべきであり、負傷者の大多数は災害発生3〜4日後に来院し、その後は普通のパターンに戻る。建物倒壊から救出された人の85〜95%は地震発生後24〜48時間以内に助け出されている。一般に地震発生後1週間経過すると、一般的な治療の要望や外科的処置の要望は平常に戻る。負傷者数がいくら多くても、患者の大多数は軽い切傷や打撲傷であり、少数は骨折を起こし、ごく少数では複雑骨折や内臓障害を起こし、手術や集中治療が必要になる。地震の場合に感染がおこるのは、上下水道施設の破壊、予防接種率の低下や衛生環境の破壊がおこり、蚊や囓歯類動物が増えるためである。自然災害では死体による感染はほとんどみられない。今回のトルコでの医療支援では挫滅症候群を防ぐために輸液が必要となったが、重症例では腎透析を行なった。外国からの援助が問題となるが、古着、自分の使用している薬剤、血液・血液関連製品の提供、医師団あるいはパラメディカルチームの派遣や野戦病院の設置などは不要であるとのことである。

コソボで感染症流行の危機〈Press Aug. 1999 WHO-120〉

 コソボでポリオの疑い1例、A型肝炎の疑い24例、腎症候性出血熱1例が発見された。コソボでは過去4年間のワクチン接種は極めて低率であった。2歳児に対するポリオと麻疹ワクチンの接種は1996年で53%にしかすぎなかった。1996年にはアルバニアとコソボでポリオが流行した。WHOはユニセフと共同で2000年末までに地球上からポリオを撲滅するためのキャンペーンに取り組んでいる。WHOと民間組織は共同でポリオ、麻疹、破傷風、ジフテリア、百日咳の5種類のワクチン接種を開始している。8月4日〜11日の間に首都プリスティナの病院に入院した24例の黄疸患者はA型肝炎の疑いが強く、汚染した水から感染したようである。低ワクチン接種率、水道水および衛生状態の悪さ、廃棄物の回収の欠如、人口の持続的移動などが原因で感染性疾患の流行は起こる。

日光とヒトの健康〈Fact Aug. 1999 WHO-119〉

 日光はヒトが生活する上で必要であると同時に、ヒトの健康に極めて危険なものにもなる。日光に当り過ぎると、種々の皮膚癌や白内障などの眼科疾患になる。過剰な紫外線にあたると、慢性の皮膚病変をおこす。このうち、メラノーマは最も悪性度が強い。紫外線が線維細胞を傷害し、皮膚をたるませ、その結果、皺がよるため老けて見える。世界中で毎年200万人の皮膚癌が発生し、20万例のメラノーマが発病する。オゾン層が10%減少すると30万例の皮膚癌と4500例のメラノーマが発生することになる。皮膚癌は白人に多く発生する。紫外線の眼に対する急性影響は、日光角膜炎や日光結膜炎である。慢性影響は翼状片、結膜の扁平上皮癌、白内障などである。世界で2000万人が白内障で盲目になる。このうち20%近くが紫外線による。

発展途上国における堕胎〈Press May 1999 WHO-118〉

 世界では毎年約5000万例の堕胎が行われ、そのうち2000万例は危険な状態で行われている。危険な状態での堕胎の90%は発展途上国で行われ、そのうち94%の国は堕胎が法律で規制されている。そのため、危険な状態での堕胎による死亡者は先進国では3700例に1例であるのに対し、発展途上国では250例に1例と多い。毎年、危険な状態での堕胎により7万人の女性が死亡し、堕胎を受けた多くの女性が不妊症、慢性疾患、身体の機能障害などになっている。ネパールやドミニカ共和国でも避妊具を用いないため、子供が出来るケースが多い。WHOでは各種の避妊法を普及させ、堕胎を少なくするよう努力している。堕胎の原因は家族計画が実施されていないこと、郊外から都会への人口移動、貧困、婚外性交の増加、年少者の性交、避妊をしない性交などによる。

ポリオ〈Fact May 1999 WHO-117〉

 ポリオはポリオウイルスによる感染症で主に3歳以下の子供に感染する。中枢神経系に浸潤し、麻痺を起こす。ポリオウイルスには3型あるが、1型が最も多く毒性も強い。ポリオウイルスは経口感染し、発熱、易疲労性、頭痛、嘔吐、頚部硬直、四肢痛などである。ポリオに感染すると200例中1例は四肢麻痺を起こす。5〜10%は呼吸筋が麻痺するために死亡する。1998年には約5000例のポリオが報告されているが、実際の数字は5〜10倍の数になると思われる。WHOでは1998年からポリオ撲滅を目指し活動しているが、ここ10年間でポリオ患者は85%減少している。1988年には5大大陸に広く流行していたが、現在はアフリカとインドに限局している。2005年にはポリオが存在しない世界を目標にしている。現在の3大感染地域は南アジア(アフガニスタン、バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタン)、西・中央アフリカ(アンゴラ、コンゴ、ナイジェリア)およびアフリカ南端である。

ヨード欠乏症(IDD)の対策〈Press May 1999 WHO-116〉

 一年間に世界中で7億4000万人がヨード欠乏症(IDD)にかかり、脳障害、クレチン病、流産、甲状腺腫などを起こす。IDDは知能障害の最も重要な原因と考えられている。WHOでは胎児、乳児、小児の脳障害を防ぐためにヨード含有食塩やヨードを与えるよう指導している。2005年までにIDDによる各種疾患の撲滅を目指している。多くの国でヨード含有食塩摂取プログラムを取り入れた国が1990年の46か国から1998年には93か国に増えている。IDDが多発する国では家庭の3分の2はヨード含有食塩を摂取している。

職業病〈Fact Jun. 1999 WHO-115〉

 職業病として外傷や病気に罹患し死亡する人が、世界で毎年約110万人いるが、その数はマラリアの死亡者数とほぼ同じである。この内訳は癌34%、外傷25%、慢性呼吸器疾患21%、循環器疾患15%、その他5%となっている。毎年、2億5000万人が職業人として事故に遭遇し30万人が死亡している。毎年、1億6000万人が職業病に羅患しているが、その内訳は呼吸器疾患、循環器疾患、癌、聾、筋肉・骨格疾患、生殖器疾患、精神・神経疾患などである。職場で適切な医療サービスを受けている職業人は発展途上国では5〜10%、先進国でも20〜50%に過ぎない。ILO(国連・国際労働機関)によれば1997年の統計で職業病としての外傷や病気による経済的損失は、世界の国民総生産の約4%に当たる。現在60才以上の高齢者は5億9000万人いるが、2020年には10億人以上になると予想されており、職業病も増加する。

葉巻とパイプでふかす刻みタバコは紙巻タバコと同じように危険〈Fact Apr. 1999 WHO-114〉

 フランスのリオンにある国際癌研究所(IARC)は葉巻とパイプでふかす刻みタバコが紙巻タバコと同じように致死的な危険性があると報告した。今回の調査では葉巻とパイプでふかす刻みタバコを通常より厳重に抑制することが必要であると述べている。ドイツ、イタリー、スウェーデンなどにあるIARCの7つの研究所で5621例の肺癌患者と7255例の肺癌のない人を対象に調査したところ、葉巻喫煙者は非喫煙者よりも肺癌の発生率が9倍高く、パイプでふかす刻みタバコ喫煙者も8倍高かった。

各種疾患の中で精神・神経障害が経済的・社会的な負担を増大させている〈Fact Apr. 1999 WHO-113〉

 発展途上国、先進国のいずれの国でも、健康と病気に関する解析方法が必要となっている。そこで障害者として生活する年数(DALY:Disability Ajusted Life Year)の概念としてとらえるようになってきた。DALYは、死亡者数、未熟児死亡、障害者を考慮して、疾患の位置づけを解析している。1DALYというのは、健康的な生活を失い障害者になった1年間を意味する。この方法で各種疾患を当てはめてみると、次のようになる。
 1990年度の統計を用いDALYをパーセントで表すと、寄生虫を含む感染症22.9%、予期せぬ外傷11.0%、精神・神経障害10.5%、循環器疾患9.7%、呼吸器感染症8.5%、周産期疾患6.7%、悪性腫瘍が5.1%となり精神・神経障害が重要な問題となっていることがわかる。精神・神経障害には、精神病、てんかん、痴呆、パーキンソン病、多発性硬化症、薬物依存症、アルコール依存症、外傷後ストレス症、強迫症、精神病となり、精神・神経障害が各国で経済的・社会的な負担を増大させ問題になっている。
 コンゴ、エジプト、インドなどでは平均寿命が40才から66才に著しく延びたにも関わらず、精神・神経障害が大きな問題点として浮上している。世界の精神・神経障害の患者数は、うつ病3億4000万人、アルコール依存症2億8800万人、機能障害6000万人、てんかん4000万人、アルツハイマー病を含む痴呆2900万人、精神分裂病4500万人、自殺未遂1000万〜2000万人、自殺100万人になる。

らい病の撲滅が近未来に実現か〈Press Apr. 1999 WHO-112〉

 世界で最も恐れられている病気の一つであるらい病の撲滅は近いとWHOは発表した。しかし2000年末になっても、人口1万人につきらい病患者1例以下の目標を上回る国が約10か国ある。1985年に始まったMDT薬剤投与によるらい病患者の治癒により、地球上から85%のらい病患者が減少した。らい病患者が、人口1万人につき1例以上存在する国の数も、1985年の122か国から28か国に減少した。1985年には500万人のらい病患者がいたが、現在は80万人に著減している。1995年以来71か国にいる400万人のらい病患者にMDT薬剤が投与された。現時点では200〜300万人のらい病患者が治療を受けている。らい病患者に対する今後の戦略は、WHOは患者数が到達目標に達していない国に、緊急処置を追加して2000年までに基準を達成するよう勧告している。らい病の流行地域は人里離れているため、診断したりMDT薬剤を投与したりするのに困難な場合が多い。
 今後2〜3年で200万人のらい病患者が出現すると予想されているが、その患者の90%はアフリカ、南米、アジアなどの13か国に住んでおり、1999年の時点でこれらの国の罹患率は1万人につき4.4人である。この13か国を上から順あげると、インド、ブラジル、インドネシア、ミャンマー、マダカスカル、ナイジェリア、モザンビーク、ネパール、エチオピア、コンゴ、ニジェール、ギアナ、カンボジアとなっている。MDT薬剤の無料投与については日本財団が5年間に亘り、莫大な資金をWHOに寄付している。

アフリカ中央部でポリオの流行〈Press Apr. 1999 WHO-111〉

 WHOはアフリカ中央部の小児のあいだで流行していた四肢麻痺を調査し、その原因がポリオであることを確認した。ほぼ全症例が5歳以下の小児で、大部分は1〜2歳であった。患児の大部分はアンゴラの首都ルワンダにある人口過密地域に住み、家族と共に隣国より逃れてきた難民であった。未確認情報によると患児の数はここ数日で206名にものぼっている。南アフリカの国立ウイルス研究所でアンゴラの麻痺患者を調べたところ、採取した糞便検体22例中11例にポリオウイルス3型が分離された。麻痺患者の90%は、ワクチン非接種あるいは部分接種しか受けていなかった。ポリオは感染性の強い疾患で、中枢神経系を侵潤し数時間のうちに麻痺を起こす。WHOとユニセフはアンゴラ国の厚生省と協力して70万人の小児にワクチンを接種し、ポリオの流行を撲滅しようとしている。夏には300万人の小児に対して、ポリオワクチンの接種を計画している。WHOでは2000年中に、ポリオを全世界から撲滅するために国際協力を行なっている。西半球のポリオ最終症例は1991年にペルーにみられた。西大平洋地域では1997年にカンボジアで見つかったのが最後である。ポリオ三大感染地域と呼ばれているのは、南アジア(アフガニスタン、パキスタン、インド)、西アフリカ(主にナイジェリア)、アフリカ中央部(主にコンゴ共和国、アンゴラ)である。全世界の小児に対してワクチンを接種した結果、ここ10年間に90%の減少を見た(1999年には3500例から500例に減少)。

WHOが幼児虐待を主要な健康問題と認識〈Press Apr. 1999 WHO-110〉

 WHOは、0〜14歳の小児4000万人が幼児虐待を受け、健康と社会的ケアが必要と報告した。19か国(南アフリカ、スウェーデン、ドミニカなど)での国際調査によれば、幼児の性的虐待は女子で7_34%、男子で3~29%であった。米国の調査報告では200万人の幼児虐待の対策に124億ドルかかる。虐待された幼児は肉体的、情緒的、発育的見地から、健康的な生活を送ることも子供を産むことも困難である。WHOでは、先進国と途上国の幼児虐待の問題点を全世界的な規模で調査することになった。
 暴力、傷害予防、医療、社会科学、公衆衛生、精神病、心理学、法律などの専門家24人が幼児虐待の対策を立てることになった。プログラムでは、生後から両親が子供の扱い方の技術を学び、幼児虐待を減少させることにしている。この専門家集団が実行しようとしていることは、次のようなことである。1.世界規模で幼児虐待のデータを収集し、公衆衛生上の問題点とその費用を算出する。2.幼児虐待を防止に成功した方法や技術を学ぶ。3.幼児虐待に関する防止の評価と研究を継続的に進める。4.幼児虐待を防ぐために各国でプログラムの開発と犠牲者および家族のサポートを行なうなどである。

コソボ難民に感染症流行の危険〈Press Apr. 1999 WHO-109〉

 コソボ難民に感染症流行の危険のあることがWHOより報告された。感染の危険があるのは、麻疹とコレラのような水由来の伝染病である。WHOは来たる3か月間、コソボ地区のアルバニア人難民に250万USドルを投入し、感染症の予防対策を実施する。最初はコレラや他の水由来感染症、小児の急性呼吸器疾患や急性胃腸炎に対し、ワクチン投与による予防から始める。難民には精神的なカウンセリングも受けさせる。英国とイタリア政府から供与された25万USドルにも及ぶ衛生、救急、外科、麻酔、結核、精神病などの薬が入った薬品箱も配給する。WHOのDr. Brundtland事務局長は、バルカン半島に起こっている危機に対し、WHOおよび国際連合が果たす役割の重要性を強調している。

エルニーニョが健康に及ぼす影響〈Fact Sheet Nov. 1998 WHO-108〉

 エルニーニョは19世紀の初期から見られた現象で、3〜5年毎に赤道方面から暖かい水がペルー沖流れ込み、海の温度が温暖化することにより異常気候が発生する。エルニーニョの影響で、東南アジア、オーストラリアの一部、アフリカの一部では豪雨と洪水が起こった。インドでは夏の台風が弱まり、西カナダやアメリカ北部で冬の気候が温暖化した。干ばつは例年の2倍に増えた。1997〜1998年のエルニーニョではインドネシアで干ばつと森林火災が起こり、この影響でマレーシアでは呼吸器疾患が劇的に増加した。アマゾンでも同様の森林火災が発生した。この他、エクアドルやペルーで大洪水が起こった。エルニーニョの影響により、不衛生状態の持続と汚染された飲料水によりリフトバレー熱、マラリア、コレラ、赤痢、デング熱などの感染症が増加した。

気管支喘息〈Press Dec. 1998 WHO-107〉

 全世界で1億〜1億5千万人の人が気管支喘息に罹患し、患者数は増えている。毎年18万人が死亡している。スイスでは人口の約8%が気管支喘息に罹患しているが、25〜30年前はわずか2%に過ぎなかった。ドイツでは約400万人の喘息患者がいる。西ヨーロッパでは10年間で喘息患者が2倍に増加した。アメリカでも1980年代初期に比べ、喘息患者は60%増加し、死亡率も2倍の年間5千人になった。日本でも約300万人の喘息患者がおり、その内7%が重症、30%が中等度喘息である。オーストラリアでは16歳以下の喘息患者は6人に1人いる。インドでは1500〜2000万人の喘息患者がいる。ブラジル、コスタリカ、パナマ、ペルー、ウルグアイでは小児の喘息患者が20〜30%いる。喘息の最大の危険因子は小児期に室内のアレルゲンに爆露すること、家族に喘息あるいはアレルギー患者がいることなどである。その他、タバコの煙や工場の化学物質の爆露も危険因子である。さらに、都市化も喘息を増加させている原因である。喘息は慢性疾患であるので、継続的な治療が必要である。

初めての子宮頸癌のワクチン〈Press Feb. 1999 WHO-106〉

 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対する数種類のワクチンの開発が、WHOの会議で報告された。これは遺伝子技術を初めて利用した子宮頸癌ワクチンである。もしこれが成功した場合には、ヒトの癌に対する2番目のワクチンになる(1番目は原発性肝細胞癌を防止するB型肝炎ウイルスワクチン)。子宮頸癌は、女性では乳癌に次いで重要な癌である。毎年約50万人の新しい子宮頸癌患者が出現し、死亡率は非常に高い。毎年30万人が死亡し、そのうち80%は発展途上国の患者である。
 死亡頻度は先進国と発展途上国との間で大きな解離がみられる。死亡率は北アメリカや西ヨーロッパでは3〜5%であるのに対し、ラテンアメリカ、南西アジア、アフリカ諸国では20〜24%にもなる。子宮頸癌の原因は、ヒトパピローマウイルスによる性行為感染症である。患者は性行為活動の早い時期に感染するが、感染後20年以上たって癌になる。これらのワクチンは遺伝子技術を用いたウイルス様粒子で、これはHPV構造蛋白の外壁を構成している。現在、数種類のワクチンが作られており一部は予防ワクチンで、その他に治療ワクチンもある。

北半球の1999年〜2000年のインフルエンザワクチンウイルス株をWHOが決定〈Press Dec. 1998 WHO-105〉

 北半球の1999年〜2000年のインフルエンザワクチンウイルス株をWHOが決定した。インフルエンザワクチン株は次のA/Sydney/5/97(H3N2)様ウイルス、A/Beijing/262/95(H1N1)様ウイルスB/Beijing/184/93様ウイルス(またはB/Shangdong/7/97様ウイルス)の中から3種類のウイルスを選択する。インフルエンザBウイルス成分は各地域における疫学的データに基づいて各国で決める。これらの3種類のウイルス株は1998年から1999年のインフルエンザ感染地域のワクチンに広く利用されているインフルエンザA(H3N2)、インフルエンザA(H1N1)、インフルエンザBである。
 インフルエンザウイルスは常に変異するので、インフルエンザワクチンの使用も世界中で増加している。WHOは毎年2月中旬に北半球の冬季終了後に不活性化インフルエンザワクチンの成分をWHOは決定し発表している。南半球については9月に発表している。WHOではこの致死的なインフルエンザに対して効果的な予防手段としてワクチンの使用を推奨している。流行しているインフルエンザウイルスの菌株とワクチンの組み合わせがよい場合には、ワクチン接種患者の50〜80%が病気にかからないか、かかっても軽症で済む。
 大多数の成人はこの3種類のインフルエンザウイルスに感染したことがあり、ある程度の免疫力が残っているので、ワクチンの接種は1回でよい。小児に対しては4週間の間隔で2回接種がよい。
 今世紀に入ってから1918年、1957年、1968年にインフルエンザの大流行が起こった。特に1918年〜1920年にかけてのスペイン風邪と呼ばれた大流行では、少なくともインフルエンザで2000万人が死亡した。

飛行機に搭乗中の乗客の結核感染予防のWHOガイドライン〈Press Dec. 1998 WHO-104〉

 世界中で年間14億人の飛行機による旅行者がいる。これらの人のために結核感染防止のガイドラインがWHOから発表された。このガイドラインは結核などの感染疾患をもつ人と乗り合わせた搭乗客および乗務員を探し出し、その情報を知らせることである。特に飛行機が地上で待機中の場合は空調がほとんど働いておらず、また飛行時間が8時間以上長くなる場合は不十分な空調で機内の感染性は高くなる。1992年から1996年の間に活動性結核患者7人が2600人の乗客と乗務員に接触し、CDCより数人が結核に感染した旨の報告があった。この例でも報告されなかった結核感染者の数は多いと思われる。このことがガイドラインの出されるきっかけになった。この他、飛行機会社が感染者のきちんと記録し、空調のエアーフィルターも効率のよいものに取り替え、地上での待機時間を少なくすることも重要である。

髄膜炎の流行を防止するためにワクチンの供給が必要〈Press Dec. 1998 WHO-103〉

 WHOによるとアフリカの髄膜炎感染地域に対して最低700万人分のワクチンが必要である。現在供給できるワクチンは600万人分しかなく、100万人分が不足している。1996年以来アフリカ西部のセネガルから南東部のモザンビークにかけての国々で30万例が流行している。アフリカの髄膜炎は秋の終わりから春にかけて季節的に発生し、2月に大量に発生する。現在はチャド、マリ、ニジェール、ナイジェリアなどの国で猛威をふるい、この地域の住民2億8千万人が感染の危険性にさらされている。1997年に流行性髄膜炎の感染予防ワクチンを配布する国際団体が1997年に作られ、アフリカを中心に1400万人分のワクチンが配布された。髄膜炎の防御対策は流行の早期発見、ワクチンと抗生物質の投与により流行を防ぐことである。

高齢化の急速な展開〈Press Sep. 1998 WHO-102〉

 20世紀における世界の人口の特徴は、人口の老齢化現象である。現在、世界には60歳以上の人が約5億8千万人おり、そのうち3億5千500万人が発展途上国にいる。しかし、西暦2020年になると60歳以上の人は10億人以上となり、そのうち7億人以上が発展途上国にいる。
 過去50年間に発展途上国の死亡率は劇的に低下し、平均寿命は1950年代には41歳、1990年には62歳、2020年には70歳になる。現在、発展途上国20か国のうち平均寿命が72歳以上になっているのは、コスタリカ77歳、キューバ76歳、ジャマイカ75歳、アルゼンチンとスリランカ73歳、マレーシア・北朝鮮72歳である。次の四半世紀にはヨーロッパが世界最高齢者地域となり、25%にもなる。2020年の最高齢国は日本で31%で、次いでイタリーとギリシャ、スイス(28%以上)の順になる。2020年には60歳以上の高齢者が占める割合は、北アメリカで23%、東アジアで17%、南米12%、東南アジア10%となる。2020年に80才以上の超高齢者が多いのはギリシャ・イタリーで22%、日本・フランス、スペインで21%、ドイツで20%となる。1990年と2025年の35年間における高齢者の人口増加率はコロンビア、マレーシア、ケニアなどでは7〜8倍と急速に増加する。

世界的な糖尿病患者の増加〈Press Sept. 1998 WHO-101〉

 発展途上国では2050年に糖尿病患者の数が8400万人から2億2千8百万人と170%増加する。全世界では1億3千5百万人から3億人と122%の増加となる。この原因は、地球規模での人口の高齢化、肥満、不適切な食事、非活動的な生活習慣による。1995年と2025年について糖尿病患者の増加を国別に比較すると、インド(1900億人から5700億人)、中国(1600万人から3800万人)、アメリカ合衆国(1400万人から2200万人)、パキスタン(400万人から1500万人)、インドネシア(500万人から1200万人)、ロシア(900万人から1200万人)、メキシコ(400万人から1200万人)、ブラジル(500万人から1100万人)、日本(600万人から900万人)となる。1995年の統計では、女性の糖尿病患者が7300万人と6200万人が男性に比べて多い。現在の傾向が続くと、2025年には糖尿病の大半患者は、先進国では、65才以上であるのに対し、発展途上国では45〜64才と働きざかりの年代が罹患し、これが問題になっている。

ホルモン活性を撹乱する化学物質による健康の危険性〈Press March 1998 WHO-100〉

 多数の内分泌撹乱物質が健康にとって悪影響を及ぼす可能性が明らかになってきた。顕著な例としてホルモンの影響により精子数減少と精子機能障害が多数の国で報告されている。またホルモン感受性癌(乳癌、睾丸癌、前立腺癌)の発生頻度の増加は内分泌撹乱物質の影響によるものと思われる。
 アメリカの首都ワシントンで、3月16〜18日にWHO主催により北米の専門家が集まり、ホルモン活性を撹乱する化学物質による健康の危険性について討論された。自然ホルモン、合成ホルモン、殺虫剤、モノマー、添加物質などを含む内分泌撹乱物質はプラスチック工業品、有機金属、合成洗剤、分解産物などに含まれている。これらの物質は合成、蓄積、放出、輸送などの種々の段階でホルモン活性を撹乱する。標的になる臓器は男女の生殖器、中枢神経系、甲状腺、免疫システムなどである。これらの内分泌撹乱物質に触れると小児では肉体的および精神的発達が阻害される。

毎年60万人の妊産婦の死亡〈Press April 1998 WHO-99〉

 妊産婦は出産時の合併症で毎日1,600人が死亡し、年間では585,000人にもなる。妊娠と出産時の合併症を起こす女性は毎年5,000万人にも及び、長期間にわたり不健康な状態にある。先進国では少ないが、発展途上国では妊産婦死亡も多い。中島事務総長によると一人が3米ドル出せばこのような母体と新生児の死亡や障害を防ぐことができると述べている。1998年世界健康デーにこの問題を取り上げた。妊産婦および新生児死亡の90%はアジアとサハラ砂漠以南のアフリカ諸国で発生している。発展途上国は先進国に比べ乳幼児死亡率は7倍、妊産婦の死亡率は18倍も高い。毎年8万人以上の女性が産道から膀胱や直腸へ通じる瘻孔を形成している。50〜100万人の女性がこの瘻孔を有し、治療を受けることもできず、家族からも見離されている。妊娠や出産時の合併症としては子宮脱、瘻孔、失禁、性交時疼痛、不妊症などがある。出産10万人に対し妊婦430人が死亡しているが、内訳は発展途上国480人、先進国27人である。妊娠が原因で死亡する女性がアフリカでは16人に1人と多いが、アジアでは65人に1人、ラテンアメリカでは130人に1人、先進国では1800人に1人である。栄養が摂取でき、妊娠および出産時の適切な治療が受けられれば、妊産婦死亡、死産、新生児死亡などが少なくなる。毎年、死産と新生児死亡が約800万人発生している。発展途上国では出産は6,000万人であるが、大部分が医学的知識のない人達によって介護されている。

WHO1998/1999年のインフルエンザワクチン処方内容の決定〈Press Feb. 1998 WHO-98〉

 2月にジュネーブで行われたWHOの専門家会議で1998〜1999年のインフルエンザワクチンの処方内容が決定された。インフルエンザウイルスの主要3抗原、A(H1N1)、A(H3N2)、Bの3種類が現在用いられている。今回の処方はA/Beijing/262/95/(H1N1)、A/Sydney/5/97(H3N2)、B/Beijing /184/93の3種類の抗原を用いることが決まった。現状では新型のA(H5N1)はワクチンに現状では使用しないことになった。1997年〜1998年2月までの間にインフルエンザはアフリカ、中南米、アジア、ヨーロッパ、オセアニアで発生した。新しい抗原性を持つA(H5N1)が1997年5月に香港で初めて報告され、引き続き11月、12月に17例が発生したが、それ以上流行しなかった。インフルエンザの流行する時期は北半球では10月から3月、南半球では6月から8月である。インフルエンザワクチンで免疫すると50〜80%の人はインフルエンザに感染しないが、たとえ感染しても病状が軽く、重篤な合併症も見られないという利点がある。大人では1回のワクチン接種で十分であるが、抵抗力のない子供では4週間の間隔をあけて2回接種することが必要である。

受動喫煙は肺癌の危険性が大〈Press Mar. 1998 WHO-97〉

 WHOの指導のもとにヨーロッパ7か国の12研究所で過去7年間に亘り、受動喫煙と肺癌との関連についてIARC(International Agency for Research on Cancer)が調査を行った。その結果、喫煙者のいる家庭で非喫煙配偶者が受動喫煙により肺癌を発生の危険度は16%上昇し、職場での受動喫煙では17%上昇することが明らかになった。さらに、今回の調査では受動喫煙がなくなると肺癌のリスクは減少することもわかった。WHOはマスメディアによる受動喫煙が肺癌と関係がないというような間違った報道がなされているとを指摘し憂慮している。

リフトバレー熱がケニアとソマリアで発生〈Press Jan. 1998 WHO-96〉

 リフトバレー熱による死者の数はケニアで350〜400人に達し、特に北東部の州に集中している。一方、隣国のソマリアでは80人の死者が南部で発生している。
 リフトバレー熱は洪水で溢れた溜り水にウイルス感染蚊が卵を産み、この感染蚊が多量に発生し、病気を媒介する。東アフリカでは11月〜翌年の1月までが雨期で、豪雨が集中するのでリフトバレー熱が流行する。リフトバレー熱の防御法は蚊に刺されないようにすることと、感染した生き物に接触しないことである。
 リフトバレー熱はフレボウイルス属Bunyaviridae科のウイルスにより発生する。このウイルスはケニアのリフトバレーにある農場の家畜に流行した1931年に初めて分離され、アフリカのサハラ砂漠南部に流行し、時にはエジプトにも感染が広がっている。家畜に感染すると雌羊や雌牛では流産を起こし、仔羊や仔牛では死亡する。ヒトでは通常、デング様疾患症状を呈し致命的にはならない。時に網膜炎、脳炎、出血熱などを起こすこともある。ウイルスは種々の蚊により伝染する。感染動物の血液や体液と接触することによりヒトに感染するので、屠殺動物を取り扱う人が多く感染する。ヒトからヒトへの直接感染は極めて低い。

ワクチンが年間1,200万人の生命を救済〈Press Jan. 1998 WHO-95〉

 小児のロタウイルス性下痢症や肺炎球菌性肺炎などの新しいワクチンと従来からあるワクチンの併用により毎年1,200万の人生命が救済できると小児ワクチン協議会(CVI)は述べている。従来からあるワクチンを投与することにより百日咳(年間死者35万人)、麻疹(110万人)、B型肝炎(80万人)、インフルエンザ菌B群感染症(50万人)、破傷風(50万人)、風疹(30万人)、黄熱(3万人)などに対し400万人の生命が救済できる。
 新規開発されるワクチンが使用できるようになると、肺炎球菌性肺炎(年間死者120万人)、ロタウイルス性下痢症(60万人)、下痢症(200万人)、急性ウイルス性呼吸器感染症(40万人)、マラリア(200万人)、エイズ(230万人)などに対し800万人の小児と成人の生命が救済できる。
 感染症を防ぐために最も効果的な方法は新しいワクチンを完成させることであり、経済効率は非常に高い。地球規模での医療費は年間2兆米ドルに及んでいる。そのうち、年間約100億米ドルがワクチン接種に使われ、年間10億米ドルがワクチンの研究に用いられている。6種類の幼児疾患(ポリオ、ジフテリア、破傷風、百日咳、麻疹、結核)に対するワクチンが、発展途上国で2005年までに低価格での利用計画が立てられている。新規開発中のワクチンはより簡単な投与方法(経口投与など)であること、副作用がないこと、投与量が少なくて複数の疾患に効果があることなどが必要とされている。

コンゴ民主共和国におけるサル天然痘の流行〈Press Dec. 1997 WHO-94〉

 1996年2月から1997年10月にかけてコンゴ民主共和国で、サル天然痘の疑いのある患者511例が報告された。最近の調査ではコンゴの79村落で疑わしい患者419例が報告された。このうち22%は1次感染患者(感染動物からヒトに直接感染)で、残り78%は2次感染患者(ヒトからヒトに感染)であった。300例以上の患者から血清を、活動期患者19例から罹患した痂皮や水疱を採取し検査したところ、9例のサル天然痘ウイルスと4例の水痘ウイルスが発見された。
 ヒトに感染したサル天然痘は重篤な全身性疾患で、臨床症状は天然痘に類似している。このウイルスは西アフリカや中央アフリカの熱帯雨林に生息しているサルやリスなどにみられる。1980年代の流行時に比べ臨床症状は軽いが、ヒトからヒトへの感染率は高い。今回の流行は突発性で個々の人間が動物と接触したためと思われる。

地雷と健康への影響〈Press Dec. 1997 WHO-93〉

 約1億個の地雷が70か国に埋設され、これが公衆衛生上、壊滅的な影響を与えている。地雷は人間を殺傷し、重篤な身体障害を起こすと共に、人間の健康に対し、間接的にも多くの影響を与えている。即ち、飲料水、食物、耕作、基本的な健康サービスなどの活動を制限し、ワクチンの大量接種を妨げ、再興感染症を起こす原因となっている。
 12月4日にカナダのオタワで開催された対人地雷禁止条約(オタワプロセス)締結の会議に120か国以上が参加し、署名した。対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲を全面禁止し、貯蔵対人地雷は発効後4年以内、地雷敷設地域の対人地雷は発効後10年以内にそれぞれ廃棄することを求めている。さらに地雷の被害者に対して医療援助およびリハビリテーションなどの人道的援助を行う。
 地雷の被害を防ぐための費用や地雷による被害者の支援は莫大な費用がかかる。推定25万人の四肢切断患者に対し、手術やハビリテーションの費用は約7億5千万米ドルにものぼる。今でも毎月2000人以上が死傷し、四肢切断患者数も毎月約800人と増加傾向にある。地雷が埋められている地域は、健康政策を実施するスタッフ数も戦争で失われて少なく困っている。

脳卒中〈Press Oct. 1997 WHO-92〉

 第1回アジア太平洋脳卒中フォーラムがオーストラリアのメルボルンで開催され、31か国から400名の代表が出席した。今回の会議では脳卒中と脳卒中関連事項について討論した。脳卒中の死亡率(世界第3位)を減少させ、長期にわたる身体障害に対する戦略をたてることになった。さらに第1次予防、急性脳卒中患者の経済的負担と管理、第2次予防、リハビリテーション、発作後の評価、途上国における脳卒中患者に対するサービスおよび公衆衛生上の問題などが取り上げられた。WHOのプログラムでは予防に重点を置き、急性脳卒中患者が脳損傷を起こさないように、初期治療やリハビリテーションに力を入れている。脳卒中の大多数は高齢者に起こるので、若年者に発病した場合に比べ経済的負担は少ないといえるが、家族や公衆衛生上、大きな負担となっている。脳卒中は年間500万人の命を奪い、さらに3000万人が多かれ少なかれ身体障害者を起こす。WHOでは1993年より各地域で脳卒中に関する会議を開き、公衆衛生上の問題点を指摘し、改善している。

多剤耐性結核症の地球規模での広がり〈Press Oct. 1997 WHO-91〉

 WHO、CDCなどの報告によると多剤耐性結核症が地球規模で広がりを見せており、途上国ではこれになると死刑の宣告を受けたことを意味する。地球上の“多発地域”ではイソニコチン酸ヒドラジド、リファンピシリンに耐性を示す結核症が見られる。先進国でも多剤耐性結核症が出現しており、治療費は通常の結核症の100倍かかり、1人あたり25万米ドルにもなる。多剤耐性結核症が出現した国の3分の1は全結核症の2〜14%に多剤耐性菌が検出されている。今回調査した35か国の結核症5万例について国際的に著名な22の研究所で検査を実施した。“多発地帯”と認定されたのはインド、ロシア、ラトビア、エストニア、ドミニカ、アルゼンチン、象牙海岸などの国である。これらの“多発地域”は、旅行する際の地域の中心地、国際的な経済活動が盛んで、移住などが活発に行われていることが、多剤耐性結核症患者が旅行したり、他の国に持ち込んだりすることを防止できない。結核治療の最も良い方法は、DOTS(Directly Observed Treatment, Short Course:目の前で6か月間、薬を飲ませる方法)が最も有効であるが、必ずしもこの方法で治療されていないのが現実である。ラトビアでは結核患者の22%、ロシアでは7%、ドミニカでは9%、インドのデリーでは13%が多剤耐性結核症患者であった。結核症の撲滅対策が十分実施されているアルジェリア、チリ、韓国、タンザニア、ニューヨーク市などでは多剤耐性結核症を防いでいる。米国では多剤耐性結核症患者は減少しているが、耐性結核菌が見つかった州は過去6年間に、32州から42州へと広がっている。
 今回の調査により結核症の不適切な治療と多剤耐性結核症の広がりの関連性が初めて証明された。

北朝鮮の衛生状況〈Press Oct. 1997 WHO-90〉

 “北朝鮮人民共和国の問題は食料事情だけではない”とWHOは警告している。基本公衆衛生プログラムが中止されているが、その理由は自然災害や経済問題が大きく影響している。その結果、予防接種は殆ど行われなくなり、小児の栄養不良が増加している。9月15日〜20日に北朝鮮を訪れたWHOチームは予想外に結核が蔓延しているのに気づいた。北朝鮮では毎年1万人の結核患者が出ると報告されているが、実際にはさらに2万人の結核患者が出ていると推定されている。結核撲滅対策プログラムもなく抗結核剤もないため、子供の死亡率は50%にものぼる。病院やクリニックに常用薬物が不足しているので、WHOではこれらの薬物を政府に供給している。二十数個所の国内製薬工場の四分の一は洪水で壊滅し、残る工場も電気や水がないため殆ど稼動していない。小児の栄養不良が報道されているが、その原因は貧血とビタミンA欠乏症による。また、ジフテリア、麻疹、ポリオ、破傷風、結核、百日咳などの6大小児疾患に対するワクチン接種を緊急実施項目にしている。

東南アジアにおける山林火災の健康への影響〈Press Sept. 1997 WHO-89〉

 インドネシアにおける山林火災による煙霧(スモッグ)が人体や環境に悪影響を与えててる。オーストラリア、米国、日本なども消火活動にあたっているが、長引く乾燥と酷暑で消火活動は難航している。この煙霧に長時間曝露すると、汚染された大気中の微細粒子を吸い込むことになり、慢性呼吸器患者、乳幼児、高齢者に悪影響を及ぼす。9月だけでもサラワク、マレーシアで2万6千人が入院した。表面の樹木の火が消えても、汚泥層の下層に移った火はなかなか消えない。WHOでは20万米ドルを技術援助と機器援助に投入している。大気汚染を防ぐためにはマスクを着用し、窓や扉は締め、できるだけ室内にとどまり、医学的な警告を守るようにすることが必要である。クチン、サラワク、マレーシアでは10ミクロン以下の微細粒子による下部気道障害が目立つ。急性の健康障害としては咳の悪化、下部気道の症状を訴える喘息患者に気管支拡張剤を用いることが多くなり、同時に入院患者や死亡者も増加している。慢性の健康障害としては慢性気管支炎の患者が増えている。WHOでは各国が協力して消火活動や医療援助を行うよう要請している。

健康的加齢の世界的動向〈Press Sept. 1997 WHO-88〉

 2020年には60歳以上の高齢者が10億人に達し、そのうち開発途上国に7億1千万人が住むようになる。現在、60歳以上の高齢者の人口は5億4千万人でそのうち3億3千万人が途上国と推定されている。ヨーロッパ、北アメリカ、東アジアにおける2020年の60歳以上の人口はそれぞれ24%、23%、17%と増加する。2020年に最も老齢化する国は日本で31%、次いでドイツ、ギリシャ、イタリア、スイスと続き27%以上になる。現在最も老人の多い国はギリシャで22%である。WHOでは加齢と健康に関し、国際的高齢者ウォーキング大会を健康増進の目的でブラジルのリオデジャネイロ、スイスのジュネーブで9月下旬〜10月上旬にかけて実施する。このウォーキング大会は10月1日が「国際高齢者の日」に決められているためである。このような試みにより各国の健康に要する経費の削減も可能である。核家族、都市化、女性の社会進出などよる傾向が途上国にも見られてきている。
 1999年10年1日の国際高齢者の日には、時差に沿ってオークランド、シドニー、東京、上海、バンコク、ジュネーブ、ロンドン、リオデジャネイロ、ニューヨーク、バンクーバーというように、24時間を通して国際都市間で高齢者ウォーキング大会を実施することにしている。

食物の放射線照射〈Press Sept. 1997 WHO-87〉

 食物の放射線照射の上限値は厳密には10kGy以下とされいてる。食物の放射線照射は安全で、食物の品質を保ち、有害な微生物も破壊する。WHO、FAO(国連食物農業機構)、IAEA(国際原子エネルギー機構)が9月にジュネーブで放射線照射の上限値について協議した。50年にわたる研究結果から、75kGyまで放射線照射しても食物は安全で、栄養学上も問題はなかった。サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、リステリア、エルシニアなどの有害微生物の食物付着が、公衆衛生上の問題点となっている。米国の例では、牛肉や家禽類の肉に対して、1997年1月から大腸菌の検査が始まり、1998年1月からはサルモネラ菌の検査を実施することになっており、これらの食物に放射線照射することは微生物をなくすために最もよい方法であるが、10kGy以下では、有効性に疑問が生じる。
 香辛料の平均放射線照射量は、通常よりも多く、フランスでは11kGy、アルゼンチンや米国では最大30kGyが用いられている。免疫学的に抵抗力のない入院患者の食物の殺菌には、75〜100kGyが用いられている。オランダでは食物の放射線照射に平均75 kGyを許可してきた。米国とソビエトでは過去20年間にわたり、宇宙飛行士のための食物の保存と殺菌のために放射線照射をしてきた。温度によって実施する食物殺菌に比べ放射線照射による食物殺菌は優れている。今回の専門家グループの結論は10kGyよりも放射線照射量が大きくなっても、食物の変化は少なく、微生物による危険性を減らすために消費者に役立っている。

遠隔医療の可能性〈Press Sept. 1997 WHO-86〉

 ITU(International Telecommunication Union)によるTELECOM 97フォーラムで、WHOの中島事務総長は情報および遠隔通信技術が貿易、経済、政治のグロバリゼーションに貢献しており、さらに健康に対しても重要な役割を果たすと述べている。
公衆衛生と遠隔通信の専門家が多数出席し、遠隔医療技術を利用することによって遠くにいる患者の診断や外科手術のアドバイスを僻地の医療従事者に提供することができる。モスクワ、ワシントン、ジュネーブの間で生中継をすることにより、地球上の異なった地域にいる医療人を技術的に結びつけることができた。遠隔医療は新しいアイデアではないが、技術的な進歩により健康の増進と疾病の防御に役立つようになってきた。
適切な遠隔情報システムを構築することによりヘルスケアが実施されている場所とされていない場所のギャップを埋めることができる。その障害となるのは、遠隔医学の恩恵が必要な僻地に電力が供給されていないことである。さらに現状では、医学情報の秘密保持の問題、倫理的、法律的問題、人的資源のトレーニングが必要などの問題がある。遠隔医療は今後発展し、今後その重要性はますます増大する見込みなのでWHOとITUはこの問題について協力関係を密接にすることになった。

500万人の小児死亡を予防〈Press Sept. 1997 WHO-85〉

 IMCI(Integrated Management of Childhood Illness)によれば、5歳以下の小児が毎年多数死亡しているが、簡単な処置により効果的に予防することができる。現在、全世界では5歳以下の子供が毎年1100万人以上死亡しているが、IMCIの世界的戦略により500万人の子供が救われている。5歳以下の小児死亡の70%以上は、5大疾患と呼ばれている肺炎、下痢、麻疹、マラリア、栄養不良のいずれかで死亡している。IMCIでトレーニングを受けた医療従事者が病気の子供をケアすることにより、医師の薬物治療費を80%下げることができた。ドミニカのサントドミンゴで9月9日〜12日に行われた会議で、民間医療団体および政府医療団体の両方の専門家達が「行動を起こすことが子供の健康状態を改善し、不必要な入院や小児死亡を減らすことができる」と述べている。IMCIの目標は医療従事者の訓練、医療システムの質の改善、家族やコミュニティのヘルスケアのなどが当面の目標になっている。
 IMCIは医療従事者に全般的に機能的なアプローチをし、病気の治療時には他の5大疾患についてもチェックすることにしている。IMCIの戦略は健康システムを改善する経済的な効率の良い方法である。

ガンビアの小児肺炎を予防する新しいワクチン〈Press April 1997 WHO−83〉

 Haemophilus influenzae b型(Hib)菌による小児の肺炎や髄膜炎の予防に、新しいHibワクチンの投与がガンビアで試行された。近年、大多数の先進国では小児にHibワクチンを投与し、Hib髄膜炎を予防してきた。途上国ではHibワクチンの投与はワクチンが高価なこと、有効性に対する疑問があることなどからあまり利用されてなかった。先進国と比べ、途上国のHib感染症は重症例が多く、より若い子供に発生し、髄膜炎より肺炎が多いのが特徴である。今回の試行は、先進国とは疫学的な状況が全く異なる途上国のHib感染症に対し、ワクチン投与がどの程度の効果があるかを調査するものでもある。年齢2か月、3か月、4か月の小児42,848例をDTP添加Hibワクチン投与群とDTP投与の対象群と分け、発生頻度を調査した。細菌培養でHib菌が確認された50症例では、ワクチンを摂取した子供の95%に有効であった。また、Hib肺炎の予防に対してはワクチンの効果は100%有効であった。
 X線診断で重症肺炎と診断された449例の小児のうち、Hibワクチンを受けて感染した患者は20%と少なかった。アフリカにおけるHibワクチンの効果は、今回のガンビアにおける試行で証明されたが、アジアにおけるワクチンの効果については現在調査中である。今後さらに効果的なワクチンが出現することが必要である。

大腸菌感染症の増加〈Press May 1997 WHO−82〉

 E.coli O157:H7の病原菌による食物由来の大腸菌感染症が近年増加しており、WHOは予防と撲滅に努力している。この大腸菌感染症は汚染された食肉から人に感染する。1996年〜1997年にスコットランドでE.coli O157:H7が流行した時には、1つの食肉業者の汚染牛肉から496人が感染し、19名が死亡している。しかし、新鮮な野菜も感染源として最近重要視されている。米国CDCの報告では1995年と1996年に汚染レタスからE.coli O157:H7感染症が発生し、1996年には生リンゴジュースにより汚染が流行した。その他、ソーセージ、ヨーグルト、マヨネーズ、フルーツジュースなどからも感染が起こっている。E.coli O157:H7感染症では出血性下痢を起こし、とくに小児では出血性尿毒性症候群(HUS)で腎不全になり死亡することもある。1996年の夏には日本で流行し、9,000人が感染し、12人の小児が死亡した。流行の中心となった堺市では5,700人が感染し、カイワレ大根が感染源と考えられている。
 1997年にもカイワレ大根由来の流行が発生している。14か国の専門家がWHOに集まり、E.coli O157:H7の予防と撲滅について会議を開き次のような注意事項が発表された。食物を洗う際に清潔な水の使用、屠殺された食肉は清潔に管理、牛乳にE.coli O157:H7の混入防止、食品を扱う業者の教育と食料品の料理法の注意点、農夫や屠殺人の衛生管理などを十分行うことなどである。

子宮頸癌の細胞スクリーニング検査は役にたつか〈Press March 1997 WHO−81〉

 WHOとEUROGIN(ヨーロッパ女性性器感染症・癌委員会)から子宮頸癌の細胞スクリーニング検査に関する報告書が提出された。この報告書には子宮頸癌の撲滅対策、子宮頸癌の疫学、歴史的背景、治療法、ヒトパピローマウイルスに関するワクチンの開発状況、細胞診と子宮頸癌スクリーニング検査における新技術について述べている。1943年に開発されたパパニコロウ法は子宮頸癌の予防と撲滅に非常に有効であった。少なくとも3〜5年ごとに子宮頸癌の大量スクリーニング検査は子宮頸癌の死亡率減少に有効であった。カナダとフィンランドでは、細胞スクリーニング検査により死亡率が70%も減少した。しかしながら、先進国でも子宮頸癌患者では50%以上が死亡し、途上国では75%が死亡する。さらに定期的に細胞スクリーニング検査を受けている患者(特に若い女性)にかなりの進行癌が発見されている。細胞スクリーニング検査により発見できない理由は、検査の間隔(5年以上)が長いことと、10〜30%の偽陽性患者が出現することである。その原因は採取検体の品質が悪いことと検査成績の判定が不適当なことによる。子宮頸癌に対する細胞スクリーニング検査を能率化するために自動解析機器を用いると、偽陽性が減少し、精度も高くなる。WHOは一次予防として子宮頸癌のワクチン接種、二次予防としてヒトパピローマウイルスDNAテストを用いたスクリーニング検査の実施という戦略を考えている。コルポスコピーも細胞診で異常患者の子宮頸癌前癌状態を発見するのに有効である。子宮頸癌は早期に性的活動を開始した人や多数の性的パートナーをもつ人に多い。先進国および途上国のいずれでも、子宮頸癌の90%以上は、子宮頸部のヒトパピローマウイルスによる性行感染による。初期で無症候期に子宮頸癌が発見できると、手術や放射線療法で治癒できる。

タジキスタンでの腸チフスの流行〈Press March 1997 WHO−80〉

 タジキスタンにおいて、1997年1月から腸チフスが流行し、首都ドゥシャンベで多数の患者が発生し危険状態にある。タジキスタンでは入院患者、家庭で療養中の患者は約5,000名に達し、46名が死亡している。タジキスタンの患者から分離されたSalmonella typhiの約92%がファーストチョイスとして使用されている抗生剤に耐性であった。感染源はまだ同定されていないが、塩素工場が閉鎖され、水道水の殺菌が不十分なためドゥシャンベの飲料水は過去3か月にわたり汚染されている。腸チフスの流行の主な原因は汚染飲料水であるが、貧弱な衛生施設と衛生状態の悪化により2次的に広がっている。今後、タジキスタンでは5〜6万人の患者が発生するものと予想されている。腸チフスの致死率は抗生剤が適切に投与されないと10%になるが、適切であれば1%以下に減少する。昨年の豪雨で老朽化した下水施設から汚水があふれ、飲料水が汚染されたために腸チフスの流行が始まった。タジキスタン厚生省の要望により、WHOの専門家チームが派遣され、治療薬および診断薬が供給され、技術的なアドバイスも行なわれている。日本政府はタジキスタンの腸チフスの流行防止のために100万米ドルを供与する。現状の悪化をさけるために、適切な抗生物質(ciprofloxacine)を乳幼児や高齢者などのハイリスクグループの入院患者に投与する必要がある。塩素を投与する上水施設を建て直し、衛生状態を改善するための教育活動を行うことが必要である。

ドラクンクルス感染症を撲滅した国の出現〈Press Junuary 1997 WHO−79〉

 ドラクンクルス感染症は糸状虫による重篤な寄生虫感染症である。イランでは1970年代半ば以降、パキスタンでも1993年10月以降には症例の報告はない。その他、オーストリア、バルバドス、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、コロンビア、クック島、キューバ、ドミニカ、フィンランド、キリバチ、モンゴル、パプアニューギニア、ルーマニア、シンガポール、ソロモン島、スイス、トリニダートトバコ、バヌアツなど19か国においても現在までのところ症例の報告はない。
 WHOの基準では、糸状虫症例が3年連続して報告がない場合を、ドラクンクルス感染症がない国として認定することになっている。1997年1月23〜24日にイランとイラクが、WHOからドラクンクルス感染症が存在しない国としての認定された。パキスタンでは850米ドル、イランでは335米ドルを賞金にかけて、このドラクンクルス感染症の発見に努めたが、みつからなかった。現在、ドラクンクルス感染症が発生する地域はサハラ砂漠南部のアフリカ16か国とアジアのインドとイエメンである。
 1992年と1996年を比較すると世界の感染村落数は、23,000から9,900に減少している。1996年には、スーダン以外の国では21〜85%減少した。ケニアは過去2年間報告例がなく、ニジェールでは1992年に33,000例の報告があったのが、1996年には3,000例に減少している。インドでは1984年に4万例報告されたが、1996年には9例まで激減した。世界の最濃厚感染地域のスーダンは、世界の症例の77%(10万例以上)が報告されいる。ドラクンクルス感染症では発熱、悪寒、嘔吐を伴う腹痛を訴える。この病気は飲料水から感染をするが、現在のところ、効果的な薬物やワクチンは発見されていない。


ポリオ撲滅のためにアジアで2億5千万人の子供がワクチン接種〈Press February 1997 WHO−78〉

 ポリオ撲滅のためにワクチンを接種した5才以下の子供はアジアで2億5千万人にも達している。インドだけでも1億1千700万人の子供がワクチンの接種を受けた。この他、ポリオの大量ワクチン接種を行っている国はバングラデシュ、ブータン、中国、ミャンマー、ネパール、バキスタン、タイ、ベトナムなどである。今回のアジアでのワクチン接種は1988年にWHOがポリオ撲滅計画を始めて以来、最も大きな成功をおさめた。過去、何十年にもわたりインド大陸はポリオウイルスの濃厚感染地域として知られていた。1996年から1997年にかけてバングラデシュ、インド、パキスタンの3か国で、ポリオ撲滅のための歴史的な戦いが始まった。インドをはじめ、他の国でもワクチン接種に対して、多数のボランティアが協力している。ロータリークラブのボランティアは財政的支援やワクチンの運送などを行っている。ボランティアによるワクチン接種の援助がカンボジア、韓国、インドネシア、ラオス、モルジブ、モンゴル、フィリピン、スリランカなどでも実施され、成功している。1988年に地球上からのポリオ撲滅が開始された年には、インド大陸のバングラデシュ、インド、パキスタンの3か国でポリオが2万5千730症例 (全世界で3万5千251例)が報告された。1995年には世界中で7028例が報告があったが、この3か国では3820例と減少している。ポリオワクチン接種により今後、これらの3か国での感染者は減少するものとWHOは予想している。


IDDM患者のインスリン治療、課題は価格〈Press November 1996 WHO-77〉

 1921年にBantingとBestがトロントでインスリンを発見して、今年でちょうど75周年を迎えた。WHOの予想では、糖尿病の患者は現在1億2千万人いるが、2025年には2億5千万人に増加する。糖尿病患者の5分の1はIDDMで、インスリンの注射が必要である。残り80%の糖尿病患者はNIDDMである。
 糖尿病の長期間にわたる合併症として盲目、腎不全、心臓発作、壊疽による四肢の切断などが起こるので、これを防止するために適切な治療が必要である。インスリンの値段は1バイアルあたり、3〜22米ドルで国により価格も異なる。1バイアルあたりのインリスンの平均価格が一番安いのは中東で2.7米ドル、東南アジア2.8米ドル、アフリカ9.2米ドル、中南米12.2米ドルの順である。アフリカの大多数の国では、1バイアルのインリスンの値段はサラリーマンのひと月の給料に匹敵する。国際糖尿病連合(IDF)のJervell会長は「糖尿病、特にIDDM患者にインリスン治療を行うための最も重要な要素は価格である」と述べている。価格以外にもインリスンの供給体制や備蓄についても色々な障害がある。また地域によってはインリスンの使用が麻薬と同じように考えられている場所もあり、今後、これらの点を含め改善が必要である。


ロタウイルスの世界的調査によると事態改善が顕著〈Press October 1996 WHO-76〉

 ヨーロッパにおけるロタウイルス調査に関する第2回ワークショップがWHO本部で開催され、ヨーロッパのロタウイルス下痢症の疫学的調査および検査診断法について討議された。ロタウイルス下痢症は、世界に広く分布する小児疾患で、死亡率も高い。開発途上国では下痢症で入院している患者の40%を占め、毎年87万人が死亡している。ヨーロッパにおいてはロタウイルス下痢症の死亡率は低いが、小児下痢症で入院している患者の3分の1を占めている。WHOの専門家によるとロタウイルス下痢症は、近い将来ワクチンにより予防することができると言われており、ここ1〜2年で開発途上国でワクチンが投与される予定である。
 ヨーロッパ11か国の専門家は、ロタウイルス下痢症の疫学調査とウイルス株の性状について意見交換し、よく遭遇する血清型ウイルスを選びだし、ワクチンを作ることにしている。ヨーロッパのロタウイルスネットワークを確立し、ロタウイルス株の血清型、年齢、流行する季節などを疫学的データを提供することになっている。
 この会議に出席している国はフランス、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポーランド、ロシア、スペイン、スェーデン、イギリス、アメリカである。次回の開催は1997年1月ジュネーブで行われることになっている。


西アフリカにおけるコレラと流行性下痢性疾患〈Press September 1996 WHO-75〉

 西アフリカにおけるコレラの流行に対し、WHOは過去3年間に16か国での流行拡大の阻止と死亡率・疾病率の減少を目指して活動してきた。
 このプロジェクトはスイス政府とWHOの資金援助により運営され、WHOと各国の厚生省が協力して実施することになった。参加国はベナン、ブルキナファソ、カメルーン、チャド、コートダジュール、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアゼサウ、リベリア、マリ、ニジュール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴの16か国である。
 コレラの発生率は1993年の7,000例から1996年9月末で42,500と6倍に増加している。コレラの死亡率は1993年の369例から1996年の2,900例と9倍に増加した。
 西アフリカのコレラの症例数はアフリカ大陸の全症例の3分の2、コレラの死亡率の70%を占めている。
 アフリカ大陸のコレラは、南アフリカと東アフリカから、西アフリカに移った。その理由は1993年から始まったWHOによるコレラ撲滅計画が南アフリカで成功したためである。
 コレラの流行に迅速に対応することが、住民の生命を救い、感染の拡大を防止し、損害を最小限にくいとめることになる。WHOはコレラの流行を迅速に察知し、地域の研究所を支援し、診断用の試薬を供給している。重症患者の管理については、脱水症状の是正を目的とした経口補液と抗生剤の投与により、コレラの致死率を1%以下に減少させている。


ニューデリーで第2回ライ病撲滅国際会議が開催される〈Press October 1996 WHO-74〉

 10月11日にニューデリーで、第2回ライ病撲滅国際会議が開催された。この会議では、ライ病が流行している20か国から現状報告が行われた。4つのワーキンググループから各国レベルでの撲滅対策、すべての患者に治療を受けさせるための活動、ライ病撲滅運動とその評価、患者治療、ライ病撲滅およびリハビリテーションなどについての報告があった。参加者は撲滅対策の成果と流行地域での戦略および方略について討議した。ライ病は治癒可能な病気であり、多剤投与によりM. lepraeを撲滅することができる。今回の会議では、2000年までに人口1万人に対しライ病患者1例以下にすることを目標にしている。現在、世界中でライ病患者は126万人で、94万人が治療を受けている。しかし、毎年50万人以上の新しい患者が出現する。現在、ライ病が流行しているのは60か国である。ライ病で身体障害のある患者は100〜200万人いる。過去10年をふりかえると、800万人以上の患者さんが既に多剤投与により治癒している。またライ病患者として登録されている患者の90%にあたる85万人が現在、多剤投与による治療を受けている。10年前に比べ、地球上からの感染者の数は80%以上減少した。


アルバニアでポリオ(急性灰白随炎)流行阻止のため大量ワクチン投与〈Press October 1996 WHO-73〉

 WHOとユニセフは130万米ドルを投じて、アルバニアでポリオウイルスの流行を阻止するためにアルバニア厚生省と共同で、大量ワクチン投与の緊急キャンペーンを行っている。アルバニアでは本年4月以降ポリオで12人が死亡し、78人が感染している。イタリア政府から340万人分のワクチンが寄付され、10月3日にアルバニアに到着し、0〜50歳の人に投与された。さらにモナコ赤十字社より300万人分のワクチンが寄付された。ポリオの患者の大多数は10代および若年成人である。
 アルバニアでのポリオの患者は8月に27例、9月には33例で、アルバニアの37地区のうち20地区で流行し、他の地区にも広がっている。7月から8月にはギリシャで3例、ユーゴスラビアのKosovo地区で6例が発生した。ユーゴスラビアのKosovoとMetohijaで小児23万人の95%にワクチンが投与され、引き続き2回目の投与が行われることになっている。約70万人のアルバニア人はイタリア、ギリシャ、ユーゴスラビア、マケドニアなどの近隣諸国を往復している。WHOとユニセフは近隣諸国に対しての監視とポリオの流行に備えて対策を立てている。アルバニアでは今年の4月と5月の2回にわたり、ワクチン投与のキャンペーンが行われ、5歳以下の小児35万人にワクチンが2回投与されている。


専門家によるクリソタイルアスベストの評価〈Press Release September 1996 WHO-72〉

 数か国の政府からの依頼があり、クリソタイル(Chrysotile)の工業生産とその利用が健康へ及ぼす危険性について検討した。クリソタイルは3種類存在するアスベストのひとつで、壁材、防火板、吸音板として世界中で広く用いられている。クリソタイルの生産や処理に、適切な防御手段が講じられるようになって、吸音板やアスベストのセメントを生産する際の危険が少なくなった。建築現場ではクリソタイルに特別な防御を講じるよりも、安全な代替材料を用いるべきである。アスベストの特徴は伸展性に優れ、熱伝導も低く、耐火性がある。他の2種類のアスベストは、アモサ石綿と青石綿である。クリソタイルは世界のアスベスト貿易の95%に達し、40か国以上で生産されている。主な産出国はロシア、カナダ、カザフスタン、中国、ブラジル、ジンバブエ、南アフリカなどである。アスベストは工業的に大量に用いられること、繊維が拡散することなどの自然環境面で問題がある。アスベスト鉱石は天然では数センチメートルの長さの繊維であるが、加工するとサブミクロンの繊維に破壊されるため、ヒトが吸い込むと健康を害する。
 疫学調査によるとヒトがアスベストを吸引すると、び慢性肺線維症、肺癌、胸膜・腹膜の悪性中皮腫を合併する。1996年6月にジュネーブ本部で、専門家会議を行った際の資料によると、クリソタイルの生産と使用による暴露は以前は異常に高かったが、1970年代後半から極端に少なくなっている。粉塵排除装置のある生産工場では、肺癌や中皮腫の発現を少なくすることができる。空気中のクリソタイルを0.5繊維/ml以下に保持すると、アスベスト症は発現しない。クリソタイル製品を作る過程では肺癌の危険性が高いのに反し、クリソタイルのセメント生産、鉱山での採掘では肺癌の危険性が低い。クリソタイルに暴露しないように予防してるビルヂングでは危険性は低いが、予防不完全なビルヂングの保守管理者はクリソタイルや他のアスベスト繊維に暴露する危険性が高い。アスベストに暴露されている人が喫煙すると、肺癌になる危険性が高くなる。


飲料水の質に関するガイドライン〈Press September 1996 WHO-71〉

 飲料水の感染防止剤投与は、時に好ましくない副産物を生み出すことがあるが、これらの化学薬品によって起こる健康への危険は極めて少ない。WHOの健康と環境に関する委員長のKreisel博士は「飲料水に化学薬品を投与して感染を防止することは、公共の飲料水に対する最も重要な処理方法であり、これによってコレラ、腸チフス、肝炎などの水由来の感染症を防ぐことができる」と述べている。
 感染防止剤は遊離塩素、クロラミン、過酸化塩素、オゾンなどが最も普及しているが、これに反し紫外線照射、臭素、ヨウ素、銀などはあまり使用されていない。
 すべての病気の80%あるいは、開発途上国における死亡の3分の1以上は水由来の感染症によるものと推定されている。感染を防止するために、水源をヒトや動物の排泄物による汚染から防止することが必要である。これらの排泄物には細菌、ウイルス、蠕虫などが含まれている。水由来の感染症は幼児、小児、病人、高齢者などで多く、ヒトとヒトの接触感染、空気感染、食物接取などにより原因となる微生物が感染を起こす。
 通常、感染防止剤は水の匂い、味、色などが問題となるが、この他、長期間飲み続けているために起こる健康への障害、特に重金属や発癌性物質のような蓄積物質による汚染が問題となる。今回のガイドラインの中で、100以上の化学薬品の安全性が検討されている。重金属の中では鉛が最もヒトの健康に影響を与える。
 鉛は天然水の中にも含まれているが、多くは家庭の中に引き込んだパイプとそれをつなぐハンダ、鉛パイプなどに含まれている。炭酸カルシウムやpHの調節により飲料水中の鉛の濃度を低くすることができる。中枢神経系への鉛の影響は特に深刻であり、乳幼児、小児、妊婦などで特に影響が大きい。


アルバニアにおける凶悪な灰白髄炎(ポリオ)の流行〈PRESS September 1996 WHO-70〉

 1996年4月にアルバニアで発生した不思議な麻痺性疾患の流行の原因が、凶悪なポリオウイルスであることがWHOの研究所により解明された。アルバニアの北西部の農村地域で始まった流行は首都のティラナにも波及し、全国に広がった。現時点で66例が報告され、10例が死亡している。1996年4〜5月にアルバニアで、35万人の5歳以下の子供にワクチンの大規模投与を行ったことと今回の流行との関連が指摘された。しかし“大規模ワクチン投与とポリオの流行は全く関係がないことが確認された”とHull博士は述べている。66例のうち、わずか5名が5歳以下の小児で、大部分の症例は10代〜成人であった。0〜9歳の患者は7例、10〜46歳の患者は59例であることが確認された。このことは春のワクチン投与により5歳以下の子供の感染を防止したことになる。WHOとユニセフがポリオ撲滅運動の一環としてアルバニアにおける大規模ワクチン投与のキャンペーンを行っている。今回は成人を対象にしてワクチンの投与を行うが、ポリオワクチンは320万回分が必要で、費用は30万米ドルにものぼる。
 現在、モナコ赤十字より30万回分のワクチンが寄付されたにすぎず、ワクチンは大量に不足している。今回のアルバニアにおける麻痺性疾患の流行について、本年9月20日にコペンハーゲンでポリオ撲滅班の専門家会議を行うことになっている。WHOの専門家により収集された疫学的情報をまとめ、ワクチンの投与に関する詳細な計画を立てることにしている。WHO、ユニセフ、ロータリークラブはユーゴスラビア、モルドバ、ルーマニア、ウクライナでポリオワクチンの大規模投与を計画している。今回の流行以前に、ヨーロッパでは1996年に11例のポリオが確認された。そのうち10例はトルコで、1例はウクライナで発生したものである。1995年にはヨーロッパではポリオが206例確認されている。WHO、ユニセフ、ロータリークラブ、CDCなどではポリオの撲滅運動を行うことにより、2000年までに地球上からポリオの撲滅を目指している。


メンタルヘルスと薬物濫用〈Press Release August 1996 WHO-69〉

 世界中で15億人以上の人がアルコール、違法な薬物、タバコなどの濫用により神経精神異常や行動異常を起こしている。これらの患者の4分の3は開発途上国に住んでいる。現在11億人以上がニコチン依存症、4億の人が不安症、3億4千万人が情緒不安症、2億5千万人が人格異常、2億2千万人が痴呆、1億人がアルコール依存症、6千万人が知能障害、4千5百万人が精神分裂病、4千万人がてんかん、1千5百万人が薬物常習者、8百万人が脳障害と推定されている。知的障害者の約1%が精神病である。これはWHOの中嶋宏事務局長が、マドリッドで開かれた第10回世界精神病学会で講演した時に述べた数字である。
 精神疾患および神経疾患などで、多くの人が能力を発揮できなくなっている。この人達は、高血圧、関節炎、糖尿病などのような非感染性疾患を持っている人達よりも高い比率を占めている。神経精神疾患は、直接的あるいは間接的に社会に大きな負担をかけている。貧困、過密地帯での生活、失業、雇用の不安定、夫婦間の問題、人災や天災、戦争、女性・子供・高齢者に対する精神的暴力および肉体的暴力などがメンタルヘルスを損なっている。
 事務総長は違法な薬物、アルコール、タバコなど精神異常を起こす薬物を使用しないよう強調した。また「メンタルヘルス促進、知能障害・行動異常・神経疾患・薬物濫用の防止、早期診断と早期治療、精神社会的なリハビリテーション、法的権利、倫理的権利、人権についても配慮することが必要である」と述べている。さらに事務総長は「メンタルヘルスに対する国際連合の開催」を呼びかけ、精神疾患患者の差別をなくし各国政府とNGOが協調して、神経精神的問題や薬物濫用について新しいプログラムで取り組むことにしている。


大腸菌O157:H7〈Fact Sheet July 1996 WHO-68〉

 大腸菌は、人を含む温熱動物の腸の常在菌である。大腸菌の大部分は無害であるが、大腸菌O157:H7のような菌は重篤な食中毒を起こすので、腸管出血性大腸菌(Enterohaemorrhagic E coli;EHEC)と呼ばれる。この菌は赤痢菌のような毒素すなわちベロ毒素を産生し、7〜50℃(至適温度37℃)で発育する。このEHECは酸性食物中で発育し、pHが4.4まで耐性である。この菌は食物を加熱し、全体が70℃以上になると破壊される。
 大腸菌O157:H7に感染すると腹部の激痛と水様性下痢が起こり、最終的には出血性下痢をきたす。一般に発熱と嘔吐が起こるが、大部分の患者は10日以内に回復する。しかし小児や高齢者では、溶血性尿毒症症候群(Heamolytic uremic syndrome HUS)のような生命を脅かす合併症をきたす。HUSは急性腎不全を起こし、溶血性貧血と血小板減少症がみられる。EHEC患者の10%がHUSを起こし、死亡率は3〜5%である。潜伏期は3〜8日間で平均3〜4日間である。
 この菌は主に家畜から感染し、生肉や加熱不足の肉料理、生牛乳などの汚染した食品を介してヒトに感染する。大腸菌O157:H7を流行させた食品は、ハンバーガー、りんごジュース、ヨーグルト、チーズ、サラミソーセージ、とうもろこし、サラダの野菜などである。
 予防法としては、食物連鎖のすべての段階で適切な措置が必要で、すなわち、農場で生産される農作物から最終段階の食物を加工するまでの衛生を管理することが重要である。屠殺が衛生的に行われれば、食肉汚染は少なくなる。そなために、 農場や生肉生産の従事者に、衛生的な取扱い方を教育することが重要である。EHECを撲滅するための有効手段として、加熱と放射線照射などがある。肉製品、たとえばハンバーガーなどを食べる際は、十分加熱したものを暖かいうちに食べることが必要である。生牛乳は避け、低温殺菌した牛乳か、煮沸した牛乳を飲むことが必要である。トイレの後や牧場の動物に接触した後では、念入りに石鹸で手を洗う。果物や野菜は生で食べる時は十分に洗浄し、できれば皮を剥いて食べる。飲料水の安全性が疑われる場合には、煮沸するか殺菌剤を投与する。WHOが推薦する安全な料理法は、1)安全に調理された食品を選ぶこと、2)完全に火を通すこと、3)でき上がった食品はすぐに食べること、4)でき上がった食品は注意して保存すること、5)調理し保存してあった食物は再度火を通すこと、6)でき上がっている料理と生の食品を接触させないこと、7)手は頻繁に洗うこと、8)台所の調理台の表面は常に清潔にしておくこと、9)昆虫、齧歯類(ネズミ、ウサギ、リスなど)、その他の動物が食物に触れないこと、10)清潔な水を使うことなどが推奨されている。


アフリカの髄膜炎撲滅〈Press Release July 1996 WHO-67〉

 1996年の初めからアフリカでは髄膜炎が既に14万例以上発生し、少なくとも1万5千例が死亡するという、前例のない多数例の報告がされた。髄膜炎症例とその死亡例の95%以上はアフリカのエチオピアからセネガルに広がる”髄膜炎地帯”と呼ばれる地域で発生している。WHOは今後3年間にわたり、アフリカの被災国自身が髄膜炎の流行を発見し、迅速な予防と治療を行えるよう指導することになった。WHOのアフリカ支局がコンゴのブラザビルで3日間にわたる専門家会議で髄膜炎流行時の包括的な対策のプロトコールを作成した。この専門家グループはブルキナファソ、チャド、マリ、ニジェール、ナイジェリアの5か国を訪問し、現状評価を行い、次いで重篤な髄膜炎の流行を起したことのあるスーダン、モロッコ、エジプトを訪問した。髄膜炎のうち細菌性髄膜炎のみが流行を起こす。髄膜炎の流行は世界中のどこでも発生するが、大多数はアフリカの”髄膜炎地帯”で発生する。この地域では8〜12年ごとに乾季に発生することが多いが、1980年初めからは発生間隔が短くなってきた。現在の流行している髄膜炎の起因菌はナイセリア菌A群である。
 WHOは各国および各地域の健康を強化するために次のような分野にイニシアチブをとることになった。調査、症例の報告システムの改善、感染危険因子の再評価、臨床診断および検査診断、治癒などである。さらに各国が国民を迅速に守るための政策上のガイドラインによりワクチンを供給し、髄膜炎地帯18か国を守るため、ワクチンの在庫と各国に緊急に約10万個の在庫を確保する。感染に対する迅速な対応、迅速な評価の必要性と感染時に対処する準備をしておけば感染時の対応が最大限に発揮できる。このためにWHOは1996年10月23日〜25日にブルキナファソで各国の政府担当者とWHOの協力により西アフリカにおける髄膜炎のための対策委員会を開く。この会議の目的はこの地域にある各国の協力を一層強め、この地域で発生した場合に対する準備と対応をよくするために行う。


気候の変化と人の健康〈Press July 1996 WHO-66〉

 気候の変化は様々な自然および生態系を破壊し、人の健康に対し悪い影響を与えている。環境上の健康問題は、局所的な自然現象によるが、気候の変化による健康への影響は、広範な地域における巨大人口に対して影響を与えている。最も直接的な健康への影響は、熱波、嵐、水害などである。直接的な影響が少ないのは、環境上の悪化によって起こる社会経済的破綻である。間接的な気候上の変化は除々に進行し、農業、漁業、感染症の流行などに影響を与える。気候上の因子は感染症の出現と再出現をきたす。感染症の中で媒介動物由来の疾患は、途上国における主要な病因や死因になっている。世界で20人に1人はマラリアに感染しており、約3億5千万人のマラリア患者が毎年発生している。約1億人がアメリカトリパノソーマ症に接触する危険があり、地理的分布は米国南部からアルゼンチンやチリの南部までと広い。糸状虫症は中南米および西アフリカで1億7千5百万人が感染している。これらの疾患の原因となる媒介動物や中間宿主の分布・生育は種々の物理的因子(温度、雨量、湿度、灌漑用水、風)と生物的因子(植物の成長、宿主の種類、食肉動物、競合動物、寄成虫、人の関与などにより決まる。周囲の温度が上昇すると媒介動物、たとえばマラリア蚊の地理的分布は増加する。温度由来の変化が媒介動物および 病原微生物のライフサイクルに影響し、世界各地で媒介動物由来の疾患が増える。住血吸虫症などを含む吸虫類の感染症の頻度は、天候の変化によって感染率が増加し、かたつむりの繁殖にも影響を与える。コレラ、水・食物由来の感染症の増加は、熱帯および亜熱帯地方で起こるが、それは気候の変化が水の分布、温度、微生物の増殖に影響を与えているからである。熱波の頻度と重症度が増すにつれ、熱由来の死亡および疾病が増える。北米、北アフリカ、中国などでの調査によれば、大都市で毎年数千例の死亡者が出る。気候の変化は降雨のパターンにも影響を及ぼし、干ばつ、洪水、山火事などの頻度や重症度を増し、飲料水の供給にも影響を与えている。温暖で湿潤な地域では、種々の花粉や胞子が空気中で増えるため、枯草熱および喘息などのアレルギー性疾患を起こす。気候が土壌、光合成、ペスト、植物の病気などに変化を起こし、農業生産に影響を与えている。緯度の低い低所得の途上国に対して、気候の変化は負の影響を与え、栄養不良、飢餓、健康障害などを起こす。気候の変化ではないが、オゾンの欠乏により、地球上にふりそそぐ紫外線の量が増加し、皮膚癌の発生率も増加している。さらに紫外線は白内障などの眼科疾患を起こし、免疫系を抑制する。紫外線の増加は、植物の光合成を弱め、植物のプランクトンの発育も阻害する。その他、間接的には海水の水面が上昇することにより、社会的・地理的障害および新鮮な水、食物、天然資源が欠乏することになる。


世界人口の5分の2がデング感染の危険に〈Fact Sheet May1996 WHO-65〉

 デングとデング出血熱(DHF)は蚊が媒介する感染症で国際的な公衆衛生上の大きな問題点となっている。デングは世界中の熱帯地域に分布し、都市およびその周辺地域に見られる。重症合併症をきたすDHFは1950年代に見つかり、多くの国で小児の死因となっている。デングの原因となるウイルスは4種類あり、1つのウイルスに感染して抗体ができても、他の3種類のウイルスに対しては無力で再感染を防ぐことはできない。さらに2度デングウイルスに感染すると重症度が増しDHFになる危険性が高くなる。デングの地球上での流行は、近年劇的に増えている。
 デングは現在、アフリカ、中南米、東南アジア、地中海東部、中近東、西太平洋地域など世界100か国以上に流行している。1975年から1993年の間にデングとDHFが発生した国(地域)はアフリカ17か国、中南米43か国、東南アジア7か国、地中海東部1か国、中近東4 か国、西太平洋地域28か国などである。
 1970年以前はDHFの流行国はわずか9か国であったが、1995年には4倍以上に増えて、41 か国以上に広がっている。世界人口の5分の2、すなわち25億人がデング感染の危険にさらされている。WHOの予測では毎年5千万症例のデング感染症が発生している。デングによる死亡総数は毎年2万人にものぼる。1995年だけでも中南米で27万5千例が発症し、そのうち7715例(そのうちベネズエラで5380例)がDHFになっている。デングの羅患率は感染の可能性のある10万人につき6400人と高い。毎年DHF患者、約50万が入院しその大部分は子供で、約5%が死亡している。
 適切な治療を行わないと、DHFの致命率は15%以上になるが、適正な治療を行えば、死亡率は1〜3%に減少する。デングとDHFは4種類のデングウイルスおよびAedes Aegypti という熱帯シマカが分布する地域にみられる。都市人口の急速な増加により媒介蚊と接触する人が増え、また多くの都市での不衛生な設備、清潔な飲料水の確保の欠如、水の垂れ流しなどにより蚊が繁殖する。重症DHFに感染した場合は高熱、出血、時に肝腫大、循環不全などの合併症が起こり死亡する。DHFは顔面の紅潮を伴う突然の発熱で始まり、発熱は通常40〜41℃で2〜7日間持続し、熱性痙攣および出血が見られる。重症例では数日の発熱後、突然熱が下がり、循環不全でショック状態になり12〜24時間以内に死亡するか、適切な輸液療法が効を奏すれば回復する。デング患者には安静と鎮痛剤の投与、発熱時には体の冷却が必要である。デングDHFに対する特別な治療法はないが、経験のある医師や看護婦の適切な治療を受ければDHF患者を救うことはできる。現在、4種類のデングウイルスに対するワクチンの開発が行われており、数年以内に発売される予定である。デングとDHFを撲滅するための最も有効な方法は、媒介する蚊を撲滅することである。アジアや中南米では媒介蚊が、瓶、缶、使用済みのタイヤなど人間が廃棄した物質に溜まった水の中で卵を生み発育する。アフリカでは廃棄物質の他に、自然にできた木の穴に溜まった水や葉液にも発育する。デング、DHFを撲滅するためには媒介蚊が住めないような環境を作るキャンペーンを行い、殺虫剤を散布することが必要である。


子宮頚癌:スクリーニング実施で死亡率を7割減少〈Press July 1996 WHO-64〉

 ヒトパピローマウイルス(HPV)16型と18型は発癌性があり、HPV31型と33型は発癌性の可能性が大であり、さらにHPVの他の型は発癌性の疑いがあるとWHOの会議で報告された。子宮頚癌は発展途上国の婦人の癌で最も多く、世界的に見ても婦人の癌で二番目に多い。地球上では毎年50万人の患者が発生し、30万人が死亡している。死亡者の3/4は貧乏国の人である。子宮頚癌は性活動を早期に開始した人と多数の性パートナーを持った人がかかりやすい。先進国および途上国でも、90%以上の子宮頚癌は性行為によるHPV感染が原因である。子宮頚癌が早期の無症状期に発見できると、手術や放射線療法で治癒できる。細胞診でスクリーニングを行うと前癌状態の病変が発見できる。少なくとも3〜5年に一度、子宮頚部の細胞診を行う大量スクリーニングプログラムは、子宮頚癌の死亡率を減少させるのに有効である。たとえばカナダのブリティッシュコロンビア州およびフィンランドでは、組織的なスクリーニングを実施することにより死亡率を70%以上減少させた。スクリーニングプログラムが実施されていない国では子宮頚癌の発生率と死亡率が高い。細胞診検査を受診していても、子宮頚癌になる頻度が高いのは、検査を受診する間隔が長い(5年以上)ことと、偽陰性率(10〜30%)が高いためである。このようなことが起こる原因としては、採取された検体が不良であることと、検査成績の解釈が誤っていることなどがあげられる。今回の会議では細胞診検査の精度管理を各国で十分実行するように提言された。 途上国で行っているスクリーニングプログラムは、基金となるお金の欠如と教育を受けた資格のある人的資源が欠如しているためである。最近、子宮頚癌の早期発見に関して、自動機器と薄層技術を用いた細胞検査法により、今までスクリーニングプログラムで効果がなく、組織的に実施されていない国では特に期待できる。
 HPV DNA検査という新しい検査法を用いると、細胞診による子宮頚癌の発見を高めることができる。コルポスコピーは細胞診検査で異常のある女性の子宮頚部病変の性状と広がりを観察するため用いている。コルポスコピーは日常のスクリーニング検査として経済的ではない。HPVに対する予防や治療に用いるワクチンが開発されつつあり、子宮頚癌撲滅の長期的戦略に効果的である。科学者の間では効果的なワクチンを開発することにより、家畜、イヌ、ウサギなどにみられるパピローマウイルス性腫瘍の予防や治療を行うことが可能になる。


食物由来の疾患〈Fact sheet July 1996 WHO-63〉

 食物由来の疾患が最近流行するようになった。Salmonella Enteritidis(SE)は、西半球およびヨーロッパで多い。この菌の感染経路は、家禽類の肉や卵からである。1994年には、米国全土にサルモネラ症が流行した。これはSE菌で汚染した撹拌生卵の運搬に使用したと同じ貨物車を使ってアイスクリームを運搬したために感染が広がり、22万4千人の患者が出た。
 コレラの感染はアジアとアフリカで報告されていたが、1991年には今まで報告のなかった西半球で発見され、以後引き続いて感染の報告がみられる。南米では冷凍および生の海産物がコレラの感染経路になっている。
 病原大腸菌O157:H7は1982年に報告され、出血性下痢と急性腎不全を主症状とし、小児では時に死亡する。この菌は一般に牛肉から感染し、オーストラリア、カナダ、日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国、アフリカ南部で報告されている。1993年には米国の北西部で500人が感染し、病原大腸菌O157:H7のベロ毒素により、多数の小児が溶血性尿毒症症候群による重症腎障害をおこし、そのうち4名が死亡した。アフリカ南部でもこの菌による流行が起こり、何千人という多数の患者が報告されている。この時は、飲料水と調理した玉ネギが感染源であった。リステリア感染症も食物由来の感染症で、最近よく見られるようになった。妊婦が感染すると流産や死産を起こし、敗血症や髄膜炎にもなる。リステリア感染症の流行が1992年と1993年にフランスで起こり、この原因はブタの舌とブタの瓶詰めからであった。食物由来の吸虫症は急性肝疾患の原因となり、最終的には肝臓癌となるので、東南アジアでは公衆衛生学上の重要な問題となっている。
 なぜ食物由来の疾患が増えてきたのであろうか。ひとつは国際的に貿易や旅行による交流が頻繁になったのと、食物生産システムの大型化により全世界に食物が供給されるようになったためである。1994年にShigella sonnei感染症が英国、ノルウエー、スェーデンで大流行したが、この原因は、南ヨーロッパから輸入したレタスが感染源となって広がっていった。
 1991年には米国南部で、貨物船のバラスト用の汚染した水からビブリオ菌が見つかった。旅行者、難民、移民は外国へ行き、慣れない食物由来の危険な物質を摂取する。スェーデンにおけるサルモネラ症の90%は輸入されたものである。さらに微生物自身が変貌を遂げて、新しい毒素を出し、耐性菌となるので治療も難しい。高齢、栄養不良、HIV感染、基礎疾患などによって感染しやすい人が増えている。高齢者では食物由来の感染症が起こると微生物が血流中に入り、敗血症を起こし死に至ることもある。癌やエイズなどの重症患者ではサルモネラ、キャンピロバクター、リステリア、トキソプラズマ、クリプトスポリジュウムなどによる食物由来の感染がみられる。ライフスタイルが変化し、多くの人がレストラン、売店、ファーストフード店、街頭の物売りなどを経由して感染する。食物の取り扱いが不衛生になると食物由来の病原菌の発育や汚染の機会が増える。食物由来の病気を撲滅するためには政府、食品会社、消費者の三者の協力が重要である。


全世界で年間に760万人の周産期死亡〈Press Release June 1996 WHO-62〉

 760万人の周産期死亡が毎年世界中で発生し、約430万人が出産前後に死亡し、残りの330万人が出産一週間前後に死亡している。ほとんどの周産期死亡(98%)は途上国で発生し、そこでは出産1,000人につき、57人の赤ちゃんが出産時あるいは生まれて一週間以内に死亡する。これは出産1,000人につき、11人しか周産期死亡が見られない先進国に比べ5倍高率である。アフリカの西部、中央、東部では周産期死亡の比率が最も高く、出産1,000人につき約80人死亡、次いで南中央アジアが出産1,000人につき66人死亡と続いている。周産期死亡が高い所では妊婦の死亡率も高く、出産時に立ち合う専門家がいないことも問題となっている。現状では1年以内に死亡する10人の赤ちゃんのうち、4人は生後一週間以内に死亡している。今後、簡単で経済的効率の良い方法を考えて、周産期死亡を減少させることが必要である。周産期死亡は、妊婦の健康状態や栄養状態と密接に関連し、妊婦と新生児に対する不適当な介護に起因している。周産期死亡は、妊婦と新生児がより良い介護を受けることにより減少させることができる。


ヨード欠乏性疾患〈Fact Sheet May 1996 WHO-61〉

 ヨードの欠乏は、脳損傷及び知能障害を起こす最も大きな原因である。1990年のWHOの推定では15.7億人、あるいは世界人口の約30%がヨード欠乏性疾患の危険にさらされている。1995年には甲状腺腫を持つ患者の数は7億5千万人と推定されている。妊娠時及び幼児にヨードの欠乏があると、子供の知能障害が起こる。ヨード欠乏性疾患による脳損傷で4300万人にクレチン病、けいれん性両麻痺、軽度の知能障害、教育障害などが見られる。2000年までの目標は、ヨード含有食塩が、少なくとも90%以上に普及することが必要である。特に西、中央アフリカでは、この2000年の目標を達成するための援助が必要である。100万人以上の人口を抱える106の途上国ではヨード欠乏性疾患が流行し、公衆衛生上の問題となっている。もしヨード含有食塩の摂取プログラムが中止されれば、保健上の大きな問題となる。1995年度末で情報が入った83か国のうち、わずか19か国で90%以上がヨード含有食塩を使用している。さらに15か国は、ヨード含有食塩の普及率が75%であった。1996年2月時点では、途上国83の人口の57%、即ち約25億人についてはヨード含有食塩の摂取は十分であった。1990年以来、3000万米ドルがヨード含有食塩に投資された。


21世紀の都市で新たに出現する疾患と再出現する疾患〈Fact Sheet June 1996 WHO-60〉

 1996年における世界の都市人口は26億人で、そのうち3分の2は南部に住んでいる。過去50年間に都市人口は4倍以上増加し、世界の全人口の約45%を占めている。人口の過密化により、感染症が増加している。不衛生な飲料水、劣悪な公衆衛生、不完全なゴミ収集、病原体、病気を媒介する昆虫や動物などが問題になっている。20年前には多くの保健学者が感染症はすぐに撲滅できると考えていた。しかし今日でも感染症で年間1700万人が死亡している。これらの問題点の一つは1973年以来、以前には全く見られなかった新しい感染症が少なくとも30種類以上出現した事である。もう一つの問題点は、既に撲滅された感染症が再出現したことである。例えば感染性コレラはここ30年間見つからなかったが、1991年1月に米国で再発見され、1991年から1995年12月までにさらに130万例が報告され、そのうち1万1千人が死亡している。半世紀にわたり、黄熱病は地域的な疾患と考えられていたが、多くの都市、特に南北アメリカではA aegypti蚊による感染が報告されさている。その他、マラリアで100万人以上(大部分は子供)が死亡し、感染者は毎年2億5千〜4億5千万人にも上る。マラリアは農村の病気として長い間考えられていたが、現在は都市の重篤な健康問題として取り上げられ、また都市周辺の地域には媒介する蚊が住み着いている。
 デングおよびデング出血熱ではAedes蚊が繁殖し、感染者数は著増している。毎年1千万以上の人が感染しているが、きちんと診断と治療が行われていないため、50万人もの人が入院し、2万人以上が死亡している。過去20〜30年にわたり、旅行や貿易が急速に増大したために病原体や媒介動物などが新しい地域に広がった。結核では毎年300万人が死亡し、世界の最貧国における成人の最大の死亡原因になっている。都市では過剰人口と換気不全の相乗効果により、1人の結核患者が出ると毎年10〜15人の家族や他人に感染させる。結核はこの10年間に著増したが、その原因はAIDSウイルスの流行に関連している。毎年500万人以上の人が不衛生な飲料水、不完全なゴミ処理、不衛生な生活環境が原因で死亡している。下痢性疾患は多くの都市に見られる小児の重要な死亡原因となっている。都市周辺にいる15億人は大気汚染にさらされ、これが原因で40万人が毎年死亡している。アフリカ、アジア、南米では最悪の住環境により感染症や寄生虫疾患で死亡する小児の数が欧米諸国に比べ数百倍も多い。都市周辺の子供は下痢性疾患や肝炎に感染し、死亡することが多い。その他、街頭でたむろする子供、小児虐待、小児売春、小児の性行為感染症なども増加している。


電波と磁場の健康に及ぼす影響についてWHOが新しい国際的プロジェクトを発表〈Press June 1996 WHO-59〉

 WHOは電波と磁場が健康および環境に及ぼす影響(EMF:Electric and Magnetic Field)について国際的な新プロジェクトを発表した。多くの国では公共の電気設備や施設を人口の密集地区から回避せざる得なくなり、さらに高圧線の建設を中止しなければならない事態もでている。無線電話システムの基地を設置することも、反対されたり阻止されたりしている。アメリカでは必要とされる無線電話基地総数の85%がまだ実現されていない。EMFの影響を最小限度にするための工事は費用がかかり、その生物学的な影響を研究する方法も良好に機能していない。アメリカではEMFと健康に係わる費用は、年間10億ドルと推定される。今回の国際的EMFプロジェクトは5年間継続される。周波数レンジが0〜300GHZにおける静止および変動電波と磁場にさらされた場合の健康に対するリスクを検討し、科学的な警告を発するために知識を収集することになった。このレンジは静止0HZ、超低周波数0〜300HZ、ラジオの周波数300HZ〜300DHZである。このプロジェクトは最終的に4冊のシリーズ本にまとめられる。そのうち3冊は電波と磁場の健康に対する影響、最後の1冊はリスクの認識、伝達、管理、公衆衛生および職業上の健康政策についてである。このWHOのプロジェクトの責任者はDr Kreisel で日本を含む23か国からの代表が1996年5月30日〜31日にWHO本部に集まり、EMFプロジェクトに対する第1回目の準備委員会を開催した。


住血吸虫症〈Fact Sheet May 1996 WHO-58〉

 住血吸虫症は、熱帯や亜熱帯地方において社会経済的および公衆衛生上の問題として、ヒト寄生虫症の中でマラリアに次いで重要である。この病気は74の途上国で流行し、農村および都市周辺で2億人以上が感染している。そのうち2千万人は重症で、1億2千万人は軽症である。住血吸虫症感染者の大多数は、14才以下の子供である。全世界では5〜6億人がこの病気に罹患していると推定される。ヒト住血吸虫症は5種類ある。S.mansoniが原因の腸住血吸虫症はアフリカ、東地中海、カリブ海、南アメリカなどの53か国で見られる。S.japonicumによるアジア腸住血吸虫症は、東南アジアおよび西太平洋地域の7か国で流行している。S.intercalatumによる腸住血吸虫症が中央アフリカの10か国で報告されている。S.haematobiumによる尿住血吸虫症は、アフリカおよび東地中海の54か国で流行している。
 住血吸虫症は汚染された水を介して体内に侵入し、農業や漁業に従事している人に感染する。ブラジル北東部やナイジェリアの都市周辺では、農村と都会間の人口移動により流行し、ソマリアやカンボジアでは難民の移動によって広がっている。旅行者が住血吸虫症に感染し、時には両下肢の麻痺などの重篤な症状を示す。尿住血吸虫症が流行している地域では、膀胱癌が高率に発生している。
 尿住血吸虫症の診断に関しては、プラスチックのフィルタを用いた注射器でろ過する方法が用いられ、これで5人1組のチームで90分間に200検体をスクリーニングできる。糞便中の住血吸虫卵は、グリセリンに浸したセロファン法や尿沈渣法により見つけることができる。またS.haeamatobiumに感染した子供は顕微鏡的血尿あるいは肉眼的血尿をきたす。費用は顕微鏡検査では米通貨で1セントかかり、試験紙法では5セントかかる。治療法としてはpraziquantel、oxamniqine、metrifonateの3種類の薬剤が安全で効果的である。撲滅対策としては薬剤投与で、死亡率を下げることが効果的な戦略である。また健康教育や安全な飲料水の確保も重要である。住血吸虫症を撲滅するために各国の疫学、資源、文化を考慮した対策を立てるべきである。住血吸虫症の撲滅の短期目標は2年以内に感染者を75%減少させることで、さらに長期的には研究調査および撲滅戦略を10〜20年間続けることである。


牛海綿状脳症(BSE)〈Fact Sheet March 1996 WHO-57〉

 牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy, 以下BSE)の始まりは、1986年11月に英国で家畜に新型の神経病が見つかったことである。1986年11月から1995年5月までに英国で、約33,500の家畜群から約15万頭のこの新型家畜病が確認された。原因は餌に使われた家畜の死骸から健康な家畜に感染する食物連鎖と考えられた。BSEは伝染性物質である蛋白質の一種プリオンが家畜の脳と脊髄を侵し、顕微鏡検査でスポンジ様の変化を起こすのが特徴である。通常の料理で使う加熱、殺菌や乾燥に使用する高温、凍結に対してこのプリオンは安定である。BSEは発病すると、2〜3週間から数か月間で家畜を死亡させる。英国以外の国では1995年5月時点で、BSEが10か国で報告されている。フランス、ポルトガル、アイルランド、スイスなどでは、英国から輸入した家畜の飼料を自国の家畜に与えたためにこの病気が発生したと考えられている。一方、フォークランド島、オマーン、ドイツ、カナダ、イタリア、デンマークなどは英国から輸入した家畜にBSEが発見されている。英国では1988年7月に家畜の飼料に家畜の死骸を使用することを禁止、1989年には脳と脊髄(扁桃、胸腺、脾臓、腸も同様)をヒトが食べるのを禁止した。英国では、家畜に対して厳重監視をしたためBSEは減少してきている。英国ではBSEの類似疾患は、羊のスクレイピー、ミンク・オグロジカ・ヘラジカの神経疾患、家庭の猫に見られ神経疾患などが見られる。
 クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob Disease, 以下CJD)の10%は遺伝により起こるが、90%は散発的に発生する。顕微鏡検査で、脳にスポンジ様の病変が見られるCJDは、重症で致命的な神経症候を示すヒトの病気で、死人の体や脳を取り扱うことによって感染する。CJDはヒト成長ホルモンの投与、ヒト大脳組織の移植などの治療を受けた人が感染している。他に同様な疾患として家族性に起こるGerstmann-Straussler症候群がある。発生年齢層、死亡するまでの経過などはほぼ同じである。
 ヨーロッパではBSEに由来するCJDの発生頻度、家畜の死骸を飼料にすることの禁止、ヒトが家畜の脳や脊髄を食べることの禁止、屠殺者、食肉処理業者が十分注意することによりBSEの感染は予防できる。
 過去10か月間に英国では10例のCJDの亜型と考えられる患者が見つかった。これらの10例の患者は42歳以下で、そのうち何人かは発病時に行動異常が見られた。この10人について英国のBSEに関する委員会は、1989年に脳や脊髄を食べるのを禁止する前にBSEに感染した患者と結論づけている。


ナイジェリアにおける髄膜炎の流行の現況〈Press March 1996 WHO-56〉

 WHOによれば1996年2月29日現在、ナイジェリアの北部で髄膜炎が流行し、8423例の患者うち1181例が死亡した。Bauchi州では2504例のうち461例が死亡し、Katsna州では2000例のうち50例が死亡し、Katsima州では1590例のうち297例が死亡した。各州における死亡率は2.5〜30%であった。WHO、ユニセフ、MSFの専門家がナイジェリア厚生省と合同で髄膜炎の撲滅対策に加わった。細菌学的検索を5例について行ったところ3例がNeisseria memingitisのA型で、1例がB型であった。
 今回の髄膜炎の流行はBauchi州で1月の初めに発生し、前年の数を上回る患者が1、2月に発生した。700万個のワクチンが流行地に投与された。しかし更に1000万個のワクチンが15才以下小児に投与する必要がある。死亡率が州により異なるのは防御対策が十分に行われているかどうかによる。また、髄膜炎の治療薬が不足し、特に髄膜炎の特効薬であるクロラムフェニコ−ルが不足しているためでもある。ナイジェリア政府はWHOに対し油性クロラムフェニコ−ル5万バイヤルと同数の注射器を要望している。


リンパ性フィラリア〈Fact Sheet February 1996 WHO-55〉

 アジア、アフリカ、西太平洋諸島の大部分と中南米の特定地域においてはリンパ性フィラリアが主要な死因となっている。蚊が媒介するこの病気は世界で2番目に多い長期的で持続的な障害を起こす疾病である。流行の原因は無計画な都市化によると考えられている。
 リンパ性フィラリアは世界で6種類の撲滅または撲滅の可能性がある感染症として国際的撲滅対策班が設けられている。
 3種類のフィラリア原虫がリンパ性フィラリアの原因である。即ちWuchereria bancrofti、Brugia malayi、Brugia timoryの3種類の原虫が蚊の媒介よって人間に感染を引き起こす。
 マクロフィラリア(成虫)はリンパ管に入り3〜15か月で成熟する。受精すると雌の成虫は大量のミクロフィラリアを産み血中に入っていく。この血液を蚊が吸入し人間に媒介する。ミクロフィラリアの大部分は6か月〜2年間に亘り未熟な形で体内にとどまる。1ミリの1/3位に成長すると移動、分泌、死亡などが起こり、宿主に異物として免疫学的損傷を与える。マクロフィラリアは数センチメートルに成長しリンパ管を損傷する。このミクロフィラリアとマクロフィラリアの両方が原因となってリンパ性フィラリアの兆候や症状が出現する。象皮病はひとつあるいは複数の上肢あるいは下肢を大きく腫張させ疼痛を起こす。陰嚢水腫は男性の陰嚢を巨大化する。フィラリア原虫よる感染症では発熱、リンパ系の炎症及び気管支喘息などが起こる。
 世界中73か国で流行しており、少なく見積もっても1億2千万人がフィラリア原虫に感染していると推定される。もっとも広範囲に見られる原虫はW. bancroftiでアフリカ、インド、東南アジア、南太平洋諸島、中南米などの熱帯地域に住む1億6百万人が感染している。この内、インドは桁外れに患者数が多い。Brugia malayiとBrugia timori原虫は東南アジアにのみ見られ1250万人が感染している。
 フィラリアの感染を撲滅するために、"患者の治療"と"媒介している蚊の撲滅"の2大戦略が必要である。治療法としては、ivermectinとdiethylcalbamazine(DEC)を投与する方法により、1年後にはミクロフィラリアを99%減少させることができる。年に1回あるいは半年に1回DECを12日間投与する方法では1年後にミクロフィラリアを90%減少させることができる。その他、安価で効果的なDEC強化塩を9〜12か月間毎日投与する方法ではミクロフィラリアおよびリンパ性フィラリアが一年後に99%駆除できる。
 次に媒介する蚊の撲滅の問題であるが、蚊の数を効果的に減少させることが重要である。また蚊帳やカーテンで蚊に刺されないようにしたり、室内の殺虫剤噴霧などが必要となる。


らい〈Fact Sheet January 1996 WHO-54〉

 らい患者は何世紀にも亘って隔離され、患者だけのコミュニティーを作ってきた。しかし今日ではらいは感染力が弱く、患者に接触しても簡単には感染しないことがわかり治癒も可能である。らいはMycobacterium lepraeという細菌が原因で非常にゆっくりと発育し皮膚、神経、粘膜を主に侵襲する。治療しないでいると皮膚、四肢、目を障害する。しかし症状が出現するまでに、何十年もかかる。
 今世紀の初めにはらいは治癒できない病気と考えられていた。1940年代になってタプソンとい特効薬が開発され治癒するようになったが、患者は定期的に薬を長年飲み続けなければならなかった。次にM.lepraeがタプソンに耐性を示す点で問題が生じた。
 1981年にWHOの調査班がタプソン、リファンピシン、クロファジミンの3剤投与を推奨してから耐性が起こらなくなった。多剤投与は極めて効果的かつ経済的で全ての患者に有効であった。軽症例では6か月間、重症例で24か月間治療すると完全に治癒する。多剤投与によって2000年までにらいが公衆衛生上の問題とならなくなる見通しである。地球規模で見ると1991年に550万人の患者がいたが、1995年には180万人と67%減少した。しかし今日でもらいは71か国で流行している。このうちわずか19か国が最流行国で全症例の90%を占めている。それはバングラデシュ、ブラジル、カンボジア、チャド、エチオピア、ギニア、インド、インドネシア、マダガスカル、マリ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ニジェール、ナイジェリア、フィリピン、スーダン、ブラジル、ザイールの19か国である。WHOによれば2000年までに約300万例の患者を発見し治癒する予定である。
 1994年7月にベトナムのハノイでらい撲滅の国際会議が開催され、その時にハノイ宣言が出された。WHOは国際らい撲滅連合のメンバーと協力しているが、その中で有力な活動をしているのは日本財団と世界銀行である。日本財団の援助によりWHOは25か国に年間80万人を治療する薬剤を供給している。21世紀の初頭にらいは天然痘と同様に地球上から姿を消すであろう。


WHO理事会が天然痘ウイルスの廃棄を決定〈Press January 1996 WHO-53〉

 ジュネーブで行われた97回WHO理事会は、ロシア連邦とアメリカ合衆国が保存している天然痘ウイルスの癈棄を決定をした。1994年に行われたOrthopoxvirus感染症のWHO臨時会議で天然痘ワクチン50万単位の保存と天然痘ワクチンの元になるウイルス(Lister Elstreeワクチンウイルス株)を保存するよう勧告した。1980年5月8日に行われた33回世界保健会議で天然痘の地球上からの撲滅が宣言された。その際に、痘疹ウイルス株の保存も少量に制限を受けた。天然痘に抵抗力のない人が多くなるにつれ、研究所からこのウイルスが外に出て人に感染する危険性も考えられる。天然痘ウイルスの最後の症例は1977年10月にソマリアで発見されたものである。30年前には31か国で天然痘ウイルスが流行していた。その当時は毎年1000万〜1500万人が天然痘ウイルスに感染しこのうち200万人が死亡し、何百万人にも上る生存者には種々の障害が残り、盲目になる人もいた。天然痘ウイルスは歴史上、初めて撲滅された疾患である。天然痘ウイルスの撲滅に要した費用は10年間に3億1300万米ドルであった。


小児マヒのない世界に向けて〈Press January 1996 WHO-52〉

 1995年、世界51か国で5才までの小児の約半数にワクチンが投与された。WHOの推定では2000年までにこの病気を地球上から撲滅するのに5億米ドル必要である。ポリオワクチンの接種によりアメリカ大陸では既に小児マヒは撲滅された。小児マヒは感染性ウイルス病で、中枢神経を攻撃し筋肉を麻痺させ、死亡させることもある。小児マヒ撲滅のためにWHO、ユニセフ、ロータリークラブ、CDC、および日本を含む各国からの民間組織や政府組織が協力している。
 1988年以来、WHOが撲滅運動に協力して以来、小児マヒの症例は世界中で80%減少した。しかしアジアとアフリカの67か国で毎年新しい小児マヒの患者が10万人発生する。1995年には中国で4才以下の子供8,300万人にワクチンが投与された。インドでは8,200万人、バングラデシュでは1,800万人、インドネシアでは1,900万人、タイでは600万人の子供にワクチンが投与された。バングラデシュ、インド、パキスタンの3国で全世界の小児マヒの3分の2を占めている。中東、コーカサス、中央アジアの18か国では5,600万人、イラン50万人、ロシアでも700万人にワクチンが接種された。フィリピンでも1,000万人の子供にワクチンが投与された。1995年には小児マヒがザイールで400例、ロシアで140例見られた。1996年にはアフリカ諸国25か国で8,000万人の子供にワクチンを接種する予定になっている。

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