アフリカにおける黄熱〈Fact Sheet December 1995 WHO-51〉
黄熱はアフリカの流行地域において、主な急性感染症である。黄熱の重篤な流行は、1960〜1962年にエチオピアと1969〜1970年に西アフリカでみられ、何千人もの患者が死亡した。また北アメリカのパナマでも流行がみられた。黄熱の死亡率は、ワクチンを受けていない成人では50%以上にもなる。
黄熱の実数は統計よりもはるかに多い。その理由は黄熱が発生する場所が辺地で、医療機関や医師も少ないため黄熱とウイルス性肝炎やマラリアなどと混同することが多い。黄熱の発生は、西アフリカのリベリア、ガーナ、ナイジェリアおよび近隣国で、毎年数百から数千例が報告されている。男女比は2対1で、男性が多い。
蚊が媒介する黄熱のウイルスは、flaviviridae科に属するRNAウイルスである。ジャングルで黄熱に罹った人間が都市に移動し、そこでAedes aegyptiという蚊が感染を広める。これは都市型黄熱と呼ばれ、大きな被害を与えている。黄熱では発熱、悪寒、頭痛、腰痛、全身筋肉痛、悪心、嘔吐などが起こる。初期には白血球数の減少が見られ、後に出血が合併する。病気が進行すると、脈拍が弱くなり脈拍数も減少し、蛋白尿が出現する。黄熱の潜伏期は感染後3〜6日である。黄熱が発病してから3〜4日目に寛解し、発熱や頭痛がおさまり全身状態がよくなる場合もある。しかし寛解が殆どみられない場合には中毒症状が現われ、黄疸、嘔吐、出血などで7〜10日で死亡する。黄熱に対する特効薬はない。
感染防御対策としては3つあるが、第1はワクチンの接種、第2に黄熱ウイルスを媒介するA aegyptiという蚊の撲滅、第3に感染患者を隔離し、ウイルスが他の人に感染しないようにすることが重要である。黄熱のワクチン接種は流行地域からの旅行者、流行地域に入国する旅行者には必須である。ワクチンをしなかった観光客がアフリカの感染地区を旅行して、黄熱で死亡するケースもみられる。黄熱のワクチンは極めて安全で効果的である。ワクチン接種後、7〜10日で抗体が出現しその抗体は一生持続する。
学童を規則的に駆虫することで失血の劇的減少〈Press December 1995 WHO-50〉
学童を駆虫することにより腸内寄生虫による失血を劇的に減少させる低コストの治療法が見つかった。500mgのメベンダゾールを年3回投与するだけで学童の栄養状態を著名に改善することが出来た。米国のジョンスホプキンス大学、WHO、タンザニア共和国厚生省が共同で実施した結果がジュネーブで発表された。今回の成果はメベンダゾールの治療により、一人当り15セントで小児一人当り250mlの失血を防ぐことができた。途上国の多くは健康対策費が一人当り年間1米ドル以下である。今回の結果は規則的に駆虫を行うことで安い費用で効果的に駆虫できた。寄生虫の感染症は途上国において最も大きな問題になっている。WHOの推定では世界中で14億人が3種類の蠕虫(回虫、鞭虫、鉤虫)の一つに感染している。このうち2億人が感染症を合併している。鉤虫は腸壁に吸い付いて出血をおこすので鉄乏性貧血となる。タンザニア共和国のザンジンバル地区では寄生虫感染症が学童の間で蔓延し体操や学校での活動、成長、栄養、学力に明らかな影響を与えている。学童の62%が思春期の遅延を示し、50%以上が鉄欠乏性貧血にかかっている。ザンジンバル地域で治療を受けた学童は栄養状態が著名に改善され鉄欠乏性貧血は約20%減少し、重症貧血の頻度は40%減少した。
エボラウイルスの自然宿主を発見するためにWHOがコートジボワール共和国で共同研究開始〈Press December 1995 WHO-49〉
西アフリカにあるコートジボワール共和国のTai森林においてエボラウイルスの自然宿主を発見するために2年間の新プロジェクトチームの会議が12月にWHO本部で開催された。エボラウイルスは最も毒性の強いウイルスで感染者の80%以上を死亡させる。エボラウイルスの自然宿主を発見することが感染経路解明の手掛かりとなり、自然宿主がわかればエボラウイルスの流行を予測したり予防することも可能になる。1995年にザイール共和国でエボラウイルスが流行した時に自然宿主の探索が行われたが、成果は得られなかった。
コートジボワール共和国のTai森林にはエボラウイルスが住みついているのでウイルスの自然宿主を発見するのに適した場所である。1994年末にTai森林においてチンパンジーを観察していたスイスの霊長類研究者が感染し死亡した。この研究者および死亡したチンパンジーの解剖を行ったところ同じエボラウイルスの亜型が分離された。調査の焦点はエボラウイルスと霊長類、脊椎動物、類人猿、人間がTai森林においてどのような関係になっているかを解明することが重要である。
家庭用食品の発酵〈Feature December 1995 WHO-48〉
食品を保存させるための発酵と言う最も古い技術について、WHO、FAO、南アフリカ連邦共和国厚生省が共同で会議を開催した。
発酵は、数千年前から家庭でも大規模な食品工場でも用いられている。何世紀にも亘って、試行錯誤が繰り返されて進歩してきた。発酵は、今日では科学的な方法で確立された食品としてパン、チーズ,ヨーグルト、ワインなど世界中で販売されている。これは極めて精密な技術力を必要とし、各種の因子により容易に影響を受ける。発酵がうまくゆかず、最終産物の品質が損なわれると、消費者にとって危険なことになる。事実、この食品により死亡することになる。全ての下痢を起こす疾患の70%は、食物由来の病原物質あるいは不衛生な飲料水によって起こると考えられている。1993年には5歳以下の小児に14億回の下痢が主として発展途上国で起こり、そのうち320万人の小児が死亡した。
特に発展途上国では、食品由来の病気に対する撲滅対策プログラムを作成し実行することが有効である。食品由来の病気の流行は、不的確な発酵技術によってつくられた食品である。今回の会議に参加した国では、発酵で作られた食品の種々の危険因子を考慮し、家庭で用いられている発酵技術について危険性を指摘した。
アフリカにおけるエボラ出血熱〈Press December 1995 WHO-47〉
1995年12月6日にWHOは、エボラ出血熱がコートジボアール共和国で発生したという報告を受けた。24時間以内にパスツール研究所の専門家を含むWHO緊急チームが派遣された。患者は25歳の男性で隣国のリベリアからの難民であった。エボラ出血熱の診断はパリにあるパスツール研究所で血清学的診断により確定された。患者は、リベリア国境から15キロ離れたコートジボアール共和国のGozon村の診療所に入院し隔離された。この患者は、リベリア共和国のPlibo村に3名の男性と2名の女性(1名は妻)と生活していた。 WHOの緊急チームは、3名の男性の内2名がエボラ熱の初期の症状である発熱と著明な倦怠感を認めたので、この2名を家の中で隔離した。3人目の男性は体調が悪かったが、行方がわからず現在追跡中である。2名の女性の内1名はエボラ出血熱の疑いで、コートジボアールの病院に入院していた。患者の妻はWHOチームが訪問した際には不在で、現在追跡中である。2名の男性及び1名の女性患者からの血液検体を、パスツール研究所に送り血清学的な検査を行っている。
昨年、1例コートジボアールでエボラ出血熱が報告された。スイス人の検査技師が、エボラ出血熱で死亡したチンパンジーの解剖を行った後に感染したが、手当のおかげで治癒した。エボラウイルスの媒介するのが動物なのか昆虫なのかは現在でも不明である。
狂犬病〈Fact Sheet December 1995 WHO-46〉
狂犬病は人畜共通ウイルス病であり、唾液を通して動物から動物、動物から人間に感染する。動物でも人間でも1度狂犬病に感染すると、致命傷となり治療法がない。狂犬病には狂躁型狂犬病と麻痺型狂犬病の2種類があり、最終的にはいずれの型も完全麻痺におちいり、昏睡におちいり死亡する。全世界的規模でみると、狂犬病の死亡数は少なくても4万人はおり、アフリカやアジアなどで狂犬病が流行した場合には7万人以上が死亡する。毎年一千万人以上の人々が狂犬病の動物に接触したり、咬まれたりして治療を受けている。
1990年以来ヨーロッパ諸国では、狂犬病の動物数は80%減少したが、これは動物を経口的に免疫したためである。今世紀末までには西ヨーロッパからこの方法で狂犬病を撲滅することが可能と思われる。中国、タイ、スリランカでは犬のワクチン接種と、接触患者の治療法が改善されたために、狂犬病の患者は劇的に減少した。伝染経路については先進国では野生動物から家畜や人間に感染するのに対し、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどの発展途上国では犬から直接感染する。人が狂犬病になるのは感染した犬、猫、野生の狐、アライグマ、スカンク、ジャッカル、狼などに咬まれた場合でもなることがある。 狂犬病の予防法は傷口や接触面を石けんをつけて水でよく洗いその後、エタノール、ヨードチンキなどで消毒する。引っかかれたり、咬まれたりした場合にはWHOの治療指針に従ってできるだけ早く処置を行う。狂犬病のワクチンは今日でも広く用いられ14日間、毎日ワクチンの注射を患者に行う。狂犬病の撲滅対策は、主として犬にワクチン接種を行い予防することである。
現在狂犬病が見られない国は日本、韓国、パプアニューギニア、オーストラリア、ニュージランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、イギリス、アイルランド、アイスランド、ポルトガル、ギリシャ、チリ、ウルガイなどにすぎない。
WHOはアフリカ大陸から糸状虫症を撲滅するため新しいプログラムの作成〈Press December 1995 WHO-45〉
WHOは、西アフリカ11か国から糸状虫症(Onchocerciasis)をほぼ撲滅することができたため更に新しいプログラムを作成し、アフリカ大陸からこの病気を撲滅することにした。この新しい活動は世界銀行がスポンサーになり、1996年1月よりAPOC(アフリカ糸状虫症撲滅対策会議)で活動が始まる。APOCの活動は参加16か国(アンゴラ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、リベリア、マラウイ、ナイジェリア、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザイール)において、糸状虫症に感染している1,500万人以上の人に貢献する。これらの国の住民1億人は糸状虫症に罹る危険性がある。WHOの技術的な協力及び世界銀行、各国政府、民間団体と協力して撲滅対策を立てている。
Merck社は、糸状虫症の撲滅のための薬剤を無料で供給している。
APOCは1974年に始まり、現在は西アフリカ11か国に対し、空中散布により川辺に住んでいる黒色バエの幼虫を殺すことにより、感染サイクルを断ち切る方策をとっている。APOCの目標は16の参加国に特効薬であるIvermectinを配布することである。Merck社が薬剤を無料で提供することから、このプログラムを実施するための主な費用は薬の運搬であるが、この件については民間組織団体にお願いしている。
睡眠病における専門会議〈Feature December 1995 WHO-44〉
アフリカの36か国における約5,500万人の小児は睡眠病としてよく知られているトリパノゾーマ症の危機にさらされいてる。この病気は激痛を訴え、主に田舎で感染し、死に至る。アフリカに住む農夫、牧童、漁民、猟師などがツエツエバエによりトリパノゾーマ症感染する。
トリパノゾーマ症のWHO専門家によると、アフリカの多くの地域は爆発的な流行前の時限爆弾を抱えているような状態であると述べている。ザイールでは1994年には1万9,000例と前年比べ2倍に増えている。WHOの推定では、今日5,500万人の子供が睡眠病の危険にさらされ、少なくとも30万人が既に感染している。ザイールやアンゴラにおける流行地域の村では、村人の半分以上が感染し、放置しておけば大部分が死亡すると言われている。歴史的にみると、1925年にロンドンで第1回の国際睡眠病会議が行われた。最近では1995年11月にジュネーブで第7回国際会議が開かれた。専門家の意見によれば、トリパノゾーマ症の調査および対策は急を要し、地球規模に広がっている。現在、WHOでは世界的な戦略をたて、媒介するツエツエバエの撲滅に積極的に関与している。
フランスはWHOに対し、既に1,000万米ドルを寄付し、流行している国々における撲滅活動をサポートしている。特効薬を作っているRhone Poulenc Rorer社は150万米ドル以上の特効薬を寄付している。WHOは今後も睡眠病撲滅のために巨額の費用をかけて撲滅対策を行うことにしている。
ドラクンクルス症撲滅対策〈Fact Sheet December 1995 WHO-43〉
ドラクンクルス症は近い将来世界中から完全に撲滅できる唯一の寄生虫疾患である。20世紀の初めには広く分布していたが、現在はアフリカサハラ南部、アラビア半島、インドなどにのみ分布している。
ドラクンクルス症は現在18か国に分布しているが、そのうち16か国はアフリカで、そのうち10か国は最貧国である。1994年には約10万例が報告されているが、1986年には350万例、1989年には100万例に比べ激減した。
パキスタンでは1998年に2400例が報告されて以来、撲滅活動が開始され近年撲滅に成功した。インドでは1974年に約4万例の報告があったが、1995年には55例に激減している。
ナイジェリアでも効果的な撲滅対策が開始され、1988年には65万3000例の患者がいたのに対し、1995年には12600例に減った。ガーナでも同様のキャンペーン活動により1989年に18万例いたのが、現在は8500例に減少している。カメルーンでは1995年には2例の患者が報告されているにすぎない。
ドラクンクルス症はDracunculus medinensisという寄生虫によって起こる。この寄生虫が体内に入ると人体内を移動し最終的に外に出てきて疼痛性の浮腫、水泡、潰瘍などを形成する。皮膚に穿孔を起こす場合には発熱、悪心、嘔吐を伴う。この病気は中間宿主の寄生虫がいる汚染飲料水から感染する。流行地域では農繁期に毎年出現し特に農夫に感染することが多い。この病気に特効薬やワクチンは現在ない。WHO撲滅対策の戦略は地域に密着した調査システム、良質な飲料水を提供するシステ、健康に関する教育などを行い、ドラクンクルス症の地域的な発生状況を把握し、撲滅対策を立てることである。WHOやユニセフの努力により1995年末までにこの病気の95%は撲滅された。
世界エイズデー1995〈Press December 1995 WHO-42〉
WHOの中嶋 宏事務局長が1995年世界エイズデーに関して次のような声明を発表した。7年前にWHOが毎年12月1日を世界エイズデーに決めた。それ以来テーマを決めてエイズについての個人、コミニュティ、組織体の中で種々の活動が行われてきた。1995年12月1日の世界エイズデーのテーマは権利の共有、責任の共有である。すなわち権利は守られなければならないし、もしHIV/エイズに直面した時に個人、組織体、コミニュティ、政府がそれぞれ責任を共有しなければならないと言うことである。パリでの1994年世界エイズデーでは42か国が集まり、HIV/エイズに感染している人達に対する権利の擁護をうたった。1995年の世界エイズデーは全世界的な流行を防ぐために努力する日である。1996年には国際連合とWHOのエイズ委員会がリーダーシップをとり、世界的な流行を防止するために各国を援助する予定である。
黄熱病の流行防止のためにリベリアで緊急ワクチンのキャンペーン〈Press November 1995 WHO-41〉
リベリアに発生した黄熱病は少なくとも150名が感染し6名が死亡した。 WHOは危険にさらされている西アフリカ諸国の住民100万人に対し緊急に黄熱病ワクチンの接種を行うことにしている。
リベリアには黄熱病ワクチン接種のために12万人分が用意されている。さらに5万米ドル分のワクチンを追加し発注し、近隣諸国で感染の恐れのある130万人に対しワクチンの接種を行う。
WHOのウイルス専門家はリベリアのBassa地区およびLofa地区を重点的に調査している。またリベリアでは自動車による移動巡回チームを編成し2週間にわたりBuchanan地区におけるワクチンの接種のキャンペーンを実施している。さらに首都モンロビア及び近隣地域でもワクチンの接種を行う。隣国であるギニア、コートジボワール、シエラレオネなどにも流行しないように黄熱病のワクチン接種を用意している。またWHOは黄熱病を媒介する蚊の撲滅に対し長期的対策をたてている。
チェリノブイリ原発事故の健康へ及ぼす影響に関する科学会議〈Press November 1995 WHO-40〉
1986 年4月26日にウクライナのチェリノブイリ原発事故が発生して以来10年近くが経過し、59か国から約600人の科学者、研究者、公衆衛生専門家、政策担当者などがジュネーブに集まり1995年11月20日〜23日に科学会議が開催された。WHOの中嶋宏事務局長は「チェリノブイリに関する国際会議は過去3回開催されているが、今回は健康面の影響について始めて討議する会議であることを強調した。チェリノブイリ事故の健康への影響の重要性と今後の対策を考え、将来に亘って国際的な協調が必要である。放射性物質による諸問題は世界的規模で考える問題であり、国際連合としても今後このような事故の防止・コントロール、防備、リハビリテーションなどを十分に行うことが必要である」と述べた。今回の会議では広島県知事藤田氏を議長に選び開会した。チェルノブイリの原発事故ではベラルーシ、ロシア連邦、ウクライナなどの広大な地域に重篤な汚染が広がり、急性放射性障害に134名が羅患し、原子炉のそばにいた30名の労働者が死亡し、放射性物質の被爆により近隣の500万人が被害を受けた。
今回の会議で3つの大きな問題が取り上げられた。被爆の被害がひどい地域の住民が受けた多大な精神的障害、次いで小児に頻発している甲状腺がんの問題、さらに将来おこるであろう白血病、乳がん、膀胱がん、腎臓がん等である。小児における甲状腺がんはチェルノブイリ事故後に著増しベラルーシでは400例、ウクライナでは220例、ロシア連邦では62例の患者がいる。甲状腺がん増加の原因はヨード131と原因と考えられているが、因果関係は証明されていない。急性放射線障害については新治療法が討議された。
急性症状としては放射線障害として全身および局所に火傷が起こる。通常、悪心、嘔吐、急激な体重減少、血球数の減小などが起り、これらに対し血液細胞増殖因子を治療に用いる。全身に8〜13 Gray以上の放射能を浴びた患者の治療は大変難しい。現時点では白血病や他の血液疾患は増加していないが、今後乳がん、膀胱がん、腎がんが増加すると思われるが、これらも今後の研究対象になる。ロシア連邦にもセントピーターズブルグには約80万人の原発事故の被害者がいる。チェルノブイリ事故のあと、多数の人が放射能被爆の恐怖から外来を訪れ、頭痛、胸痛、腹部障害、不眠症、アルコール中毒などの症状を訴えている。
WHOは経口ポリオワクチンの必要性を再確認〈Press October 1995 WHO-39〉
世界中から小児麻痺を撲滅することは経口ポリオワクチンを用ちいることによってのみ可能であるとCDC(アメリカ疾病対策予防センター)のDr.Leeは述べている。WHO、ユニセフ、CDC 、ロ−タリ−クラブが中心になって小児麻痺撲滅運動を行って活動している。経口ポリオワクチンを投与することにより小児麻痺が他の子供に広がらない。経口ポリオワクチンの1回投与は0.08米ドルにすぎず、注射によるポリオワクチンの1/10以下の費用で済む。WHOは経口ポリオワクチンの単独投与により世界中の小児麻痺を撲滅することを再確認し、注射によるポリオワクチンの必要は認めていない。WHOは1994年における世界の小児麻痺が10万例と予測している。そして西暦2000年までに自然界にあるポリオウイルスを完全に撲滅することを計画していが、小児麻痺が撲滅した暁にはポリオワクチンは不要となる。米国では15年前に小児麻痺が撲滅され、それ以来ワクチンを中止したため毎年2億3千万米ドルの支出がなくなった。
ヒト遺伝学:WHOの専門家が先天性栓友病の解明に努力〈Press November 1995 WHO-38〉
WHOはヒト遺伝学の進歩により血友病、鎌状赤血球症、サラセミア、栓友病などのような遺伝性の血液疾患の研究に力を入れている。国際血栓止血学会(ISTH)とWHOが合同で栓友病の解明にあたっている。先天性あるいは後天性にかかわらず栓友病の患者は血液が凝固しやすくなるために危険な状態にある。例えば静脈血栓は人口1000人に1例の割合でみられ肺血栓や脳卒中など重篤な病気を引き起こし死に至ることもある。
先天的栓友病は先天性の血液疾患の中では数は多く血液中の抗凝固因子の欠乏によって起こる。先天性栓友病の原因の1つとして活性化されたプロテインCに抵抗するような例が人口の2〜3%にみられる。血栓は外科手術、身体を動かせない状態、妊娠、経口避妊薬を飲んでる場合などにみられる。
栓友病は血液製剤で治療されているが、その製剤中に肝炎ウィルスやHIVのような病原性ウィルスが混入することを避けなければならない。WHOとISTHの合同委員会では頻度、疫学調査、分類、分子構造上の欠陥などについて継続的に検討することになった。またこの疾患の早期発見と予防措置および経済効果の高い有効な治療法についても研究することになった。
経口避妊薬と静脈血栓塞栓症の関係〈PRESS October 1995 WHO-37〉
WHOの研究によると経口避妊薬の危険性は以前の報告より低い。最近のWHOの研究では、エストロゲンの量が50μg以下の低濃度のデゾゲステレル(desogestrel)、またはゲストデン(gestodene)を服用している患者はレボノルゲステレル(levonorgestrel)、またはノルエチドロル(norethindrone)を含む低エストロゲン濃度の経口避妊薬に比べて約2倍の静脈血栓塞栓症が起こる。複合経口避妊薬は35年前に市販された。その直後に各種の医学雑誌が経口避妊薬を服用している女性に虚血性卒中や静脈血栓塞栓症が起こる危険性を指摘した。この関連については、1960年代及び1970年代に疫学的調査で確認された。これらの疫学的調査によれば、経口避妊薬服用女性は急性心筋梗塞、出血性卒中を起こし、特に高血圧の女性及び喫煙女性は危険性が増すといわれていた。それ以来、経口避妊薬に含まれていたホルモンの量は大幅に減量された。最近市販されている経口避妊薬は、エストロゲン量が50μg以下の含有量であるが、 1960年代の初期から中期にかけてはエストロゲン量が75〜100μg以上含まれていた。今回の調査はロンドン医科大学と共同で行った結果の報告である。WHOの今回の調査では、低濃度のエストロゲン量を含む経口避妊薬を服用していても急性心筋梗塞や脳卒中になることはない。今回の調査ではレボノルゲステレルまたはノルエチドロルを含む低エストロゲン濃度の経口避妊薬の服用がより安全である。
リベリアにおける黄熱病の発生〈Press November 1995 WHO-36〉
西アフリカに位置するリベリアのBuchanan地方で7月以来黄熱病と思われる患者146例が報告され、そのうち6例が死亡した。 WHOおよびパスツール研究所は救急対応班を派遣して調査している。病院からの報告では7月に黄熱病の流行が始まり、10月には102例、11月には17例が報告された。現在患者から採取された検体からウイルスを検出中であるが、全ての症例で黄疸と発熱がみられ診断は黄熱病とされている。黄熱病には治療法がなく、患者の50%は死亡する。現在までの死者6例は予想よりも低い死亡率である。
リベリアの汚染地域ではAedes africanusとAedes aegyptiという蚊がたくさん生息している。この2種類の蚊は黄熱病のウイルスを運搬し、住民に感染させている。 WHOとリベリア厚生省の調査によると、この国の200万人にのぼる住民が黄熱病の感染危険にさらされており、ワクチンを受けなければならない状態にある。国内における戦争によって部族民が大移動しているので、近隣の諸国にも伝染する恐れがある。WHOは10万人分のワクチンと医薬品をリベリアに送付し、現状を注意深く見守っている。
国際的なタスクフォースがニカラグワ共和国で発生した原因不明の感染症を追及〈Press November 1995 WHO-35〉
WHOはニカラグワで発生した原因不明の疾患について憂慮している。既に15名が死亡し、その対応に24時間体制の救急対応チームで当っている。 CDC(アメリカ疾病対策予防センター)をはじめとする各国の研究機関はニカラグワの厚生省の協力のもとに研究チームを送り調査している。ニカラグワの大統領Violeta Chamorroは医学上の救国宣言をした。この病気は首都マナグアの100キロ北西の地域で最初に発生した。現在、疫学的調査を行っている。患者から採取した標本はCDCに送られ調査している。ニカラグワでは1000人が原因不明の病気に罹患し15名が死亡している。症状は発熱、頭痛、筋肉痛である。一部の患者では血圧も低下し、内臓出血を起こす場合もある。呼吸困難、肺出血が死亡例にみられる。CDCの発表ではデングとは異なる“骨折による熱病”と地元で呼ばれている病気であるが黄熱病とも異なる。デングと黄熱病は蚊が媒介する病気である。現在、患者血清を用いて蚊が媒介するウイルス、他の昆虫により媒介されるダニやウイルスなどについてCDCが調べているが、現在のところ原因は不明である。
新規発生および再出現した感染症〈FACT SHEET November 1995 WHO-34〉
この20年に少なくとも29の新しい感染症が出現し、300万人を苦痛に落とし入れている。エボラ出血熱、レジオネラ病などは公衆衛生上の脅威となる新しい病気である。同時に結核、テング熱、ジフテリアなどのような昔からある病気が再度活性化し、抗生物質の耐性化現象を表わすなど複雑な問題を提起している。感染のスピードは現在の生活の変化によって増大し、大都市は人口が過密で上下水道の完備が不完全なために病気が起こりやすく、また国際間で頻繁に旅行するために、感染者がひとつの国から他の国に簡単に伝染するような時代になった。WHOは、1995年10月からこの問題に積極的に取り組む体制として3つの目標を掲げている。 第1の目標は、WHOの地区事務所からWHOの専門家を24時間以内に感染症の発生地に派遣できる体制を作ることである。第2の目標は、WHOの地区事務所が中心になり、感染症の疫学的調査と公衆衛生学的な研究を行い、新しい病気の発見と細菌の耐性などについて調査することである。第3の目標は、WHOの国際的ネットワークにより各研究所間での研究成果を公表することにより感染症を封じ込め、ワクチンを開発することである。
再出現してきた疾患として問題となる疾患は結核で、1984年〜1986年に比べ、1990〜1993年は約28%増加し、世界で最大の死亡原因となる感染症となった。コレラは1990年に比べ1994年は4倍増えて38万5000例が報告されている。デングは南米で20万名以上発生し、その内5000名が死亡率の高いデング出血熱であった。ジフテリアは1990年に比べ1994年度は54,500例と140%増加していた。腺ペストは1993年と1994年に過去最高の2,000人が感染した。大腸菌O157:H7は、食事から感染する重傷出血下痢症と腎機能障害を起こす。クリプトスポリジウム症は水由来で下痢を起こしアメリカ合衆国で1度に40万人が感染した。
病気の子供に対する綿密な管理〈FACT SHEET November 1995 WHO-33〉
WHOとユニセフは、共同で病気の子供に対する綿密な管理を行うことにした。1993年の世界銀行の発表によると、病気の子供に対する綿密な管理を行うことにより、世界中の病気の重荷を軽減する。この管理を行うことにより、貧しい国や中等度の経済力しか持たない国にとっては、大きな経済効率をもたらす。毎年1,200万人の子供が5歳未満で死亡するが、その多くは1歳未満で死亡する。これらの乳幼児の70%は下痢、肺炎,麻疹、マラリア、栄養不良などの5大疾患のひとつで死亡する。病気にかかった乳幼児の症状や症候はオーバーラップし、1人の子供が2〜3の疾患にかかっている場合もあり、診断も難しい。綿密な管理を行うためには外来患者の正確な診断と迅速な治療が必要である。これらの治療の他に、ワクチン接種や、ビタミンAの投与、新生児の食事の改善なども同時に行う必要がある。病気の子供の綿密な管理を外来保健センターで行うようにすれば、経費のかかる抗生物質の点滴注射などを減少させ、経済効率を高めることができる。WHOとユニセフは、保健センターで働いている人達に対し、子供の病気の管理について徹底的な教育を行っている。この他、貧血や髄膜炎の発見と管理、栄養不良と栄養補給の改善、乳幼児における重症疾患の管理、ハイリスク乳幼児の発見、一次保健センターでの適切な病気の管理、病気の子供に対する家族の協力などの研究を今後推進する方針である。
糸状虫症〈FACT SHEET November 1995 WHO-32〉
糸状虫症は、失明の2番目の原因として重要な感染症であり、アフリカ、アラビア半島、中南米などの34か国にみられる。1億2,000万人が糸状虫症の危険にさらされ、そのうち96%はアフリカ人である。糸状虫症が流行している34か国のうち、28か国はアフリカのサハラ砂漠以南の国で、6か国は中南米である。1,800万人が糸状虫症でミクロフィラリアが感染しているが、その99%はアフリカ人である。このうち600万人は重篤な痒みと皮膚炎を起こし、27万人は失明している。糸状虫症はOnchocerca volvulus という原虫によって発病し、人体内に14年間も住み着くこともある。成長したメスの原虫は、多数のミクロフィラリアを産卵し、これが体内を移動し重篤な視力障害や失明、発疹、痒み、皮膚の脱色、リンパ腺炎を起こし、性器が肥大し、象皮病となることもある。ミクロフィラリアは、ハエ(blackfly) によりヒトに伝染する。糸状虫症の撲滅対策は1974年に西アフリカで始まり、1986年には周辺の11か国にまで対象が広げられた。撲滅対象地域は123万平方キロに及び3,000万人の人口を抱えている。撲滅対策は、感染経路の遮断であり、そのためにハエの除去が重要である。生息している川辺に殺虫剤を散布し、ハエと幼虫を殺す。現状では7か国でほぼ撲滅され、残り4か国が2200年までに駆除される。媒介する寄生虫を退治するとともに、この地域の居住者220万人に薬が無料で投与されている。西アフリカでは、100万人以上が糸状虫症に羅患し、そのうち10万人が重篤な症状を訴え、そのうち3万5,000人が盲目になっている。糸状虫症の撲滅対策は2002年に終了するが、それまでに5億5,000万米ドルが使用される。この他、汚染地区にイベルメクチン(Ivermectin)を年に1回単独投与することも重要である。メルク社は無料でこの薬剤を提供している。糸状虫症の撲滅対策に不参加のアフリカ16か国についても、糸状虫症撲滅のために1億2,000万米ドル提供し、参加してもらうことになった。
マラリア〈FACT SHEET November 1995 WHO-31〉
マラリアは世界で最も重要な熱帯寄生虫病で、結核以外では最も死者が多い。特にアフリカの発展途上国では、マラリアによる医療費や生活費が最も重荷になっている。人間に寄生するのはPlasmodium原虫の4種類、すなわち、P. falciparum、P. vivax、P. ovale、P. malariaeである。このうちP. falciparumが感染力が強く、最も危険である。
マラリアは、世界人口の40%にあたる24億人が住んでいる90か国以上で公衆衛生上の問題となっている。マラリアの発生率は、全世界で毎年3〜5億人と推定されている。マラリアの90%以上はアフリカのサハラ砂漠以南の地域で流行し、残りはインド、ブラジル、スリランカ、アフガニスタン、ベトナム、コロンビアの6か国で発生している。マラリアによる死者は毎年150万〜270万人である。死者の大部分は、アフリカの医療サービスが届かない地域の子供である。その他、妊婦や免疫力のない旅行者、難民などが感染地域に入り発病する。マラリアの特徴は発熱で始まるが、他の症状としては頭痛、疲労、発疹、筋肉痛、軽度の下痢、発熱などである。マラリアの重症例では譫妄、意識障害、全身発作、昏睡などで死に至る。マラリアの潜伏期間は通常9〜30日間であるが、種類によって異なる。マラリアは、感染者からの輸血や汚染された注射針から感染することもある。アフリカではクロロキンに対する耐性がみられるが、東南アジアや南アメリカではサルファドキシン・ピリメチンに対する耐性がおきている。テトラサイクリンとキニンの投与が、合併症のないマラリアの治療に最もよく使われている。アフリカでは幸いなことにマラリアの治療にキニンが有効である。
世界的規模で小児ワクチンの接種率が再度上昇 年間300万人の小児を救命〈PRESS October 1995 WHO-30〉
世界的規模で小児のワクチン接種率が、1994年に80%以上に増加した。この結果、1990年には小児マヒの発生が、7500人と1万人を下まわった。
最も効果が上がったのはアフリカ地域でワクチン接種率が50%以上に増加した。世界的規模でのワクチン接種により約300万人の小児が結核、ジフテリア、水痘、テタヌス、小児マヒ、麻疹などから予防できた。WHOでは2000年までに、世界的規模でのワクチンの接種率の目標を90%に定めている。1994年には約200万人の小児が3種のワクチン接種を受けていないために死亡している。すなわち、100万人が麻疹、50万人が新生児テタヌス、残りが百日咳である。アフリカ諸国の接種率はマラウィでは、麻疹98%、小児マヒ98%であるのに対し、チャドでは麻疹25%、小児マヒ20%にすぎない。
東南アジアではワクチン接種率は1990年以来増加している。1993年にはBCG、DPT、小児マヒワクチンの接種率は90%以上となり、麻疹ワクチンの接種率も85%と上昇した。しかし、世界最貧国ネパールでは、昨年度のBCG接種率は98%から67%、DPTは80%から63%、小児マヒは79%から63%、麻疹は68%から61%と減少している。その他、中央アメリカ、南米、西大西洋地域、ヨーロッパでは接種率が上昇しているのに対し、東部地中海地域では減少している。アフガニスタンでは戦争によってワクチンの接種率が極端に低下し、1994年には小児マヒワクチンは8%、ジフテリア・テタノス・水痘に対するワクチンは12%、BCGは15%であった。
世界規模でみるとジフテリアは1993年に3万2000例であったのが、1994年には5万4500例に増加した。この原因は、ソビエト連邦の解体により独立国家共同体(NIS)で新しい感染が発生したためである。この他、世界規模でテタヌスは昨年は4万6000人と4000人増加している。
結核菌感染者の増加〈FACT SHEET November 1995 WHO-29〉
1993年4月以来、WHOは結核症の流行を世界的な緊急事態としてとり上げてきた。1994年の統計では、全世界の人口が57億人いるが、そのうち結核菌に感染している人は19億人、HIV陽性患者は1400万人、結核でHIV感染患者は560万人である。現在、結核菌の感染者は増加している。西暦2000年以降の予想では3億人が新たに結核菌に感染し、9000万人が結核症となり、3000万人が死亡すると考えられている。このように結核はエイズ、マラリア、熱帯病に比べても成人の死因として最も高い。この病気は特に発展途上国で問題となっているが、予防できるにもかかわらず、成人の死亡原因の4分の1を占めている。
エイズとの関連をみると、結核症はアフリカの保健政策を破壊し、アフリカの都会の人口を蝕んでいる。現在、東ヨーロッパで結核症が流行している。アジアの国々、特に大都市では結核菌およびHIVウイルスの流行が極めて高率に見られる。
先進国では、結核症の30〜50%が外国人により引き起こされる。結核症を治療しないで放置しておくと、活動性の結核症患者は1年間に他人に10〜15人に感染させる。そのうち5〜10%が実際に結核症になる。
結核症は、HIV陽性患者の最も大きな死因の1つで30%にも達している。アジア諸国ではエイズが猛烈な勢いで流行し、エイズ患者の50〜70%は結核か日和見感染症だと問題になっている。結核治療の最もよい方法は、DOTS(Directly Observed Treatment, Short Course, 6か月間、目の前で薬を飲ませる方法)が最も有効である。WHOが推奨しているこの結核治療剤はわずか13米ドルにすぎない。この他、結核菌の中には多剤耐性菌が出現し、治療法が一層困難になってきている。
核兵器の実験〈PRESS September 1995 WHO-28〉
WHOは一貫して核兵器の廃止と核拡散条約の順守を支持してきた。核兵器は現在でも生産され、実験もされ、倉庫に在庫として積まれているため、今後核兵器が使用される可能性はある。核兵器が使用されると爆発、高熱波、放射線の被爆により死傷者がでる。発生した放射能(ガンマ線および中性子)に被爆すると、病気になり死亡することもある。短期的な影響をみると、線量が少ないと赤血球が破壊される。高線量の被爆であれば胃腸障害、さらに脳障害をきたす。放射能が強ければ、体の免疫調整機能が抑制される。長期的な影響としては発癌がおこりやすく、遺伝子の障害も起こる。1945年以来、現在まで少なくとも1950回の核兵器の実験が行われてきた。この実験は宇宙、空中、地球の表面、水中、地下などで行われた。そのうち世界各国で約1420回の地下実験が行われてきた。長期間放射能を発生させるものとしてはセシュウム135、ストロンチュウム90、プルトニュウム239、アメリシュウム241などである。セシュウム137とストロンチュウム90は水に溶け食物中に残留する。プルトニュウム239とアメリシュウム241は気道よりの吸引により被爆が最もおこりやすい。
中央アメリカ、南米におけるデングとデング出血熱の流行〈PRESS September 1995 WHO-27〉
WHOによると、ラテンアメリカとカリブ海諸国12か国の厚生省の発表では、近年デングが大流行している。1995年1月以来、この地域でデングが14万人以上、そのうちデング出血熱という重症例が3600人以上報告され、このうち36例が死亡している。
ブラジルではデングが8万8000例、デング出血熱が105例報告されている。ベネズエラではデングが1万5000例、デング出血熱が2934例報告されている。中央アメリカ、メキシコ、カリブ海諸国ではデングが3万5000例、デング出血熱が500例以上、25例の死亡者が報告されている。1981年にキューバでデング出血熱が大流行して以来、今回は最もひどい。その当時は11万6000人が3か月以上入院し、1万人にもおよぶデング出血熱と158例の死者が報告された。デングとデング出血熱はAedes aegyptiという蚊によって伝染し、発熱と重篤な出血をきたす。現在デングウイルスには4つのタイプがあり、これらの全てが重篤な症状をきたす。デングは世界100か国で25億人に流行する危険がある。5000万人が毎年発生、50万人が入院し、1〜5%は死亡する。現時点でデングとデング出血熱を予防するためのワクチンは開発されていない。デングとデング出血熱を予防するための唯一の方策は、現時点では蔓延する蚊を撲滅することである。
エイズ患者の生命を脅かす危険な結核治療法〈PRESS September 1995 WHO-26〉
HIV陽性患者の約3分の1の生命を脅かす危険な結核治療法についてWHOは警告を発している。HIV陽性結核患者は短期間の適切な結核治療を行うと、2年以上は健康的な生活を送ることができる。WHOの推測では、HIV陽性で治療が必要な結核患者の3分の2は診断または治療法が間違っている。結核患者の治療上、よくみられる間違いは結核治療薬を毎日飲まさないことである。せっかくの治療がうまくいかないために、結核患者は長期間にわたり感染力を保持し、家族、友人、健康人などに感染させる。この他、HIV陽性患者における結核の診断がしばしば正確でない。また、結核治療薬であるチアセタゾン、これはHIV陽性患者にとって致命的な薬であるにもかかわらず、エイズ流行地域では服用されている。チアセタゾンは極めて安価であるが、HIV陽性患者の何人かは皮膚が躯幹より剥離したりして、HIV陽性患者の27%が重症の副作用を示す。今年、約26万6000人のHIV陽性患者が結核で死亡すると思われる。これらの結核患者は、適切に行えば予防も治療もできる。HIV陽性患者の死亡を防ぐために、まず、各国で結核の短期治療(6か月)を開始することが必要である。この治療法は、HIV陽性患者に重症の副作用をおこさない結核治療薬を用いることが大切である。この短期治療を行えば、HIV陽性患者およびHIV陰性患者においても結核の治癒率はほぼ100%と高くなる。次に結核とHIVの予防を、地域ぐるみで実施することが大切である。HIV陽性患者における結核の診断と治療を改善し、HIV陽性患者に対する予防的結核療法を取り入れることも重要である。WHOによると、HIV陽性患者で死亡した患者に対しては日和見感染が最も多く、エイズの死亡者60万人のうち26万6000人が日和見感染の一種である結核で死亡した。
北朝鮮の水害に対しWHOが緊急援助を実施〈PRESS September 1995 WHO-25〉
WHOは北朝鮮に対し10万米ドルを供与し水害の援助を行った。北朝鮮政府によれば、7月後半に始まった水害により10万家族が家を失った。500万人以上あるいは全人口の4分の1が直接被害にあった。8月29日から9月5日までWHOの技術調査官が被害地域を視察したところ50万人が家を失い、救援を求めていることがわかった。北朝鮮はすでに水害がおこる以前から食料事情が悪化したが、水害によりさらに甚大な被害を受けた。北朝鮮の200地区のうち145地区で水害にあった。緊急援助として最も必要なものは薬品、ワクチン、脱水治療剤、疫学的調査である。北朝鮮の多くの村はパイプを用い吸水しているが、今度の水害で壊滅的な打撃を受けた。疫学的な調査では急性の呼吸器感染症と下痢が散発しているが、流行には至っていない。さらに製薬会社7社のうち数社が被害にあい、損害金額は300万米ドルにおよぶとみられる。今回の洪水は7月から8月にかけて大量の降雨があったためで、特に8月20日から23日にかけては1日で700ミリの降水量を記録している。
性行為感染症1995年の発生数3億3300万人〈PRESS August 1995 WHO-24〉
WHOがロックフェラー財団と共同で性行為感染症(STD)の上位4疾患(梅毒、 淋病、クラミジア症、トリコモナス症)について調査したところ、1995年の発生件数は3億3300万人で、 その内訳は梅毒1200万人、淋病6200万人、 クラミジア症8900万人、トリコモナス症1億7000万人と予測している。発展途上国では成人疾患の10位の中にこれらのSTDの合併症が含まれている。先進国では、梅毒と淋病は近年減少しているが、クラミジア症は依然として大きな問題となっている。1994年にアメリカ疾病対策予防センター(CDC)が調査したところ、アメリカではクラミジア症は1000人に2例の割合で新患が出現している。これらの4大STDは予防も治療もできる。世界銀行の調査によるとSTDを治療するための費用はコストがかかる。
STDは女性にとって骨盤炎などの重大な合併症を起こし、不妊の原因となっている。梅毒、淋病、クラミジア症は妊娠や出産時に新生児に感染を起こし、眼の疾患や肺炎などにより流産や死産になることが多い。STDでHIVに感染する危険性も増大すると指摘されている。
ジンバブエ共和国、タイ王国 、チリ共和国 、コスタリカ共和国などではコンドームの使用によりSTDの発生率を低下させているが、同時にHIV感染予防にも有効である。STDを撲滅するためには感染した女性を治療することが大切である。
ルワンダ共和国、ブルンジ共和国からの難民にWHOが感染症流行の可能性示唆〈PRESS August 1995 WHO-23〉
ルワンダ共和国からの難民が爆発的に増加したため、WHOは感染症流行の可能性を示唆した。特にWHOは感染症流行を懸念しているが、1994年にはルワンダ共和国からの大量の難民流出により約5万人がコレラで死亡した。赤痢や髄膜炎の流行も重大な問題となっている。WHOの監視員が調査したところ、ブルンジ共和国のガタンバ・ヘルスセンターで4例のコレラを疑う患者が発見された。過去2か月間Uviraの難民収容所7か所でコレラが発生し、多数(何百人)の難民が感染した。Gisenyiから25キロ離れたNkamiraで2例の赤痢が確認された。過去数日間にザイール共和国に避難してきた13万人の難民に対して、人権組織から食料や薬品が供給されている。このような大量難民が、現状のような状態で発生すると各種援助機関からの援助で追いつかない。WHOはルワンダ共和国から新しく到着した50万人とブルンジ共和国から到着した5万人の難民の感染症撲滅のために対策を立てている。
エイズの避けられない危険に直面する女性〈PRESS August 1995 WHO-22〉
北京で行われた第4回世界女性会議で「HIV/エイズの女性に対する感染は重要な事項である。このため女性に対する特別なプログラムを行うことが必要である」とWHOの中嶋宏事務局長は述べている。WHOでは、子供を産むことが出来る年齢の女性のうち700〜800万人がHIVに感染していると推測している。この数字は20世紀末には2倍になると考えられている。また、 HIVの新しい感染者の50%以上は女性であり、大部分は思春期から若年女性である。10年前にはエイズ女性患者は10%以下であったのが、1994年の後半には、新しくHIVの感染者の40%が女性である。2000年には1400万人の女性がHIVに感染し、そのうち400万人が死亡するとWHOは推計している。女性の感染率が増加するにつれ、生まれる新生児の感染も増加する。そうした子供150万人のうち半分は既にHIVに感染している。「HIV感染母体から生まれた赤ちゃんの3分の1は感染している。今世紀末には500〜1000万人の子供は、母親または両親をエイズで失うことになる。女性に対するウイルスの伝搬経路は異性性交によることが多い。その結果、女性におけるHIV感染率が増加する。多くのパートナーと防禦しないで性行為を行う人々は危険率が高い」とDr.Blake は述べている。世界中で出産前チェックにくる妊娠女性を調べてみるとHIV感染率が高い。第4回世界女性会議で女性とエイズについて次のようなことが検討された。1)メディア、女性、エイズ:女性のHIV/エイズが流行しないよう努力し、貢献した団体やメディアに対して賞金を出す。2)女性とエイズを観察:女性の感染を減少させるために世界的規模で効果的な活動を行うための情報を収集し、発信するネットワークを構築する。3)行動および医学研究:特に女性についてHIVの性行為による伝搬を予防するための方法を研究する。4)HIV/エイズである女性に対する基金を設ける−などである。
国連の世界女性会議で婦人の健康増進について討議〈PRESS August 1995 WHO-21〉
1995年9月4日から15日まで中国・北京で行われた国連の第4回世界女性会議について、WHOの中嶋宏事務局長がWHOの役割について、「健康という基本的な人権が世界中で多数の女性に対して守られていない。その理由は女性が社会的にも経済的にも低い地位にあるためである」と述べている。WHOは国際的にも国内的にも女性の健康の増進と、健康に対する要望を取り入れるような活動方針で取り組んでいる。北京の会議で婦人の健康に対するWHOの姿勢は、今日の婦人の健康に関する事項、例えば栄養、性と生殖に関する健康、環境上の健康障害などである。
神戸に健康開発のためのWHOセンターの設置が実現〈PRESS August 1995 WHO-20〉
WHOの中嶋宏事務局長は、神戸にWHO健康開発センターの設立について兵庫県知事、神戸市長、神戸商工会議所会頭、神戸製鋼社長と契約を行った。このセンターは国際的な健康増進事業に貢献すると同時に、今年1月の神戸市の地震からの復興に役立つと中嶋宏事務局長は述べている。これは10年間にわたり、兵庫県、神戸市、神戸商工会議所などが年間600万米ドルを援助するものである。このセンターは健康増進の研究を行い、社会的、文化的、経済的、疫学的、環境面での変化と健康への影響を科学的に解析し、政策決定に反映させようとしている。この研究の目的は健康システムを解析し健康を改善すると共に経済的・社会的に生産性を増進させ、「不健康−貧困−不健康」の繰り返しを断つための手段を開発することである。神戸のWHOセンターは世界に広がる研究センターのネットワーク機能を持ち、先進国や発展途上国における他の研究機関と密接な協力体制をとり、研究結果を国際的な研究機関に広く知らせることになっている。
援助要望国との協調体制の実態〈FACT SHEET August 1995 WHO-19〉
今日全世界で13億人の貧しい人々がおりその数は増加している。そして金持ちと貧乏人との健康状態のギャップは大きい。国連で最貧国と呼ばれている国の数は1975年に27か国であったのが、今日では48か国と増加している。先進国においては平均寿命が76歳であるのに対し、最貧国では54歳と22歳短い。最貧国における新生児死亡率は1950年には先進国に比べ3倍高かったが、1991〜1993年には15倍以上も高くなった。1980年後半における最貧国の母親の合併症による死亡率は先進国に比べ100倍も高い。1988〜1991年では最貧国おいてはきれいな水が飲めるのは49%で、衛生状態が良好なのはわずか33%である。
WHOの新しいアプローチとして次のようなことを実施する。各国の要望に焦点を合わせ、各国が独自で行っている健康増進計画を援助する。各国独自の健康増進計画の企画と手段を後援する。供血者団体、開発銀行、NGOなどと密接に連絡をとり、外部援助をより効率化する。WHOの各国事務所と連絡を密にしその国の要望に迅速に応えるようにする。WHOが実行している事項としては次のようなものがある。ギミアビサウ共和国に対しては、ICOを通じて最貧国であるこの地域に小児の予防接種の受診率を高めるための援助をしている。結核に対するBCG接種を45%まで、3種混合ワクチン(DPT3)と麻疹ワクチンを25%まで高めることを目標としている。ベトナム社会主義共和国に対しては、地域の健康増進システムを改善し、貧困地域の人々の健康を増進する。ガテマラ共和国に対しては、WHO/PAHOが最貧民地域のQuicheとHuehuetenangoに3か所の健診事務所を開設し、今後さらに2か所増設する。これにより貧しい原住民の健康状態を改善することができる。モザンビーク共和国に対しては、ICOがManica州の健康対策を援助し、フィンランドが12年間におよぶ2000万米ドルにのぼる援助の実施に乗り出す。モンゴル国に対しては、WHOがリーダーシップをとって国内の健康サービスの再構築と財政的援助を行っている。ボリビア共和国に対しては、WHO/PAHOがTupiza地方のAltiplanoの貧民の健康を改善するために地域健康システムを確立するための援助を行っている。
WHOの将来にわたる展望としては26か国で援助を実施しているが、援助を要望する国が増えている現状に応えることである。
避妊の研究が婦人の要望に合致〈FEATURE August 1995 WHO-18〉
避妊に対する婦人の要望はいままでは的確に評価されてこなかった。1990年には発展途上国の夫婦の53%が1種類以上の避妊法を用いているのに対し、25年前にはわずか14%が使用しているに過ぎなかった。子供が多数いて、将来これ以上子供が不要だと述べている婦人が地球上に何千万人もいるが、これらの人達は避妊を行っていない。その理由の1つとしては家族計画に関し十分な理解がなされていないこと、また婦人の生命、健康、要望などが十分に考慮されていないことである。
このような現状を踏まえWHOは1972年に新しい避妊法を開発し普及に取り組んできた。過去5年間で避妊について婦人の健康や要望を取り入れ、より効果的に避妊が行われるようになった。経口避妊薬、注射や移植による避妊法が開発され、女性性器癌、乳癌、循環器疾患との関連において安全性が確認された。しかし避妊を行っている婦人からは頭痛、月経不順、体重増などの副作用が報告され、本当の意味での安全性が疑問視されている。注射による免疫学的な避妊法はその効果が1〜2年間続き投与も簡単で科学的な見地からは理想的に思える。しかしこの方法は乱用される危険があり、婦人が知らないうちに投与されることも考えられる。このような理由から避妊法に関する特別プログラムとして国際的な倫理ガイドラインを決めることが必要である。避妊を行っている婦人に対してインフォームドコンセントを十分に行うことがきわめて重要である。避妊法について全く理解していないで避妊している婦人もかなりの数いる。
女性器切除に対しWHOは引き続き戦う〈FEATURE August 1995 WHO-17〉
アフリカ、アジア、中東では純潔を守るためと称し少女の女性器をカミソリなどを使用し、切除したり縫合したりする伝統的習慣がある。WHOでは世界中で8500万人から1億1500万人の少女や婦人に対し女性器切除(female genital mutilation ,FGM)が行われ、健康状態が損なわれていると推測している。毎年約200万人の少女が女性性器の切除を受けており、それによって重篤でしかも持続的な健康障害を起こしている。短期的障害としては重症出血、ショック、感染などが起こり死亡することもある。長期的障害としては繰り返し起こる尿路感染症、慢性骨盤炎、不妊、神経障害、性機能不全、出産障害などでこれが妊婦死亡の重要な原因となっている。WHOではあらゆる種類の女性器切除が少女や婦人に対して害があり、また女性の人権を侵害していることを非難し、女性器切除が実施されないように強く要望してきた。
女性器切除が廃止されるよう働きかけるために、 WHOはジュネーブで1955年7月17〜19日に会議を開き、女性器切除が行われた少女や婦人の被害について調査してきた。この会議では婦人の健康を守るための非政府組織の代表として研究者、看護婦、保健婦、医師、国連の代表などが集まり女性器切除の定義、分類、少女や婦人の健康障害に対する認識、この風習を廃止するための効果的なアプローチ法などが討議された。
この会議における女性器切除の定義は「外部女性性器の部分的および全切除および/または習慣的あるいは非治療的な理由によって女性性器を損傷させる手技」としている。この会議では女性器切除の臨床的合併症およびその管理などに関する研究が必要であることを再確認した。
国連のウクライナ共和国でコレラの流行〈PRESS August 1995 WHO-16〉
ウクライナ共和国でコレラが流行している。1995年6月3日に最初の患者が出て以来368人が感染し7人が死亡した。NikolayevとKhersonの2つの南の州で流行している。Nikolayev市と7か所の農村地域でとくにひどく、全国368例中361例が発生した。WHOコレラ・タスクフォースの Dr.Neira は「患者が医療を早く受ければ死は予防できる。この病気では免疫能が落ちている人や老人などが最もかかりやすいが、 健康成人でも死ぬ場合もある」と述べている。
コレラの流行は水質汚染によることが多く、今回の流行もYouzhnyi Bug 川から取水した飲料水が原因と考えられている。この川は河口が広いのと浅いため水流が緩慢となり、すぐに温度が上昇し各種の微生物が発生しやすい状態になっている。最近までこの地域はアマチュアの釣人でにぎわっていた地域である。感染の大きな原因は市の排水処理システムが機能していないため、 コレラ菌が川に流されているからである。市当局は感染の恐れのある飲料水の摂取の禁止、水浴の禁止および釣り場の立ち入り禁止などを行い感染を防止しようとしている。Dr.Neira は「飲料水の供給と排水システムなどの施設の改善が重要なカギである」と述べている。WHOヨーロッパ地域が組織したワークショップが開催され、疫学者および科学者31人が出席してコレラの予防と防御戦略を立てた。ウクライナにおける昨年のコレラの患者数は813人で、死亡者は20人である。WHOに報告されたコレラの発生は昨年が94か国であったが、 今年は現在までのところ54か国である。
健康増進のためにWHOと世界銀行の協力〈FEATURE August 1995 WHO-15〉
WHOと世界銀行の代表が、第48回世界保健会議で将来に向けての共同作業について討議した。現在、WHOと世界銀行は数項目の共同プログラムを作成し、世界の人々の健康増進のため努力している。これらの内容を紹介すると、熱帯病の研究、糸状虫症の撲滅、人口増加に対する研究、呼吸器感染症・エイズの撲滅対策などである。ボリビア、インド、レバノン、ザンビアの4か国においてWHOと世界銀行の協調体制が成功している。
ボリビアでは、保健センターと母子センターが設立され、健康管理が十分行えるようになった。プロジェクトの内容は、ボリビアの17都市とその周辺地区に対する3,800万米ドルの投資と25地方に対する4,000万米ドルを投資する。
レバノンでは国民の健康増進のためにレバノン政府に対し、WHOと世界銀行が技術的および財政的援助を行っている。1995年に始まった健康リハビリテーションプロジェクトでは、予算4,800万米ドルのうち3,570万米ドルを世界銀行がもち、残りをWHOと世界銀行の共同援助で行うことになっている。
インドにおいては、ライ病撲滅対策として世界銀行が1億米ドルを援助している。これにより、1994年に110万人いたライ病患者が現在80万人に減少している。基本的戦略としては、全ライ病患者に多剤療法を行うことである。その他、1億3,000万米ドルをかけて、盲人撲滅対策を実施中で、1,100万人いる白内障患者を手術により視力回復させることにしている。結核対策に関してはインドには患者が1,400万人いて、年間50万人が死亡している。エイズウイルス感染者の数が増加するにつれ、結核も増加している。インドでは結核対策に190万米ドルを使っている。エイズウイルス撲滅対策については、エイズウイルスの伝染を防ぐための防止対策が必要であり、その内容は血液の安全性対策、性行為感染症対策、市民に対する病気の知識や教育などで、これに8,400万米ドルが使用されている。母子健康の向上のために、地域健康システムの確立のため1億5,800万米ドルが計上され、そのうち1億3,300万米ドルを世界銀行が援助している。
最後にザンビア政府の健康増進政策に対する援助について述べると、戦略的な目的は経済効率の高い健康増進政策を立案し、それをWHOと世界銀行が協力してザンビア政府をサポートすることである。
征服されつつあるらい病−継続的な進歩の報告〈FEATURE July 1995 WHO-14〉
1994年6月にハノイでらい病の国際会議が開催され、2000年までにらい病を撲滅することを目標にした。最新のWHOのデータでは全世界におけるらい病の広がりは過去に比べて23%減少しており、これは多剤投与療法によるところが大きい。これらの多剤投与療法に使われる薬剤は笹川財団の基金があてられ、毎年1000万米ドルで2000年まで援助が続けられる。らい病撲滅の目標としては人口10万人に対し1人以下の流行率を目指している。現在、らい病は1995年で183万4000人と推定されており、これは人口10万人に対し3.3%である。1991年には550万人いた患者が1995年には67%減少したことになる。
アフリカでの状況を見ると、1963年には400万人のらい病患者のうちわずか170万人が登録され治療を受けていた。治療に関して考察するとWHOの強力なキャンペーンによるダプソン(dapsone)の単独投与によって、1960年から1975年間は劇的な減少が見られた。その後、らい菌に対するダプソンの耐性が起こり、それ以後有効な治療法がなく、1975年から1985年には約100万人の患者がいた。多剤投与療法といわれるダプソン、リハンピシン、クロファジミンの3薬剤の投与が開始され著名な効果がみられた。この多剤投与療法は1986年にはわずか4.4%しか実施されていなかったのに対し、1995年には80%まで上昇した。この結果、らい病患者数や治療を受けている患者の数も1986年の88万6000人が、1995年に11万4000人と激減している。このようにアフリカではらい病の撲滅は計画通りに進行しているが、アフリカ各国の中でいくつかの国は劣悪な衛生環境及び難民などにより多剤投与療法を行うことが困難である。世界的見地からみるとらい病については多剤投与療法を行う地域が過去55%から76%にまで上昇している。
赤道ギニア共和国における出血性下痢症の流行〈PRESS July 1995 WHO-13〉
中央アフリカの赤道ギニア共和国では出血性下痢症が600人発生し104人が死亡した。飲料水と糞便標本をカメルーンにあるパスツール研究所で分析したところ、4群ある志賀赤痢菌の中で最も毒素の強い志賀赤痢菌1型であることが確認された。WHO、ユニセフ、フランス厚生省、赤道ギニア共和国厚生省が合同でこの流行に対する予防と撲滅活動を開始している。赤道ギニア共和国における流行防止対策は、飲料水の浄化、適当な抗生剤の発見、国内の衛生環境の改善などが必要なため大変困難である。現在、志賀赤痢菌1型は世界中で流行しているが、1968年に中央アメリカで流行がみられ、4年間で50万人の患者が出現し、少なくとも2万人が死亡している。
近年、志賀赤痢菌1型はアフリカ各国に流行し、1979年にはザイール共和国東部で発見され、次いでアンゴラ共和国、ブルンジ共和国、マラウィ共和国、モザンビーク共和国、ルワンダ共和国、スワジランド王国、ザンビア共和国などにも広がった。現在、戦争で荒廃したリベリア共和国でも志賀赤痢菌1型の流行が始まっている。アフリカでは志賀赤痢菌1型における流行は貧困地域ではよくみられる。
志賀赤痢菌1型の問題点としては流行を確認するために何か月もかかることである。その理由としては、住民の病気に対する認識が低いことと、通信連絡システムが確立されていないことなどである。さらに糞便標本を採取することの難しさと輸送に冷蔵庫保存が必要である点、さらにそれをよい研究所に送るための方法が難しい点などの問題点が指摘されている。さらに志賀赤痢菌1型に対して多くの抗生剤が耐性を示し、耐性獲得が非常に早く、感染が起こってから1年から2年で抗生剤が無効になるなど、問題点も多い。
シエラレオネにおける伝染病の流行の脅威〈PRESS June 1995 WHO-12〉
西アフリカにあるシエラレオネでは絶え間ない軍事紛争により、コレラが流行している。WHOによれば、首都のフリータウンだけでもコレラが1,709例発生し、57人が死亡している。シエラレオネの Dr Njelesani によれば、「昨年は1万人がコレラに感染し、今年はさらに患者は増えそうだ」と述べている。家がなくなった200万人は強制的に疎開させられ、その人達に対する医薬品の供給も少ない。雨季が始まったため首都の交通は遮断されている。この200万人のうち75万人が首都に流入したため、首都フリータウンの人口は2倍になり、雨季の到来と共に安全な飲料水が欠乏し、非衛生的な状態が続くため、コレラおよび他の下痢性疾患が流行している。
シエラレオネの厚生省がWHOやユニセフと共同で、フリータウンの5か所にコレラ治療センターを開設し、また自動車による保健クリニックも組織されている。WHOの専門家によれば、雨季の到来と共に下痢性疾患、マラリア、急性呼吸器感染症などの流行が起こる可能性が大きくなるという。シエラレオネにおける全国的な疫学調査システムを確立し、そのネットワークを用いてコレラ流行の初期の段階で、迅速対応することができるように計画している。
デングとデング出血熱の世界的予防対策〈PRESSJune 1995 WHO-11〉
デングとデング出血熱は蚊が媒介するアルボウイルスが原因で、現在急速に流行しているためWHOでは重大な関心をよせている。この危険なウイルス性疾患は、東南アジアおよびその他の地域で1950年代に流行した。デングとデング出血熱は急性疾患で出血を伴い小児を死亡させる。
デング出血熱はエボラ出血熱と違い、Aedes aegypti というネッタイシマカがヒトを刺すことで感染する。この蚊は世界中の熱帯および亜熱帯地域に分布し、ヒトが住んでいる地域の水槽や水瓶などに卵を生む。デングは現在、東南アジア、アメリカ、西太平洋地域、アフリカ、地中海東部などで発生している。
デングは過去15年間に世界100か国以上に流行し、25億人が感染の危険にさらされている。多くの国で小児死亡の主要な原因となっている。デングによる死亡総数は毎年2万人にものぼる。適切な治療を行わないと死亡率は15%になるが、適正治療を行えば、死亡率は1〜3%に減少する。
1970年まではデング出血熱の流行国はわずか9か国であったが、現在では38か国以上に広がっている。デングに対してリコンビナントワクチンの使用は5〜10年後に実施される予定である。デング患者には、安静と鎮痛剤の投与、発熱時には体の冷却が必要である。重症デング出血熱にかかった場合には、高熱、嘔吐、毛細管出血がおこるので、出血に見合う輸液を行うことが必要となる。現状では最も有効な方法は、媒介する蚊を撲滅することである。
ジフテリアの流行、世界的な健康衛生上の非常事態(PRESS 19 June 1995 WHO-10)
旧ソビエト連邦の新独立国家共同体(NIS)におけるジフテリアの流行は地球規模での保健衛生上の非常事態となっている。世界赤十字社連合、ユニセフ(UNICEF)、WHOによる警告が出され、ジフテリア撲滅のために3200万米ドルの対策費が計上されている。
1990年代の初期にロシアとウクライナにジフテリアが流行し、それが近隣の新しい独立国家共同体に広がり、小児と成人が感染している。1994年には、ジフテリア患者4万7802人のうち、1742人が死亡した。1995年には、この地域で15万〜20万人の新しいジフテリア感染者が出ると予想されている。
WHOのヨーロッパ地区担当委員長のDr.は「NISでは医療器具、薬品、とくにワクチンの欠乏、不完全な予防接種、多くの成人が抗体を持たないことなどによりジフテリアが流行している」と述べている。
最近のデータでは、トルクメニスタンにおける2歳以下小児のジフテリアによる死亡者は50%にも及んでいる。ジフテリアの流行はNISの国境を越え、フィンランド、ドイツ、ポーランドなどにも広がっている。最近の調査では、ヨーロッパと北アメリカにおける成人の20〜60%がジフテリアに対する抗体をもっていない。
WHO、ユニセフ、アメリカ疾病対策予防センター、世界赤十字社連合が合同でNISにおけるジフテリアの撲滅対策を立てている。(1)流行している国々の全ての人に予防接種を行う(2)ジフテリア患者に対しては、迅速な調査と治療を行う(3)2次感染を防ぎ、患者の初期診断と適切な管理により死亡と合併症を防ぐという3つの対策である。
国際赤十字連合、ユニセフ、WHOはNIS各国の厚生省と共同でジフテリアの撲滅運動を援助している。また、ユニセフはアメニア、アゼルバイジャン、グルジア、カザフスタン、キルギルスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、モルドバでの予防接種に協力している。世界赤十字社連合は、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナに対し、同様の援助をしている。WHOはジフテリア撲滅のために疫学的な調査とロシア連邦を含む各国に対し援助している。
ジフテリアはしばしば、ジフテリア心筋炎や神経炎を合併する。未治療患者は2〜3週間は感染性があるが、抗生剤投与により24時間以内に患者は非感染性になる。治療法としては、ジフテリアアンチトキシンおよび抗生剤の投与をおこなう。アルメニア、エストニア、リトアニア、ウズベキスタンでは人口10万人に対し0.5〜1人、ロシアとタジキスタンでは10万人に対し27〜32人が発病している。死亡率はロシアとウクライナで2〜3%、アルメニア、カザフスタン、モルドバ、ラトビアで6〜10%、アゼルバイジャン、グルジア、トルクメニスタンで17〜23%である。
エイズウイルス陽性者の主な死因は結核〈PRESS June 1995 WHO-9〉
地球規模でみると結核は、エイズウイルス陽性者の主な死因となっている。WHOの世界結核対策委員会が開催され、エイズと結核それぞれの専門家を混えた会議がもたれ、エイズウイルスが流行している地域における結核の撲滅対策が話し合われた。Dr Kochi委員長は「エイズウイルス/結核の重複感染が、結核の撲滅に脅威をきたしている」と述べている。
エイズウイルスの流行しているアジアでは、重複感染患者においては結核は死の病であり、エイズウイルス陽性者の3分の1を死亡させ、エイズウイルス陰性者にも結核を伝染させる。この問題を解決するための研究と撲滅活動が急務となっている。10年後にはエイズウイルス陽性の死亡者の3分の1は結核によると考えられている。Dr Harriesは「重複感染の流行はエイズ患者のケアと結核患者の診断と治療を複雑にし、困難にさせている」と述べている。結核とエイズウイルスの重複感染者は、結核単独感染者より結核の進行が早く重篤になる。またエイズウイルス陽性者は、検査で結核がしばしば疑陽性になるので注意が必要である。これらの現実に対し、「この委員会の金は無駄に使われ、実際に役立ってない」とDr Nunn は語っている。このような状態を改善するために、世界結核対策委員会は、結核とエイズウイルスに対する著名な科学者と協力してこれらの地域における重複感染の対策を検討している。エイズウイルス/結核の流行に対する研究に力を入れ、下記のことを決定した。1)エイズウイルス陽性者の結核について診断と治療を改善する。2)流行している地域における結核の予防的な治療の役割と必要性について認識する。3)エイズウイルスが流行している地区における結核とエイズウイルスに対する保健活動を強化し、共同で研究する。4)エイズウイルスが流行している地域において、結核患者の検索と継続的な治療を行うための障害を取り除く。5)エイズウイルスにより汚染された地域における結核対策費を再検討する。
サハリン地震の被害者に対する医療援助〈PRESS June 1995 WHO-8〉
WHOはロシア連邦のサハリン島における地震の被害者を援助するために5個の救急医療キットを送った。このキットには抗生物質、その他の薬剤、手術用器具、麻酔薬、包帯などが含まれている。このWHOの医療の援助活動は日本政府からのものである。
一つめのキットには3ヵ月間1万人の人々の基本的な健康状態をカバーするもの、あと二つのキットは10日間2000例の外科手術に必要な品物、最後の二つのキットは200例の手術のための麻酔薬が入っている。
地震は1995年5月27日13時4分にOkhaの南120キロの所で発生し、震度はRichter係数で7.6 であった。 Nefkegorsk の町は最大の被害を被り、 町はほとんど破壊されてしまった。 1995年6月1日現在における死傷者の数は死者445名、 負傷者388名、 瓦礫から救助された人が833名であった。 410名が避難した。 大人の生存者はNefkegorskでテントに収容され、子供は近隣の町で保護されている。軍隊、市民防衛隊、 警察からなる400名の救助隊が130両の救援車両を使用し、この破壊された町の人を救助した。 50名の医療活動者が10台の緊急車で援助を行った。 WHOの医療キットはロシア連邦の政府救援チームと日本の非政府組織AMDA(Association of Medical Doctors in Asia)が担当した。
ザイールにおけるエボラ出血熱の流行:国際的な援助の増加〈PRESS May 1995 WHO-7〉
ザイールでエボラ出血熱と戦っているWHOチームに対し世界各国から援助の申出があり、200万米ドルを越える金額が寄付された。 イタリーは今回の流行が始まって直ちに10万米ドルに相当する医薬品を提供した。アイルランドは3万米ドルを寄付し、スエーデンはWHOの要請で専門家チームを派遣し、ベルギーはC−130軍用輸送機を使い医薬品を現地に運搬した。
ザイールにおけるWHOの専門家チームの継続的な活動を経済的に支援するためにイタリーは65万米ドル、日本は15万米ドル、ノルウエーは10万米ドルを寄付した。スエーデンは90万米ドルに相当する医薬品を寄付した。 笹川記念財団は100万米ドルの寄付を申し出た。 非政府組織や会社などもエボラ出血熱に対するWHOの奉仕活動に協力を申し出た。ザイールにおけるエボラ出血熱の流行に対する中期的計画としては20万米ドルをこの先6ヵ月にわたり感染防禦服の補給に用い、50万米ドルをこの地域の保健施設・医療施設の改善に使い、50万ドルを研究活動に使う予定である。研究活動はエボラ出血熱の流行を防止するための最重要課題である。
長期的計画としては将来のエボラ出血熱の再流行と戦うためには各地区の調査活動を系統的に実施し、医療設備を改善し、エボラ出血熱のウイルスの研究である。
世界禁煙デー 1995:喫煙はあなたが考えている以上に金がかかる〈PRESS May 1995 WHO-6〉
全世界で1年間に喫煙にかかる費用は2000億米ドル以上と推測されている。「この金額は全ての発展途上国における健康管理や保健活動に必要な予算の2倍に当たる。また、全世界で1年間に死亡する人のうち3百万人が喫煙が原因で死亡している。喫煙の流行はタバコという健康に有害な品物で金儲けしているごく少数の人たちが原因である」と中嶋 宏事務局長は述べている。
全世界では年間11億人の喫煙者が6兆本のタバコを消費している。先進国では男性の41%、女性の21%が喫煙する。発展途上国では男性の50%、女性の8%が喫煙する。多くの国でタバコを吸う女性の数は増加している。過去10年間にタバコの年間消費量は先進国では成人1人当たり2800本から2400本に減少しているのに対し、発展途上国では1150本から1400本に増加し、年間1.7%の割合で増加している。
喫煙が原因で1年間に死亡する3百万人のうち、現在は約3分の1が発展途上国の人達であるが、現状のまま進めば20〜30年後には年間約1000万人が死亡し、そのうち70%は発展途上国の人達になる。
予防接種や抗生剤の投与が感染症を防いだと同様に、各国の政府は喫煙者が増えないようにあらゆる対策を講じるべきである。最も有効な方法はタバコの税金を上げることである。近年、英国でタバコの値段を10%上げたところ、喫煙者は約5%減少した。世界禁煙デーのテーマは喫煙を防止し、全世界の人々の健康に対する脅威を取り除くことである。
高齢婦人の健康的な老化をWHOが要望〈PRESS 10 April 1995 WHO-5〉
WHOでは65歳の高齢婦人数は1990年には1億8800万人であるのに対し、2015年には3億2600万人に増加し、その大多数は開発途上国の婦人達であると推定している。
1995年4月10日〜12日にオーストラリアのパースで行われた「WHO婦人の健康に関する委員会」は高齢婦人が人生後半に直面する健康問題について取り上げた。高齢婦人の老化に伴う健康上の問題点、人生後半における高齢婦人の病気と健康とを決定する要因に焦点を当て、生活の質の向上、 高齢婦人の健康を増進する戦略を立てた。WHOの中嶋 宏 事務局長は我々の目標は生命をただ延ばすというだけではなくて、障害を少なくして健康的で価値のある生活が送れる期間を長くすることであると述べている。喫煙、アルコール、麻薬使用、貧しい生活環境、栄養不良、性的成熟期における病気などが高齢婦人の健康状態をおびやかす要因となつている。
先進国の婦人は中等度発展途上国における婦人よりも15年長生きし、最貧低開発国の婦人よりも30年長生きしている。 女性が長生きしても、 慢性疾患、 貧困、 孤独、疎外などの問題が発生する。心臓疾患と脳卒中が高齢婦人における死亡および障害の主な原因であり、先進国における成人婦人の死亡者の60%を占める。発展途上国では50歳以上の高齢婦人における主な死因は循環器疾患で、平均寿命や生活水準が改善されるにつれ、死亡および障害の原因としての循環器疾患が増えている。
全世界で毎年46万人の子宮頚癌の患者が発生する。 大部分の患者は発展途上国で発病し、先進国に比べ死亡率は3〜6倍高い。5年に1度子宮頚癌のスクリーニング検査を行うことにより子宮頚癌の死亡率は85%減少し、10年に1度スクリーニングを実施すれば死亡率は64%減少する。
発展途上国では男性も女性も熱帯病と呼ばれる感染症にさらされている。糸状虫症による皮膚病や失明は年齢と共に増えていく。家族や家庭から迫害されるライ病も高齢婦人に強烈な打撃を与えている。WHOは婦人団体や各国政府に対する啓蒙を行い、女性の生涯を通じての疾病予防およびケアに対する経済効率などの戦略を立てている。
ザイールで突然発生したエボラ出血熱〈PRESS May 1995 WHO-4〉
ザイールの首都Kinshasa300キロ東にあるKikwitでエボラ出血熱患者が発見された。ザイールで突然発生したエボラ出血熱の患者は、1995年5月22日現在、136人で死亡者は101人である(死亡率74.3%)。エボラ出血熱の潜伏期間は2〜21日間で、症状は突然の発熱、筋肉痛、頭痛、咽頭痛とそれに伴う嘔吐、下痢を合併し、肝・腎への侵潤と体内・体外で出血を起こす。このウイルスの感染は患者の血液、尿、精液、分泌物、臓器などとの接触で起こる。エボラ出血熱の原因ウイルスは、ザイールで発生した患者から採取した検体を米国ジョージア州アトランタの疾病対策予防センター(CDC)に送付し、そこで確定診断がつけられた。
エボラ出血熱は最初1976年にザイールで発生し、次いで1979年にスーダンで発生したのが報告されている。ザイールで、1976年に発生した症例では、汚染された注射針が原因であったが、今回は患者と接触する機会の多い看護婦、技師、医師、家族などが患者の血液、尿などに触れて伝染したと思われる。5月7日に米国のCDC、フランスのパスツール研究所、南アメリカのヨハネスブルグの国立ウイルス研究所、WHOのスタッフなどからなる調査団が検索した。調査団は患者の92%が居住するKikwit周辺のKindinga、Kinsoni、Nsi-Moloongo、Beyasala、Yassa Bonga、Vangaの6か村を中心に調査している。
エボラ出血熱の特別な治療法、ワクチンはとくにないので患者に対しては、脱水症を改善するために輸液の対症療法を行う。患者を隔離し、医療スタッフはガウン、手袋、マスクを使用する。
エボラウイルスはフィロウイルス科に属し、分子量が4.0×106ダルトンのRNAウイルスで100nmの径と850〜1500nmの1本鎖長軸をもっている。自然界の宿主については猿、コウモリ、ラット、モルモット、マストミス、蛇などが考えられているが不明である。診断法はELISA法でスクリーニングし、免疫蛍光法とウエスタンブロッチング法で確定診断を行うか、ウイルスの分離培養で確認する方法などがある。臨床検査所見としてはASTの著増、ALTの軽度増加、白血球数の減少がみられる。エボラ出血熱と鑑別診断すべき疾患としては、ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア混合出血熱、デング熱、黄熱、肝炎、レプトスピラ症などである。このウイルスは自然宿主の中に存在し、人に最終宿主として寄生するので、自然宿主をできるだけ早く発見することが重要である。
今回のエボラ出血熱の突然の発生について世間では、広範囲の伝染を恐れているが、現時点では世界中に広まる恐れはないとWHOのHenderson博士は述べている。
開発途上国〈IN POINT OF FACT May 1995 WHO-3〉
開発途上国においては死亡者10人中7人が5つの病態に起因:脱水、下痢、マラリア、麻疹、栄養不良これらの5つの病態で死亡する人は1日に2万5000人で、そのうち約60%は脱水と下痢が合併する。脱水、下痢、マラリアを防ぐために現在ワクチンや他の予防法を開発中であるが、現在の技術でも予防することが出来る。
小児はウイルス性の咳や感冒にかかることが多いが、開発途上国では重篤な細菌性肺炎につながる。肺炎は5歳以下の小児においては主要な死因となっている。肺炎治療に抗生剤の経口投与を行なうと15セントしかかからないが、重症の肺炎では入院して抗生剤注射や酸素療法が必要となり医療費がかかる。
5歳以下の小児においては下痢を合併する死者は毎年350万人に達する。下痢に対する長期的な解決策は水道水の供給、下水道設備の完備、衛生状態の改善などがあげられる。下痢を防ぐためにすぐに実行すべきことは母乳を与えることと、小児の栄養状態を良くすることである。下痢による死亡の半分は脱水による。脱水を改善するためには経口食塩水(ORS)を投与するのが安くて良い方法である。14日以上下痢が続く場合には食事を変更して対処するが、場合によっては病院で治療を受ける必要がある。小数例ではあるが重篤な下痢をきたす疾患として赤痢があり、治療法は抗生剤の投与である。近年、抗生剤に耐性を示す赤痢菌が増えてきているのもやっかいなことである。
地球上のポリオが82%減少〈PRESS No25 6 April 1995 WHO-2〉
WHOの発表によるとポリオ撲滅運動の結果、地球上からポリオが1988年以来、82%減少した。すなわち、全世界で1988年には3万5255症例報告されたが、1994年にはわずか6241症例に減少した。145か国ではポリオが全くみられなくなった。しかし、インド大陸および中央・西部アフリカでは、ポリオ撲滅のための努力が今後も必要である。インド大陸では、地球上のポリオ症例の75%を占めている。今年の世界保健記念日(World Health Day)に中東、コーカサス、中央アジア共和国など18か国がポリオワクチンの接種を行ない、6000万人の子供にワクチンが投与された。戦闘の続いているアフガニスタンでも、1995年4月29日から5月4日までのキャンペーン期間中は停戦が成立し、その間200万人の子供にワクチンが投与される。
1993年と1994年に8300万人という大規模なポリオワクチンの接種が中国で行われた結果、西太平洋地区におけるポリオの発生率が劇的に減少した。WHOはユニセフ、ロータリークラブ、米国CDCなどの協力を得て各国にポリオワクチンを送付しているが、世界保健記念日には1億8000万個のポリオワクチンを送付した。ポリオワクチン配布プログラムを実施するには莫大な費用がかかるが、ポリオが撲滅された暁には、その国にとってポリオ患者に対する医療費やリハビリテーションの費用などの巨額の医療費が節約できる。現在、WHOでは、ポリオの蔓延国に対しては、ポリオ撲滅基金の80%を充当して撲滅をめざしている。経口投与のポリオワクチンの1回量はユニセフ価格で9セントにすぎないが、ワクチンが膨大な量になるため莫大な費用がかかる。WHOの事務局長の中嶋宏博士は、先進国ではポリオは忘れられた存在であるが、ポリオは非常に感染性が強いので、全世界からポリオウイルスが完全に無くなるまでワクチン投与を続けるべきであると述べている。
Chagas病 南米4か国で画期的な撲滅運動を展開〈FEATURE No183 April 1995 WHO-1〉
1992年にアルゼンチン、ブラジル、ボリビア、チリ、パラグアイ、ウルグアイの南米6か国が、この地域におけるChagas病の伝搬を防ぐための南米共同撲滅運動を始めた。この共同撲滅運動は、媒介する昆虫の撲滅と血液のスクリーニング検査から成り立っている。
Chagas病は、ラテンアメリカにのみ存在し、これらの国における健康上の重要な問題になっている。南米共同撲滅運動の結果、Chagas病は、全ラテンアメリカで1992年に100万症例であったのが、1998年には30万症例に減少する予定である。現在までのところ、この6か国は1億5000万米ドルを使って撲滅運動に取り組んでいる。この原虫はサシガメという昆虫(Triatoma infestans)が吸血することにより伝搬し、とくに貧しい田舎の家の壁に住みついている。WHOの推測では1600〜1800万人が現在感染しているという。このうち200〜300万人はすでに慢性化し、300万人以上は潜伏期にあり、将来Chagas病になると考えられている。 地球規模でみると、Chagas病はマラリア、ジストマにつぐ3番目に多い病気である。Chagas病に羅患した急性患者の3分の1は10〜20年後に慢性心肥大(27%)、慢性胃腸障害(6%)、神経障害(3%)になり死亡する。
アルゼンチンでは、1982年から1994年の間に家屋内感染が75%減少した。ブラジルではサシガメによる感染が1982年に711の自治体で見られたのが、1993年にはわずか83の自治体に減少した(減少率89%)。チリでは1982年と1993年を比べると感染地域における家屋内感染は90%減少した。ウルグアイでは感染地域における家屋内感染率が98%著減した。ボリビアとパラグアイでは撲滅運動が最近スタートしたばかりである。
|